2014-12-07

【乳酸菌はどのようにしてヒトの免疫機能を正常化するのか?】-6. ガンの原因はミトコンドリアの機能不全である

前回、ガンは浄血装置であることを述べました。

そこで、今回は、ガン細胞そのものがどのような過程で生じるのか見ていきたいと思います。

ガン細胞の発生過程を見ていくにあたり、非常に重要な視点となるのが「ミトコンドリア」です。

ミトコンドリアとは、ほとんどすべての生物(動植物や菌類など)の細胞に広く含まれている細胞内構造物の一つです。 高校の生物の教科書などで細胞の構造図を見た覚えがあれば、その中でたいていは丸いカプセルのような形で描かれていたでしょう。 このミトコンドリアは一つの細胞に(細胞の種類によって違いますが)数十から数万という大変な数が含まれています。

このミトコンドリアは、普段私たちの体の中で一体どのような働きをしているのでしょうか?

ミトコンドリア

(画像引用元:http://d.hatena.ne.jp/appleflower/20110220/p1)

 

1.人間はミトコンドリアを使ってエネルギーを産み出している

人間のエネルギーの産みだし方について、説明します。我々人間が、なぜ、生きて動くことができるのか?その説明をします。たとえば、自動車は、エンジンがあっても、ガソリンがなければ、動きません。

人間も自動車で言えば、エンジンがあって、ガソリンのようなものがあるハズです。これは、これからの説明をわかりやすくするための、たとえを用いた説明ですので、その辺を御理解いただければ幸いです。

まず、人間の細胞には、二つのエンジンがあります。ひとつは、「解糖系」というエンジン。もうひとつは、「ミトコンドリア」というエンジン。この「二種類のエンジン」をケース・バイ・ケースで使い分けて、生命を維持しています。(生きているのです)

まず、解糖系というエンジンは、その名の通り、解糖系というエンジンのガソリン(燃料)は糖です。もうひとつのミトコンドリアのガソリン(燃料)は、酸素と脂質とタンパク質です。

 

◆小まとめ◆

<人間がエネルギーを産み出す方法>

1.ミトコンドリアが「酸素」「脂質」「タンパク質」を使用してエネルギーを産み出す場合

2.解糖系が「糖」を使用してエネルギーを産み出す場合

 

2.どのようにしてこの2種類のエンジンを使い分けているのでしょう?

 

◎ミトコンドリア(=持久力系エンジン)

ミトコンドリアは、持久力や持続力のエンジンです。燃料は酸素と脂質とタンパク質です。後で、詳しく説明しますが、ミトコンドリア内で、たとえば、車を例にとると、アイドリングのような状態をつくり、死ぬまで、アイドリングしているようなイメージです。

このアイドリングが止まった時に、死が訪れるのです。重要なのは、あくまでも、酸素です。酸欠は、生命の死です。

糖尿病の失明や壊疽も、血流不足により、部分的にアイドリングが停止し、部分的な細胞死が発生します。

網膜の毛細血管はひじょうにせまいのです、細いのです。生命にとって一番重要な、酸素は、赤血球が、運びますが、この赤血球が、ぎりぎり通れるかどうか? それが、網膜の毛細血管なのです。

高血糖になると、すぐに、血流が悪くなります。赤血球が折角、頑張って酸素を網膜に運ぼうとしますが、高血糖になると、簡単に、運べなくなってしまいます。

それほど、網膜の毛細血管は繊細なのです。(網膜に限らず、全身の臓器や中枢神経をネットワークしている毛細血管すべてが、ひじょうにせまく細いです)

車の場合、アイドリングが止まっても、またエンジンをかければ、良いのですが、ミトコンドリアというか、生命は、一度、この営みが止まると、再稼働できないのです。ここが重要です。

ということで、窒息等は、酸素が取り込めなくなり、ミトコンドリア内の酸素と脂質とタンパク質の燃料が、 枯渇するわけですから、ミトコンドリアのアイドリングが止まるのです。

いわば、死と言う事です。我々、ミトコンドリアを持った生物の生命線は、なんといっても酸素なのです。

酸素がない状態、それは、死を意味します。反対に、解糖系は、酸素を必要としませんので、ある意味、不死です。 癌細胞も不死です。癌細胞を培養して糖を与え続けると、永遠に増殖します。寿命がないのです。

解糖系が言わば癌化する前の癌細胞と考えてもいいです。 解糖系が潜在的癌細胞であり、解糖系が何らかの環境の変化で、亢進する。

解糖系の異常な亢進が癌ということです。(遺伝子の変異)
◎解糖系(=瞬発力系エンジン

解糖系は、 通常は休眠状態です。 たとえば、 何か重い物を持ち上げなければならなくなったとか、たとえば、 家が火事になったような時に、火事場の馬鹿力として、使われます。 この時、みなさん、必ず息を止めますね。 筋肉の中で嫌気的解糖を行っているのです。 そして、 翌日、筋肉内に乳酸がたまり、筋肉痛になります。もし、皆さん、筋肉痛になったら、「あ!俺の筋肉の中で、解糖系が、嫌気的解糖を行って、 乳酸を出したな!」 と理解してください。

簡単に言えば瞬発力のエンジンが、 解糖系の担当です。 通常、スポーツ選手、特に瞬発力を求められるスポーツ選手以外は、解糖系はほとんど、使われないのです。そして、年齢とともに、解糖系は衰えていきます。瞬発力のスポーツは、歳をとると難しくなっていきます。

 

◆小まとめ◆

◎ミトコンドリアの特徴

 ・基本的に人間はミトコンドリアを使用して、持続的にエネルギーを産出している

 ・酸素がなくなると死ぬ

◎解糖系の特徴

 ・普段は休眠状態

 ・酸素が必要ないので不死身

 ・潜在的細胞(→解糖系の異常な亢進が癌細胞)

 

3.癌細胞は、糖を燃料にして、解糖系(エンジン)を動かしている

細胞内で、解糖系(エンジン)が糖を燃料にしてエネルギーにすると、ピルピン酸というものが出てきます。

そして、このピルピン酸は、アセチルCoAというものに変化して、ミトコンドリア(エンジン)に移動し、酸素と合わせて、ミトコンドリア(エンジン)内で、燃料になり、エネルギーになります。

これが、我々人間のエンジンの正常なエネルギーを、生み出す仕組みです。しかし、癌細胞は、糖を解糖系が取り込み、ピルピン酸を産み出した後に、通常のアセチルCoAに変化せず。酸素があるのに、一切、酸素を用いないで、ピルピン酸から乳酸に変化させているのです。

以下に、正常なエネルギーのつくり方と癌細胞のエネルギーのつくり方を、まとめて比較してみましょう!

 

<正常なエネルギーのつくり方>

解糖系が糖を燃料にしてエネルギーを産出

→ピルピン酸が同時に生成される

→ピルピン酸は、アセチルCoAへ変化し、ミトコンドリアへ移動

→ミトコンドリアは、酸素とアセチルCoAを使用し、エネルギーを産み出す

 

<癌細胞のエネルギーのつくり方>※これが重要!!

解糖系が糖を燃料にしてエネルギーを産出

→ピルピン酸が同時に生成される

→ピルピン酸は、アセチルCoAへ変化せず、癌細胞が乳酸へ変化させる

(乳酸で止まり、酸素があるのに、酸素を用いず、ミトコンドリアにも移動しない)

※これを「嫌気的解糖」等と呼びます。

DCA01

(引用:http://blue-clinic-aoyama.com/?p=3513)

 

4.そもそも解糖系とは何か?なぜ存在しているのか?

 

◎生命の起源 

話は、まず、地球上の生命の起源に遡ります。まず、「地球上のすべての生命の共通の祖先がいた」という理解は、 世界中の研究者が認めるところです。 しかし、今のところ、その共通の祖先は何か? その解明はできていません。

しかし、その共通の祖先の次の段階の生物は、わかっていますし、現在も存在してもいます。 それは、「原核生物」と呼ばれるものです。 たとえば、「大腸菌」なんかが、 よく知られた、原核生物ですが、 とにかく、具体的な生物として、 最初に産声を上げたのが、「原核生物」と言われています。

 

◎原核生物は糖を摂取し、生きていた

「原核生物」は、 酸素のない環境で、 深海の熱水吐出口あたりで、 生まれたのではないだろうか? というのが、 研究者達の共通の認識です。原核生物のまわりの環境は、酸素がまったくなく、弱酸性で、海水温が32℃くらいで、糖の元祖ともいうべき、ホルムアルデヒドが、多く存在しており、原核生物は、 そのホルムアルデヒドを、摂取して、生き延びてきたのです。

原核生物は、 ホルムアルデヒド(糖の元祖)を、摂取して、解糖系を用いて、生きていました。そんな時、暗黒だった、地球に、太陽の陽がさしはじめました。そうすると、太陽の陽を利用する、あらたな原核生物が産まれました。シアノバクテリアの登場です。シアノバクテリアは、光合成を行い、酸素を産出しました。酸素は、原核生物にとっては、猛毒でした。多くの原核生物が、酸素で、絶滅しましたが、酸素の環境に適応した 。原核生物は、 疲弊しながらも生き延びたのでした。
◎人間は、原核生物(解糖系)とミトコンドリアが合体した真核生物

そんな時、 酸素を利用する 新たな生物が産まれました。ミトコンドリアの登場です。酸素を利用し膨大な量のエネルギーをつくり出す、ミトコンドリアを、原核生物は自身に取り込みました。原核生物は、その酸素を利用して莫大なエネルギーを つくりだすことに成功しました。「真核生物」の誕生です。

真核生物は、酸素と脂質とタンパク質を摂取し、やがて、多細胞生物に進化して、有性生殖を開始し、巨大化と多様化を推進し、ますます、酸素を活用し、進化繁栄をしていきました。それが、我々人類なのです。まとめますと、 我々は、原核生物(解糖系)とミトコンドリアが合体した、真核生物であり、それが多細胞生物となり、さらには、変化する環境に適応するために、有性生殖を取り入れ、それによって、ゆるやかに進化し、多様性を育んできました。

 

5.なぜ嫌気的解糖でエネルギーを産出するようになるのか?

1921年に、がん細胞がブドウ糖を多く取り込むことが最初に報告されました。糖尿病のがん患者が、がんを発症すると尿糖が減ることや、ブドウ糖の入った培養液にがん組織や正常組織を入れて培養する実験で、正常の筋肉組織や肝臓組織に比べて、がん組織ではブドウ糖の消費量が極めて高いことが報告されました。また、翌年の1922年には、がん組織には乳酸が大量に蓄積していることが報告されており、これは、がん細胞では「嫌気性解糖系」が亢進しているということを意味します。

それでは、なぜミトコンドリアを使ってエネルギーを産み出さず、常時、嫌気的解糖を用いてエネルギーを産み出すようになるのでしょうか?

それは何らかの理由でミトコンドリアが機能不全に陥っていることが原因なのです。

当然、ミトコンドリアが機能不全に陥ってしまうと、ミトコンドリアを利用したエネルギー産出ができなくなってしまいます。この非常事態に対応するために仕方なしに、「嫌気性解糖」でエネルギーを産出しているだけなのです。

要するに、ミトコンドリアの代わりに、糖を使ってエネルギーを産出してくれているもの。それが、ガンだと言えます。

次回は、「なぜミトコンドリアがこのような機能不全に陥ってしまうのか?」に焦点を当てて追求していきたいと思います。

参照・引用:http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/544.html

List    投稿者 seibutusi | 2014-12-07 | Posted in ⑤免疫機能の不思議No Comments » 

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