2012-08-16

フェロモンって何?:集団統合力の進化に大きく貢献!

残暑お見舞い申し上げます
暑い日が続きますが、皆さん如何お過ごしですか
今日は暑い季節にふさわしい(???)テーマとして『フェロモン』について書いてみようと思います 😀
          
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『フェロモン』と聞くと、異性を性的に興奮させる物質をイメージする人が大半だと思いますが、実は少し違います。
フェロモンの生物学的な定義は『動物または微生物が体内で生成して体外に分泌する分子群で、同種の他の個体に一定の行動や発育の変化を促す生理活性物質』です。語源的には、ギリシャ語の「pherein(運ぶ)」と「hormao(刺激する)」を合わせた「pheromone(刺激を運ぶもの)」として1959年に創案された造語です。
    

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フェロモンの組成は炭素・水素・酸素のものが大半です。ホルモンの代表格であるカテコールアミン(ドーパミンやノルアドレナリンなど)には窒素が含まれていますので、ホルモンとフェロモンの機能的な違いは、窒素の有無によって規定されている可能性もあります。
さて、それではフェロモンとはどんな性質を持っているのでしょうか?
それを理解するにはフェロモンの種類を知るのが近道です。現在、フェロモンは大きく『リリーサーフェロモン』と『プライマーフェロモン』の2種類に分類されています。
Ⅰ:リリーサーフェロモン
リリーサーフェロモンとは、受手の他個体に特異的な行動を触発させるフェロモンで、その中には以下のようなものがあります。
【1】性フェロモン
成熟して交尾が可能なことを他の個体に知らせます。また、それを追って異性を探し当てるのに使われるます。
【2】道標フェロモン
餌の在り処など、目的地から巣までの道のりにフェロモンを残し、その後を他の個体に辿らせるために分泌されるフェロモンです。
【3】集合フェロモン
交尾や越冬などのために仲間の集合を促します。
          
            
【4】警報フェロモン
外敵の存在を仲間の個体に知らせ、集団全体での攻撃、あるいは逃避のシグナルとして使われるフェロモンです。
Ⅱ:プライマーフェロモン
プライマーフェロモンとは、受容した個体の内分泌系に影響を与えて、個体の相互で生理的変化を引き起すものをこう呼んでいます。その代表的なものが以下の2つです。
【1】階級フェロモン(=女王物質 )
ハチやアリなど社会性昆虫は階級分化物質や女王物質と言われるものによって、階級社会の形成と維持をしています。女王バチが発する女王物質(queen substance)は、他の雌の卵巣の発育が抑えて、働きバチとしての行動を起こすように働きます。もし、女王が死んだ場合はこの物質の供給が途絶えるので、働き蜂や幼虫の中から生殖能力のあるものが現れ、新たな女王となって行くことができるのです。
【2】性周期同調フェロモン
ヒトで初めて発見されたフェロモンです。腋下部から分泌される無臭のフェロモンで、それを嗅ぐことにより月経の周期が変化すします。中世以来、修道院や女子寮のルームメイトなどの月経周期が次第に同調してくることが知られていましたが、その原因となるフェロモンであろうと考えられています。ちなみに、ヒトで発見されているフェロモンは「性周期同調フェロモン」だけです。いわゆる「性ホルモン」はまだヒトでは確認されていません。
                    
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個体や集団の行動、あるいはその組織の統制や体制にフェロモンが大きく関わっているという現象が顕著に観察されるのは昆虫類で、もともとフェロモンの研究も主に昆虫学者の間で進められてきたという歴史があります。
それでは昆虫の世界を少し垣間見てみましょう。
蜂を怒らせると、怒らせた蜂以外の蜂も一斉に攻撃してきますが、これは蜂の毒液のなかに警報フェロモンが含まれており、その匂いを嗅いだ他の蜂も一斉に攻撃的になるからです。ですから、蜂に気づいたらその1匹を怒らせないことが肝心です
また、カメムシは非常に強い異臭を発する昆虫ですが、この匂いは、低濃度だと雄も雌も幼虫を集めるのに、高濃度になると、反対に仲間をを遠ざけます。つまり、この物質は時と場合によって性フェロモンにも、警報フェロモンにも、集合フェロモンにもなることになります。このように、濃度による作用の違い、あるいは情報の発信者と受け手とで使われかたが異なる場合などもあり、特にリリーサーフェロモンではこのような物質が多いようです。
                    
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今日は『フェロモン』のマメ知識をお伝えしました。マスコミがつくり上げた幻想を剥がしてみると、役割分担や協調的行動、危機情報の共有など、さらに一段階上の集団体制に進化するために獲得したのが『フェロモン』であるということがわかってきました。性的な行動を誘発するという特性も、集団統合上の重要課題に『フェロモン』が大きく関与してきた証左とも言えます。
『フェロモン』への依存度が極めて高い昆虫は、節足動物系列の中では最も後発の種ですが、脊椎動物の最先端である哺乳類も集団本能を復活させています。やはり集団統合力の重要性は生物共通なんですね。

List    投稿者 staff | 2012-08-16 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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