2007-04-04

大脳新皮質を著しく進化させたサル・人類

人類はとにかく脳がデカイが、そのデカさの理由は、主に大脳新皮質の進化による。
大脳新皮質って何だろう?
3-brain5s.jpg
左からヒト、チンパンジー、アカゲザルの脳 の外観(京都大学霊長類研究所:三上章允氏のお話より引用
続きはポチッと↓
ブログランキング・人気ブログランキングへ
にほんブログ村 科学ブログへ

 

 にほんブログ村 科学ブログへ


大脳新皮質というのは、高等哺乳類になって発達した脳で、高等になるほど大きくなっています。人類では、中脳、間脳などを覆うほどの大きさを占めています。

チンパンジーと300万年前のアウストラロピテクスは脳の大きさはほとんど同じで、現在のヒトの脳の大きさはその3倍になっているそうです。アカゲザルとヒトの脳を比べると、大きさは違いますが形はよく似ています。チンパンジーとヒトの脳を比べても、大きさが違うだけで、形や溝が多いというような特徴はそっくりです。おそらく、脳の構造自体はそれほど変わっていなくて、サルから人類への進化に伴って、新皮質の部分が著しく進化していったものと考えられます。

サル・人類の新皮質がどれぐらい大きいかというと、哺乳類のご先祖様である食虫類(原モグラ等)の平均を1とすると、新・旧世界ザル(平均)では48倍人類ではなんと196倍(体重補正後)なのだそうです。ちなみに、海馬は5倍、間脳は15倍ですから、いかに人類の新皮質がデカイかがわかります。(リンク

大脳新皮質はその解剖学的な位置によって、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の四つに大別されます。前頭葉は意欲や興味の維持、高次の判断、脳のほかの部分に対する抑制を主としたコントロールなど、頭頂葉は運動や体性感覚、側頭葉は高次の視覚や言語や記憶、後頭葉は視覚を受け持っています。また、それぞれに連合野と呼ばれる、一番あとからつけ加わった部分があり、より高次の処理を行います。

特に前頭葉の連合野である前頭前野は、自我とか意識の座ともいわれ、ヒトでもっとも大きく発達しています。(前頭葉連合野、前頭連合野、前頭前連合野とも言います。)

下の図の黄色いところが前頭葉です。赤は頭頂葉,緑は側頭葉,青は後頭葉,紫は小脳,オレンジは脳幹部を表しています。(脳外科医:澤村豊氏のHPより引用
anat-4.jpg
脳を左側面から見たところ
front10.png
脳を上面から見たところ

この前頭前野へ、大脳新皮質のほかの連合野から、情報が集められる神経線維が見つかっています。また、前頭前野からほかの連合野をコントロールする神経線維も見つかっています。つまり、大脳新皮質全体のなかでも、前頭前野が、もっとも高次の処理をしているというわけです。

大脳新皮質が大きくなっていくとともに、脳の神経回路の結びつきも幾何級数的に増加してゆきます。脳の神経結合が多ければ多いほど、生体が選択しうる反応の種類も多くなります。

大脳新皮質の多くの部分は、辺縁系から派生したり拡大したりする形で発生しています。系統発生的には、辺縁系の方が根っこに近いところにあり、その辺縁系と大脳新皮質とはあちこちにつながる無数の回路で繋がっています。神経回路の構造から見ると、情動を支配する辺縁系を制御する位置に新皮質が位置しています。おそらく、新皮質(その中でも前頭前野)が意識を統合する機能を担っているものと推測されます。新皮質の著しい進化が、サル・人類に固有の共認機能、人類に固有の観念機能の進化と密接に関係しているのは間違いないでしょう。

List    投稿者 fkmild | 2007-04-04 | Posted in ④脳と適応No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2007/04/184.html/trackback


Comment



Comment