2012-08-31

シリーズ 超極小『素粒子』の世界23 ~物質の反応も、静電気も、電流も、その源は【電子の移動】

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(画像はこちらからお借りしました。)
皆さんこんにちわ   素粒子シリーズも23回目に突入しました。
今回からは【電子】に焦点を当てて行きます。
電子というとあまりに一般的過ぎて、【素粒子(物質を構成する最小単位)】という印象を持っていないかも知れませんが、電子は立派な素粒子なのです。
電子は、化学、生物、物理問わず理科を勉強していれば必ずと言って良い程登場します。
例えば酸化還元反応という一般的な化学反応では、その反応過程で電子の吸収や放出を行っています。また電流は電子が移動する現象です。
これらの事象から電子の移動は様々な現象を引き起こす事が予測出来ます。
そこで、今回は電子の【移動】に着目してその特徴を整理していきたいと思います
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それでは、順番に見ていきましょう
①酸化還元反応
酸化還元反応は化学反応の代表格で、様々な場面でこの反応が起こっています。
比較的身近な例で言うと、
 酸化:金属が錆びる現象
 還元:製鉄所で金属が精錬されていく現象
が挙げられます。
この酸化還元反応ですが、原理的には非常に単純で酸化も還元も電子のやり取りをしている現象に他なりません。具体的には、
 酸化(される):物質が電子を放りだす現象
 還元(される):物質が電子をもらう現象
となります。
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□酸化還元反応の仕組(画像はこちらからお借りしました。)
この様に自然界でごく一般的に起こっている化学反応では、電子の【吸収・放出】が反応の中心を担っています。
②静電気
静電気とは【物体に電気がたまる現象、もしくはその電気のこと】を指します。
電気が溜まるというのは、換言すると、+電荷と-電荷のバランスに偏りが生じる。という事です。
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□静電気の仕組(画像はこちらからお借りしました。)
皆さんも一度は試した事があると思いますが、下敷きを頭に擦りつけると逆立ちますよね。これは、下敷きを髪の毛に擦る事によって、摩擦エネルギーで髪の毛の電子が原子の束縛から離れ、プラスチックの下敷きに電子が移るからなのです。
電子の移動により髪の毛は+に、下敷きは-に偏り、その結果静電気が生じます。
この様に静電気は、【電子の移動】によって引き起こされているのです。
静電気は、髪の毛を逆立てるだけではなく、様々な現象を引き起こします。
□放電
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□放電の仕組(画像はこちらからお借りしました。)
静電気により引き起こされる代表的な例は雷等に見られる放電現象です。
放電現象は、物質間や空間中に+電荷と-電荷の偏りがある場合に-電荷側から電子が放出されて+電荷側に移動する現象です。 
この現象からは、空間内に+-の偏りがある際に、偏りを無くそうとして移動するのは+電荷では無く-電荷(=電子)であるという事が分かります。
放電はその発する光から聖なる光として考えられた時代もあった様です。その一つに、【セントエルモスファイア】と呼ばれる現象が有ります。
セントエルモスファイアは、悪天候時などに船のマストの先端が発光する現象です。船乗り達の間では、セントエルモの光が2つ現れると嵐がおさまる。と考えられていました。
現在では、セントエルモスファイアの正体は【コロナ放電】である事が分かっています。
コロナ放電とは尖った電極(針電極)の周りに+-の電荷の偏りが生じることにより起こる持続的な放電の事を言い、今でも雨天時に送電線等で見る事が出来ます。
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□コロナ放電による送電線の発光現象
(画像はこちらからお借りしました。)
③光電効果
アインシュタインがその構造を解明した事でも有名な光電効果。彼が着目したのは電子ではなく光の方ですが、今回は電子に着目します。
光電効果とは、金属等の物質に光を当てると電子が放出される現象の事を言います。但し、単純に金属に光を当てれば電子が放出されるのか。というと実は違います。
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□光電効果の実験(画像はこちらからお借りしました。)
上記は光電効果の実験方法ですが、光電効果の実験内容から分かる事は、電子が飛び出すのは
A:あらかじめ+-の偏りが生じている場合
B:電子の受け入れ先である陽極が存在している場合
に限られるという事です。どうやらエネルギーを与えるだけでは飛び出せない様ですね。
換言すると、①、②の条件が整い、エネルギーが与えられると電子は陽極に飛び出していく。という事になります。
④熱電子放出現象
物質に熱を加える事でも電子は放出されます。この現象は熱原子放出現象と呼ばれています。
トマス・エジソンが発見したエジソン効果と呼ばれる、フィラメントを熱すると電子が放出される現象が有名です。真空管はこの原理を使って作られました。
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□エジソン効果(画像はこちらからお借りしました。)
また、電子銃と呼ばれる実験機器もこの熱電子放出現象を利用しています。
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□電子銃の仕組(画像はこちらからお借りしました。)
但し、熱電子放出現象も光電効果と同様で、単純に金属を熱するだけでは電子は放出されません。電子の受け入れ先=陽極が必要になります。
⑤電流
電流は電子の動きによって生じる現象ですが、電子はなぜ動くのでしょうか。
これは、電池等で無理やり+と-の偏りを作り出すことで金属内の電子を+に偏っている方向に移動させているからなのです。
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□電池の仕組(画像はこちらからお借りしました。)
電流においても受け入れ先が作る事で初めて電子は移動する。という原則は変わりませんね。
以上、酸化還元反応、静電気(放電現象)、光電効果、熱電子放出現象、電流という現象を見てきましたが、これらの現象から読み取れるのは
電子という素粒子は、一定のエネルギーが加わり、受け手(+に偏りのある粒子や空間)が存在する場合容易に移動する
という事です。換言すると、
物質の反応も、静電気で私達がビリッとなるのも、電気が流れるのも全て電子の移動によって引き起こされているのです。
つまり、電子は、様々な反応の媒介物として活躍しているのです。
一つ一つの現象は今までも知っていましたが、この様に【電子の移動】という視点で捉え直す事でバラバラに認識していた現象が繋がってくる。というのは大きな気付きでした。
電子という素粒子はまだまだ追及する余地が有りそうです。次回も扱うので楽しみにして下さい

List    投稿者 arinco | 2012-08-31 | Posted in ⑬相対性理論・量子力学・素粒子No Comments » 

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