2007-05-07

共感回路とミラーニューロン

以前、「ミラーニューロンが共感回路か」で紹介されていたように、サルの実験で、人の動作を観察したときも、自分が同じ動作をしたときにも、同じように働くニューロンが見つかり、ミラーニューロンと名づけられています。
この実験はどんな実験だったのでしょうか。他には、ミラーニューロンが共感回路であことを示す実験は行われていないのでしょうか。気になる人は、次に行く前にこちらもお願いします。
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この画像は日経サイエンス別冊「進化する脳」から転載しました

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ミラーニューロンを発見した実験は、イタリア、パルマ大学のリゾラッティらの実験で発見されていますが、チンパンジーの脳の働きを調べる、簡単な4つの実験で構成されています。
1つ目は、チンパンジーにトレーの上の餌をつかませたときの脳の働き。
2つ目は、人がトレーの上の餌をつかむところを、チンパンジーに見せたときの脳の働き。
3つ目は、人がトレーの上の餌をペンチでつかむところを、チンパンジーに見せたときの脳の働き。
4つ目は、チンパンジーに暗闇でトレーの上の餌をつかませたときの脳の働き。
実験の結果、3つ目の実験以外で共通して活発に働いているニューロンが見つかったのです。1つ目、2つ目の実験から人の動きを自分の動きと重ね合わせて感じるミラーニューロンの存在が推定され、3つ目と4つ目の実験で、このニューロンが、餌をつかむという行為一般や、餌をつかむと言う視覚情報に反応しているだけという可能性が排除されました。間違い無く、自分の手を動かすために使っている脳回路が、人の動きを観察するときにも活動しているのです。
この4つの実験結果を総合して、ミラーニューロンは自分が運動を制御する脳回路の働きを使って、相手の脳が行っている運動制御の脳回路の働きを推定し、リハーサルする役割を持っていると推論されています。
ミラーニューロンが共感回路であることを示す実験として、自閉症児のミラーニューロンの働きをしべた実験もあります。
UCLA (カリフォルニア大学ロサンジェルス校) で医学や心理学を扱っているいくつかの研究機関が協力し、自閉症児の脳内でミラー・ニューロンがどう作用しているかを調べました。いわゆる高機能と呼ばれる種類の自閉症児10人と、定型発達 (普通) の子どもたち10人を対象に、怒り・恐れ・喜び・悲しみなどの感情を想起させる写真を観察させ、模倣をさせつつ、そのときの脳の活動状況をfMRI (functional Magnetic Resonance Imaging) という装置で調べました。
被験者となった自閉症児は、それと別に自閉症状の度合いも詳しく検査しました。課題としてやらされた作業は、すでに可能な作業であることが確認されていました。
結果として分かったのは、自閉症児のばあい、ミラー・ニューロンの中枢部と考えられている下前頭回の弁蓋部という箇所での活動が、全くと言っていいほど見られなかったことです。特に、自閉症状の度合いが強い子ほど、ミラー・ニューロンは不活発でした。又、自閉症児のばあい、脳内で感情を司る箇所の活動も低下していました。一方、視覚や顔の筋肉を動かす箇所はfMRIで見ても正常に活動していました。
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この画像はNIKKEIサイエンスから転載しました

List    投稿者 nodayuji | 2007-05-07 | Posted in 3)地上へ進出した哺乳類(原猿から真猿へ), ④脳と適応No Comments » 

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