2007-03-24

人類の観念機能:精霊信仰は科学思考の原点

tanakaです。前々回のサルの記事に続き、今回も画像問題から。
下の絵は、2~30年ほど前なら「だまし絵」として、脳トレブームの現在では、「ひらめき」「創造性」といった脳のはたらき=アハ!体験を手軽に実感できるアハ!ピクチャーの一つとして知られている絵。さて何が描かれている?(有名な絵なので知ってる人も多いかも)


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答えは・・・・

ダルメシアンの後姿

※箱の中に白文字で書いてます。文字部分をマウスでドラッグするか、ctrl+Aで。
「分かった!!」となっただろうか?一見無意味な斑点の中から、ある意味のあるモノを発見する。この絵が引き起こす感覚は、人間の「観念」が持つ重要な働きの一部を良く示している。
「観念」の最も重要な特徴の一つは、「直接五感では知覚できないモノを措定すること」にある。「力」や「数」の概念化も、多様な意味を持つ「言語」の発達も、観念のこの働きがあるからこそ可能だった。アハ!ピクチャーの場合は、受け取った一次的な視覚情報に対して、過去の記憶を照合し、(それまでは見えなかった)特定の意味を再措定するという、厳密に言えば“思い出す”働きに近いが、一次的な知覚情報から脳が能動的に何かを措定するという点は、全く新しいモノを創造・発見する場合も同じと考えられる。これが、人類と、サルも含む他の動物を大きく分かつ思考能力の違いだ。
人類が進化の過程で初めて「観念」を手に入れた時、この「アハ!体験」のひらめき感覚を何千倍、何万倍にもしたようなドラスティックな意識の変容があったことだろう。そしてそれは、自らを取り巻く自然や事物を背後で動かす「何者か」の存在を措定する、という形で登場したに違いない。なぜなら、極めて過酷な生存状況に置かれていた我々の祖先にとって、目に見える自然現象の背後にある摂理や原理を知ることで、初めて道具の発明や防衛力の上昇が実現でき、初めて生存が可能になったからだ。
当時の彼らなら、彼ら自身が新たに見つけ出したその“何者か”=自然や事物の背後に措定した対象を、さしずめ精霊だと考えたことだろう。その意味で、日本の「八百万の神」のごとき古代の精霊信仰は、実は現在に連なる科学思考の原点だと言える。ニュートンも、リンゴが木から落ちるのを見て「万有引力という“精霊”」を発見したわけだ。
アハ!体験は、脳内で報酬系のホルモン分泌を伴う。これも、もとはと言えば発見や創造が人類の適応=生存という現実課題と密接に結びついていたから。脳トレブームの続く昨今だが、余り自己目的化するのも困りモノ。原始人類が苦難の末に手に入れたこの観念という適応の武器は、ちゃんと現実に適応するためにこそ使っていきたい。

List    投稿者 s.tanaka | 2007-03-24 | Posted in ④脳と適応No Comments » 

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