生物の地上進出
生命が地上進出を果たしたのは5億年前のオルドビス紀と言われています。
当時の環境は
大気中に増え、成層圏まで達した酸素によって5億年前にオゾン層が形成されました。生命に有害な紫外線は防がれるようになり、生命が地上で生き延びられる環境が整ってきます。先に陸上にあがったのは植物でした。脊椎動物が陸上に進化するのはもうすこし後になります。
活発なプレートの活動によって大陸同士はぶつかり合い何度も成長・分裂を繰り返していました。
約4億年前にも2つの大陸がぶつかり大きな山脈が出来ました。そこにはヒマラヤ級の山脈ができ、そこで降った雨は大きな河川を作り、海以外の新たな生育環境をつくりだしました。
地球と生命の誕生
そのような環境で初めて地上進出を果たしたのはなんでしょうか?
形状が確認できる最古の陸上植物は,4億1000万年前のシルル紀中期に発見されたクックソニアである。大きさは数cmにすぎないが,直径1.5 mmという細い茎が枝分かれしている様子がはっきりとわかる。その先端には胞子のうがある。気孔も存在する。
岐阜大学教育学部理科教育講座
しかし、湿地付近ならともかく、岩石あるいは保水性のない無機質の砂や石で覆われている地上で、このような植物が生息可能になるには無理があります。
今ではコケより前に、地衣類が最初に地上進出したという説が有力です。
地衣類とは単独の生物ではなく、菌類と藻類の共生体です。
菌類に囲まれ、乾燥などの外圧から保護された藻類が光合成し、栄養を菌類に提供してます。
http://www.hyogo-iphes.jp/taiki/nakagawa.htm
地衣体横断模式図(典型的な異層状地衣類)
(出典:吉村。原色日本地衣植物図鑑。保育社。1974)
淡水に適応した藻類が、乾燥化や氷河期などに直面した時に菌類と常時共生する道を選んだのではないでしょうか。
菌類は元々酸にもアルカリにも強く、厳しい環境下に適応する能力を持っています。また、海岸の波打ち際や、コンクリートなど様々な場所に付着します。
地衣類は、他の生物が生育できないような厳しい環境下でも生活できます。一年の半分が暗黒で、酷寒の世界となる南極圏や北極圏、そして乾燥、低温、強風などにさらされるヒマラヤやアンデス山地などの高山にも地衣類は多く、何年間も雨の降らない砂漠にも地衣類の群落が見られます。地衣類がこのような過酷な条件下でも生活できるのは、地衣類はもともと乾燥や低温、高温に耐える能力が高いうえ、低温、乾燥などにさらされると呼吸量を極端に少なくして、エネルギーの消耗をおさえたまま、何年間も耐えられる能力をもっているからです。
国立科学博物館
地衣類は光合成によって二酸化炭素を有機物に変える機能だけでなく、大気中の窒素を地中に蓄積する機能を有していますリンク。
このように過酷な環境に適応できる生命力を持つ菌類と自らエネルギーを生み出せる藻類の共生態である地衣類(最強コンビ)が、地球上で最初に上陸した植物の先祖だったのです。そして、その地衣類たちが長い長い時間をかけて、無機的な岩石を酸で溶かし、自身も死骸となり、その後の植物繁栄の礎となる最初の土壌を形成していくことになるのです。そして、その土壌の上にやがて苔・シダ植物が登場します。
自然の摂理から環境を考える
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