腸の起源?〜海綿動物の襟細胞と立襟鞭毛虫〜
多細胞の始まりは腸から?腸の起源とは?
これまで睡眠について追求していく中で睡眠にはメラトニンやセロトニンといったようなホルモンが大きく睡眠の質と関連しているということがわかってきました。ホルモンの分泌のバランスを整えることで質の良い睡眠を取ることが可能になってきます。
では、それの大本であるホルモンはどこからできるのでしょうか。
答えは「脳」ではなく「腸」からです。
腸は消化器官の一部という認識が一般的ですが、体の中でたくさんの役割を担っています。
腸の役割とは何でしょうか?
一つは前述した「食物の分解、吸収、運搬」です。多くの動物が食物から栄養を体内に吸収できるのは腸があるからですね。
腸には消化以外にも、もう一つ大きな役割があります。
それは上記のホルモン分泌のように腸自体が状況をつかみ、判断し、指令を出す「判断機能」です。
これまでは「脳」がすべてを判断し、処理していると考えられてきましたが、腸も外圧をつかみ、判断し、迷走神経を使い脳とすり合わせを行っているということが近年の研究で明らかになってきています。
他にも生物によっては腸で呼吸ができたりと、腸は体の中で本当に様々な役割を担っています。脳の追求をしていく中では切っても切り離せない「腸」。
今回は腸の起源にまでさかのぼり、腸の謎を紐解いていきます。
●腸の歴史
腸はいつ生まれたのでしょうか。
時代は多細胞の起源にまでさかのぼります。
腸機能を持つ一番起源的な多細胞生物は「海綿動物」※1です。
海綿動物は多細胞生物の起源とも言われています。
海綿動物が腸機能を持つ一番起源的な多細胞生物だと言われている理由は栄養分を吸収する細胞「襟細胞」にあります。
海綿動物の襟細胞は一本の鞭毛を持ち、それを環状に取り囲む形で並んだ微絨毛からなる襟という構造を持っています。
鞭毛は螺旋状に動かすことで、水流を起こすことができ、バクテリアなどの餌粒子を集め、これを襟が捕捉することで摂食を行います。
海綿動物の胃腔内部には多数の襟細胞が存在し、入水孔から入ってきた水から餌粒子を取り込み、出水孔から排出することで永続的に水を循環させることができます。
→参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=m8a0oNsDEx8 引用元:BlueWorldTV
注目するべきはその際、細胞の一つ一つの襟の微絨毛により害があるか否かの「判断」を行うということです。
体内に吸収してからではなく襟細胞自体が害があるかどうかを判断できるんですね。
冒頭に述べたように腸の定義を「食物の分解、吸収、運搬」と「判断機能」の2つの機能を持つものとするなら、腸の起源は両方が確立されたこの海綿動物からなのではないか、、と思いがちですが、実は海綿動物の襟細胞とほとんど同じ構造をしている単細胞生物が存在しているんです。
それが「立襟鞭毛虫」※2です。
見比べてみるとすぐに分かりますが、見た目が非常に類似していますね。
見た目だけに限らず、摂食の方法も海綿動物の襟細胞とほとんど同じ構造で行っています。
立襟鞭毛虫を含む単細胞生物は自らが移動し、体に触れた餌粒子しか摂食することはできませんでしたが、多細胞化して襟細胞になると、一度に多量の水を体内に循環させることができ、餌粒子に触れている細胞の数も増やすことができるようになりました。
次回からはこの「立襟鞭毛虫」のルーツを探っていきます。
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