2021-05-24

多細胞生物の細胞統合観の見直し・・・要素還元主義や機械論的解釈を越えるホリスティックな統合へ

多細胞生物は、多くの細胞が互いに接して体を構成している。つまり、独立した細胞同士が直に接するという細胞統合観でその構造を想定していた。httpswww.oppen.co.jptaemechanism

この細胞統合観で多細胞生物の構造論理が確立され、その後、細胞外マトリックスという細胞に属さないタンパク質群が発見された。

しかし、この重要な発見が今まで元の理論に組み込まれることなく捨象されてきた。

  画像はこちらからお借りしました

ところで、細胞間マトリックスとは、細胞外の空間を充填する物質であると同時に物理的な支持体の役割(例:動物の軟骨や骨)、細胞-基質接着における足場の役割を担う、基底膜、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの細胞間を埋めるタンパク質群であり、植物における代表的な細胞外マトリックス成分は、セルロースである。

そして今回それらの矛盾点に着目した異種組織を一体化する細胞外環境の特性を解明 -毛包周囲の基底膜が多様な組織間インターフェースを形成する-という研究発表からは、多細胞は単細胞がただ集まったものではなく、細胞同士の結合には、接合するそれぞれの異なる機能をもった双方の細胞の遺伝子を内包した、基底膜等の、核がないと思われる細胞間マトリックスタンパク質を介して行われているということが解る。

これにより、細胞間マトリックスは、結合した異なる機能を持つ細胞同士をより包括的に機能させるという、全体統合性をもっていると推定される。

例えば、脳内のニューロンが成長して接続先へと成長していく際にも、先にグリア細胞様(正確にはわかっていない)のタンパク質の梯子ができ、それに沿って成長していく。これからしても、細胞の機能発現を制御しているのは、細胞間マトリックスの方だとも考えられる。

更に、これを制御しているのは、キルリアン写真のファントムリーフ(玄葉)や、膜をもたない細胞小器官を形成する『細胞内の「液-液相分離」現象~タンパク質や核酸分子を整理し、反応の場を作り、生命を駆動する』という現象にも関連する、微弱電磁波の働きである可能性もある。

こうなると、今までの理論の、独立した細胞は固有の機能を持っており、それらの結合は、その独立機能の足し算でしかないという見識も崩れてくる。これは、人間は個々の独立した細胞の集まりであるという、要素還元主義や機械論的な解釈を大きく覆す。

つまり、個々の細胞の集まりは、それぞれの機能の足し算ではなく、細胞間マトリックス等を介して、より高次の全体機能を発現するというホリスティック医療の原理にも近い見識にもつながるのではないかと思う。

ホリスティック:アリストテレスの「全体とは部分の総和以上のなにかである」という表現に代表される還元主義に対立する考え方。現実の基本的有機体である全体は、それを構成する部分の総和よりも存在価値があるという理論。また同時に、一個体は孤立に存在するのではなく、それをとりまく環境すべてと繋がっていると考える。

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☆以下引用

異種組織を一体化する細胞外環境の特性を解明

-毛包周囲の基底膜が多様な組織間インターフェースを形成する-

(中略)

体内の多くの臓器では、異なる組織が組み合わさることで、臓器固有の機能が生み出されます。例えば皮膚では、さまざまなタイプの上皮細胞がその下の真皮に存在する線維芽細胞、筋肉、神経、血管などと相互作用することで、バリア、感覚受容、組織再生などの機能を発揮します。

 その際、多くの組織が空間的に正しく配置されることで、隣接する組織の間でシグナルが交換されます。同種の細胞であれば、混ぜるだけで容易に凝集して塊を作ります。しかし、異なる組織同士がどのように相互作用し、一体化した臓器を作るのかについては不明な点が多く残されています。

 通常、それぞれの組織は「基底膜」という薄いシート状の細胞外マトリックスで覆われており、他の組織とは物理的に隔てられています。つまり、異なる組織同士の機能的な接続は、基底膜という薄い仕切りをインターフェースとして成り立っているのです。

httpswww.riken.jppress202120210510_1index.html

 近年、基底膜をはじめとする細胞の足場構造は、均一な成分でできているのではなく、場所によって組成が違うことが分かってきました。

これまで、300種類程度ある細胞外マトリックスタンパク質について個別の研究は行われてきましたが、これらタンパク質全体を総体として捉えながら、細胞外マトリックス全体の遺伝子発現やその転写産物であるタンパク質の組織分布、そしてそれらの機能との関連を体系的に解析した研究はほとんど行われてきませんでした。

 なぜなら、細胞外マトリックス分子はサイズが巨大であり、さらにそれらが集まって超分子複合体を形成するといった性質が、網羅的解析を阻んできたからです。そのため、組織間インターフェースを形成する基底膜の分子実体や機能の統合的な理解は進んでいませんでした。

(中略)

これまで独自に確立した皮膚の細胞分取法を応用することで、さまざまな上皮幹細胞とその周囲の間充織細胞を分離し、遺伝子発現を解析しました。さらに、大規模な免疫組織染色法を組み合わせることで、基底膜分子のメッセンジャーRNA(mRNA)とタンパク質局在の組織空間情報を定量的かつ統計的な手法で調べました。

遺伝子発現解析の結果、各区画の上皮幹細胞は、それぞれ異なる基底膜の遺伝子を発現していることが分かりました。さらに、皮膚で発現している78種類の細胞外マトリックス遺伝子のタンパク質産物に対する抗体を用いた免疫組織染色法の条件を検討し、それらの組織内局在の同定にも成功しました。

20210510_1_fig5

そして、細胞外マトリックスのmRNA発現とタンパク質局在とを網羅した毛包の「細胞外マトリックスアトラス」を作成しました(図2)。このアトラスにより、組織間相互作用ごとの基底膜組成を同定できました。例えば、毛包再生に働く毛包先端部の毛芽領域における上皮幹細胞と毛乳頭細胞の基底膜インターフェースでは、シグナル伝達に関わる細胞外マトリックスタンパク質が濃縮しており、シグナル交換に適した基底膜が構築されていることが分かりました。

(中略)

本研究では、組織間相互作用の種類に応じて基底膜が最適化され、それがシグナル伝達などに重要な役割を果たしていることを明らかにしました。これは、多組織間相互作用の理解と制御には、基底膜インターフェースのさらなる理解が不可欠であることを意味しています。

 

List    投稿者 sinsin | 2021-05-24 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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