2022-10-15

脳の進化史(3) 皮膚は「0番目の脳」

膜から進化した外界との境界、人類の皮膚についても見ていきます。

前回の『「皮膚」には、目でなくても“光”を捉え、耳でなくても“音”を聞き、舌でなくても“味”を知るという感覚が備わっている』とはどういうことなのでしょうか。

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画像はこちらよりお借りしました。

目も耳も出来てない胎児も、妊娠10週頃から何度も子宮の壁に触れる動作が見られる、つまり触覚によって外界の様々なことを感じ取っている・・・
赤ちゃんへの視覚や聴覚の刺激への反応は脳のごく一部だったのに対し触覚への刺激からは脳の広い範囲が活性化した・・・
触覚は人間の早い段階の脳の発達を促している・・・

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NHKの「〝皮膚〟0番目の脳(ヒューマニエンス40億年のたくらみ)」より
培養皮膚にダメージを与えて、赤と青の光を当てたところ、赤の光を当てたときには回復が促進されたそうです。クラゲの水槽に緑のライトを当てても反応しないのに、赤のライトを当てるとライトに向かって泳ぎ出すという事実がそこに重なります。色を感じるオプシンという細胞(網膜に多くある)が皮膚にも多く存在するので皮膚も色を感知するのだそうです。

さらに皮膚には香りを察知する力もあるのです。ドイツの研究から白檀の香りで傷の治りが早くなるという事実が報告されているそうです。脳を通さずに皮膚が直接香りを察知する、というのです。

また、皮膚は音の違いも感じるそうです。皮膚を露出した状態で2つの音楽を聴いてもらううと、全く同じに聞こえるのに皆が違いを感じました。実は片方には耳に聞こえないとされる超高周波音を含んでいたのです。超高周波音が脳を活性化するそうです。厚手の服を着るとその違いを感じる力が減少します。
※アフリカの様々な少数民族は「服を纏うことで外界を感じる力が弱まる」と言うそうです。
画像はこちらよりお借りしました。

脳卒中で体の右半分の感覚を失った人が登場しました。この方は感覚のない手を感覚のある手で常に触ることで、日常を取り戻していきました。皮膚感覚がないと自分の動きがわからず、常に右足や右手を「見る」ことで自分の体の動きを確認しているとのことでした。つまり皮膚感覚は己とその他を分けるものなのです。

参考:まなびもん「皮膚・0番目の脳〜ヒューマニエンス」

◆皮脳同根
赤ちゃんとなる受精卵は、お母さんのお腹の中で細胞分裂を繰り返しながら成長します
そして3週目には胚葉(はいよう)と呼ばれるものができます。
この胚葉は外側から外胚葉、中胚葉、内胚葉と呼ばれる3層の細胞層から成り立ち、ここからさまざまな器官が作られるのです。

この外胚葉から作られるのが、中枢神経(脊髄など)や末梢神経、感覚器(目や耳、鼻や表皮など)といった脳や皮膚です。つまり、皮膚には感覚機能と判断機能(脳)と同じ構造を持っているのです。

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画像はこちらよりお借りしました

皮膚には「セロトニン」「ドーパミン」「アドレナリン」などの脳内物質を受け取る皮膚受容体があります。

だからこそ、いろいろなことを感じ取る。「セロトニン」は幸せや癒し、「ドーパミン」は快感や意欲、「アドレナリン」は活動的にしてくれる脳内物質であることから、正に「肌で感じて感情を作り出す」ということになります。

例えばお風呂に浸かった瞬間に「気持ちよい」と感じたり、腹痛時に手でおなかをさすってもらうと「痛みが和らいだ」と感じたりするのは、実は体の表面の皮膚がキャッチしたものです。それは、皮膚にはアドレナリン、ドーパミン等の脳内物質を感じとる受容体があるためです。
直接触れることができない脳の代わりに肌に触れることで、心地よさリラックスを与えることになるのです。スキンシップが重要と言うのもこのためです。

List    投稿者 m-yoriya | 2022-10-15 | Posted in ④脳と適応No Comments » 

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