2019-09-05

タンパク質合成も、中心体による核内DNA配置に依存している

20130128_24624771953年の「DNAの二重らせんモデル」の発見を境に、それまでの研究されていた数々の生物学の所見は見向きもされず、DNAのみが遺伝情報を司る、全生物を貫く基本原理であるとした考え方一色になった。

これは、生物は物質であるDNAを起点とした機械であり、それだけで生物を説明できるという単純で大柄な論理として世に広まった。

他方、これ以前の研究は、生物の複雑性を真正面からとらえた、生きた細胞全体が遺伝の秘密をもっているという理論も多く存在していた。

現在でもその一つとして、DNAによらないエピジェネティクス理論と呼ばれる細胞質遺伝も事実として確認されている。

この2つの論理からいえるのは、DNAだけで生物が形成されるのであれば、進化はほぼ突然変異でしか成立しないが、細胞質遺伝であれば、絶え間ない外圧に適応し、それを次世代の子孫に伝えることが可能な、外圧適応体としての生物の姿を論理的に説明できることである。

また、それ以外にも、生体内では変異しやすいRNA(及びその構成物質であるリボ核酸)が決定的な役割を持っていおり、固定的なDNAはそれに従属した物質でしかないという視点も重要だ。

これからも、DNAだけでは不可能な外圧適応体としての生物の可能性が見えてくる。

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それは、以下の引用のように、

 『DNAに対して決定的に重要なRNAの複製の役割』

メッセンジャーRNAは、DNAの塩基配列をそのまま使用しているのではなく、DNAの情報を転写したのち、不要な部分を切り落とし、必要な部分をつなぎ合わせて使用している(自己スプライシング)。加えて、塩基を付け加えたり、削除したりしている(つまり編集している)。このRNAによって加工された配列を元にタンパク質が生成されているのである。

これを擬人的に表現すると、RNAがただの固定的な物質であるDNA情報を参考にしながら、適応に必要な判断を行いながらタンパク質を合成しているということになる。

これはこれで、その通りだと思うが、さらに深い判断機構があるようだ。

それは、必要なDNAを読み取る過程は、核内空間に均質的に存在すると想定されているDNA分子群から、RNAが何らかの選択・判断をして読み取っているという上記内容の前提がある。

しかし、実態は、その選択・判断の前に、読み取りの対象となるDNAの部分を、性質の異なる2種類の分離された核内空間に選択・配置し、RNAによるDNAの読み取りをムーズ行えるようにしている、というものだ。

これは、分化細胞内での現象で、核内のすべてのDNAのうち、分化細胞の機能形成に必要なDNAを選択して、あらかじめ、読み取りやすい空間に配置しているのだと思われる。

もっと大きくとらえると、分化細胞の核内で読み取るべきDNA分子を、RNAの読み取りやすい核内の空間に、細胞内配置を決定する『中心体』が、あらかじめ選択配置しているとも考えられる。

その内容は、理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター発生エピジェネティクス研究チームの三浦尚研究員、平谷伊智朗チームリーダーらの共同研究チームによる以下の

『染色体の形は細胞分化と共にこう変わるー分化に伴うゲノムの三次元構造変化を1細胞レベルで明らかに-』に詳しいが、専門的でかなり長い内容なので要約する。

まず、核内には、トポロジカルドメイン(TAD; Topologically Associating Domain)と呼ばれる、染色体上に存在する約1Mb長の哺乳類の染色体の階層構造の一つであるヌクレオソームの集合体が存在し、それが相互作用頻度の高い一つながりのDNA領域に対応している。

そして、TADが配置される核内空間には境界が存在する。この境界の、

① 核の表面に近い領域に配置されたTAD(約1Mb長のDNA)

は読み取られにくい。

② 核の中心に近い領域に配置されたTAD(約1Mb長のDNA)

は読み取られやすい。

つまり、RNAのDNA読み取り選択判断の前に、核内2領域のどちらに存在するかという、DNAの核内空間配置に依存した、読み取り部分の選択が行われているようだ。

その要点を下記に引用する。

  図1 哺乳類の染色体の階層構造

fig1哺乳類の染色体の階層構造を大きさの順に右から示す。間期の染色体は、分裂期ほど密には折り畳まれていないが、それぞれの染色体は核内で別々の空間を占めている。本研究では、TADとA/Bコンパートメントで構成されるMbレベルの階層構造に着目し、細胞分化過程でこれらがどのように変化するのかを調べた。

図細胞分化に伴う哺乳類染色体の三次元構造変化

fig分化前はAコンパートメントであった領域が、分化後にはBコンパートメントに変化(あるいはその逆)する様子が、ゲノム上のさまざまな領域で認められました(図3)。核内コンパートメントの分布はDNA複製タイミング[14](ゲノムDNA複製の際、どの領域から順に複製が進行するかという順序)とよく相関し、Aコンパートメントは細胞周期のS期[8]前半に複製される領域と、BコンパートメントはS期後半に複製される領域とそれぞれ一致する傾向を示すことが知られています。

 

 図7 分化に伴うTADを単位とするA/Bコンパートメント変化のモデル

fig7

未分化な細胞が分化するとき、特にA/Bコンパートメントの境界に位置する一つ分のTADの核内配置が変わり、それまでとは別のコンパートメントに移動することが1細胞レベルでも観察できた。配置が変わったTAD内部では、配置変化に引き続いて遺伝子発現の変化が引き起こされ、このようなTADが一定以上存在すると細胞分化が決定される可能性が考えられた。

これらの研究内容からすると、

RNAによるDNA複製は、核内のTADが配置される領域に大きく依存していることになるが、その配置を決めているのは、おそらく中心体であるため、

細胞分裂を核分裂へと矮小化する現行教科書

これらの過程でのポイントがいくつかある。まず中心体の複製はDNAによらない。つまり中心体はDNAによらない固有の複製情報(遺伝情報)を持っていると思われること。

中心体に異常があれば分裂は行われない。染色体の分裂や、細胞小器官の分配は中心体によって行われる。更に中心体は細胞小器官の配置まで司っている。

以上より細胞分裂の直接の司令塔(統合者)は中心体であるといえる。

のとおり、

タンパク質合成も、まず第一に、中心体による核内DNA配置、第二にRNAの編集機能に依存していることになり、DNAはダダの基本情報物質でしかないことがわかる。

このように、生物の遺伝機構ですら、まだまだ深い内容があるのにもかかわらず、それらを捨象したDNA信仰にとどまっている限り認識はなにも進化しない。ましてや、そのようなレベルの認識で、人体に影響を及ぼすDNA治療などの臨床研究は、犯罪的ではないかと思う。

 

List    投稿者 sinsin | 2019-09-05 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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