生き物ってすごい!2~あわびの貝殻に学ぶ「割れないセラミックス」
「生き物ってすごい!」シリーズ、第2回は、「あわびの貝殻」です。
写真はこちらよりお借りしました。
(以下、「すごい自然データベース」より引用)
あわびの何がすごいの?
陶器やレンガなど、土を焼き固めて作った材料を「セラミックス」といいます。身の周りでも食器やタイルやヒーターの発熱体など広く使われていますが、宇宙開発やコンピュータなどの先端技術でも欠かせない材料です。軽くて、硬くて、熱にも強いセラミックスですが、割れやすいのが最大の弱点です。みなさんも花びんやお茶わんを落として割ってしまったこと、ありませんか?
アワビの貝殻もセラミックスでできていますが、落としたくらいでは絶対に割れません。ハンマーでたたいてもなかなか壊れないほどです。 アワビの貝殻は、厚さ1ミクロン*以下の薄いセラミックスの板を軟らかい接着剤で貼り合わせた「積層構造」になっていて、厚さ1mmの中に薄い板が1000枚以上重ねられています。貝殻にヒビが入っても軟らかい接着層でヒビが止まり、薄板が1枚1枚少しずつ壊れるのでなかなか割れないのです。
(引用おわり)
写真は、あわびの貝殻の断面です。
薄い炭酸カルシウムの膜が、接着剤を挟みながら何層にもきれいに積層しています。
どうやって役立てるの?
貝殻の割れにくさの秘密をいろいろなセラミックス材料に取り入れれば、それらをより安心して、壊れる心配なく使えるようになります。また、自動車やロケットに使われている金属材料に取って代わることができれば、機械をより軽くすることもできるようになります。
どんな研究をしているの?
アワビの貝殻真珠層が割れにくい仕組みの解明が進められています。積層の板を1ミクロン以下まで薄くすると特性が急激に向上することや、積層構造界面の有機層が重要な役割を果たしていることがわかってきています。
画像は論文B.L. Smith, et al. Nature 399, 761-763 (1999). よりお借りしました。
上の写真は2枚とも、貝殻を構成する板状の要素を裂いて、電子顕微鏡で見た様子です。
どちらも、裂いたところに接着剤のようなものが糸をひいているのが観察出来ます。
写真aの板状要素の厚さは、1枚が最大400ナノメートル程度、写真bの接着剤が伸びているスキマは、600ナノメートル程度です。
どんな技術開発ができる?
通常、人間が作る積層材料の中の板は薄くても数十ミクロン程度ですが、最近はアワビと同程度の厚さの板を積み重ねた「ナノ積層材料」を作る方法が様々な技術を応用して試みられています。
また、薄いセラミックスの板を貝と同じようなやり方で作る研究が行われています。従来のように高温で圧力をかけて焼き固めるのではなく、室温、常圧でセラミックスを作る方法として注目されています。
(引用おわり)
いかがでしたか
あわびの貝殻ってすごいですね!
このすごい構造をぜひ何かに応用したいものですが、これを現状の技術で人間が作ろうとすると、莫大なエネルギー が必要になるそうです。
そんな高度な技術を、自然界では非常に少ないエネルギーで実現しているのですね。
私たち人間は、まだまだ自然に学ぶことがたくさんあると気付かされます。
それでは、次回もおたのしみに
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