2006-12-30

小脳の長期記憶

進化上の新しい脳と言われるのは、大脳(新皮質)であるが、それと並んで、運動を司る小脳がある。
この小脳の記憶メカニズムは、大脳の記憶メカニズムと正反対の事をしている。
小脳には、プルキンエ細胞という非常に大きな神経細胞がある。
以下、小脳の記憶メカニズムを発見して伊藤正夫さん記事から紹介する。

『生命誌』27号の「未知に挑戦する私の脳」
未知に挑戦する私の脳

小脳のプルキンエ細胞への信号の入り方は以下の様である。
プルキンエ細胞
photo_08_b01.gifphoto_08_b02.gif

>プキンエ細胞には、2つのルートを通って信号が入る。一つは、苔状線維から顆粒細胞を通り、平行線維を経て入るルート。もう一つは、登上線維から入るルートである。結果が目指したものと違うと、登上線維から誤差信号が送られ、平行線維からの入力が抑えられる。

>小脳の学習では、考えていた結果にならなかった時に、間違っていたという誤差信号を送るのです。練習を繰り返すたびに、誤差信号が入ると、間違えたときに働いている回路が抑えられ、うまくいった時の回路だけが残る。だから、繰り返しているうちにうまくなるわけです。今では小脳が運動だけでなく、言語や知的な思考活動などにも関与していることがわかってきており、長期抑圧がシナプス可塑性や学習記憶機構の一番の要...

少し補足すると、小さな子供のボール投げを想定してみる。

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最初は、小脳から腕の全ての筋肉にランダムに運動信号が出て行く。多数の神経ネットワークを駆動させる。だから、ボウルは何処に飛んでいくか分からない。

それが、試行錯誤をする事によって、特定の筋肉へ的確なタイミングで運動信号が出て行くようになり、狙った方向にボウルが飛ぶようになる。

つまり、小脳から出て行く運動信号を絞り込んでいく。多数の神経ネットワークを少数の神経ネットワークに絞り込んでいく。

ミクロにこの事をしているのが、プルキンエ細胞のシナプス結合を抑制(断線)するメカニズムである。
伊藤正夫さんは、これを「長期抑制」としている。

大脳の記憶は、繰り返し経験する事で、神経ネットワークの中に、信号が通り易い道(シナプス結合)が出来上がり、その道が「記憶」となるメカニズムである。云わば、加算記憶である。

それに対して、小脳の記憶は、最初にあった多数のシナプス結合を抑制(遮断)し、少数のシナプス結合に絞り込んでいく記憶である。いわば引算記憶である。

これが小脳の運動記憶であるが、最近では、大脳の記憶を小脳記憶に写し撮っているのではないかと研究されている。

例えば、掛け算の九九を覚えるケースが上げられている。最初は、大脳の記憶として「サザンガク」という音記憶として固定する。そのうち、「3×3」という視覚入力で瞬時に「9」という文字を書ける(運動記憶)。

最後に、ジュニアサイエンスアカデミーでの伊藤正夫さんの話しをリンクさせておきます。

脳のふしぎ、脳のしくみ
by leonrosa

List    投稿者 leonrosa | 2006-12-30 | Posted in ④脳と適応No Comments » 

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