2012-07-02

太陽系を探求しよう-14.実はまだはっきりしない海の起源

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地球に海(液体の水)があるのは奇跡的です。でも水(分子)自体は、宇宙のあちこちに見られます。水星・金星・火星にも確認されているし、彗星に至っては主成分となっています。遥か彼方の星雲にも存在が確認できます。実験レベルでは、宇宙空間の分子雲を想定した超真空・超低温の中で水素と酸素から水分子が形成されることも確かめられています。つまり、地球という特異な環境がなくても水分子は存在します。
(参照:「銀河系は水分子でいっぱい」、「分子雲で水の素となる物質「過酸化水素」を発見」)
 
では、水はどのように地球にやってきたのでしょうか。
知ってる、習った、という方は、恐らく①の説で、火山の噴火のイメージかもしれません。でも、定説といわれたその説も揺らいでいます。
 
現在のところ、大きく以下の①~③の説があります。
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それぞれどんな説で、どんな問題点があるのでしょうか。
  

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①地球の材料が凝集時に水蒸気が噴出【衝突脱ガス説】
【概要】地球軌道周辺の微惑星が衝突・凝集して地球を形成する。微惑星には元々原始ガスにあった1~2%の水を含んでいる。凝集時の衝突エネルギー(熱)により微惑星に含まれる水が噴出する。地球が月ほどの大きさに成長すると、噴出した水蒸気や二酸化炭素を捕獲できるようになり、大気を形成していく。後に凝集・衝突が収まり、冷えていくと水蒸気が雨となって地上に降り、海洋が形成される。
 
【問題点】理論上、水蒸気大気が成長するためには長い時間をかける必要がある。しかし、最近の研究結果として、惑星は一般に形成が短期間とされることや地球形成終末期のジャイアントインパクトという超短期的な地球形成末期の現象と整合しない。
 
 
②原始ガスの水素と地表の酸素が地球上で合成【原始太陽系円盤ガス説】
 
【概要】原始太陽系円盤ガスが地球の周りに残り続けていた場合の説。地球が小さい段階では、その重力よりもガスの活性(運動エネルギー)の方が大きく、地球はガスを捕獲できない。地球が月程度の大きさに成長すると、重力によりガスを捕獲しはじめる。ガスの主成分は水素で、これに地表面の酸化物から酸素が供給され、大気中で水分子(水蒸気)を形成する。地表面の酸化物(岩石・金属)から多くの酸素が供給されるためには、流動を引き起こす1500K以上のマグマオーシャン状態が必要となる。高温のエネルギー源は、微惑星衝突による熱とガスによる温室効果が考えられる。微惑星衝突が少なくなれば温度が下がるが、同時に起こるガスの収縮に伴って惑星近傍のガスが流入することで、温室効果は維持され、温度は一定に保たれる。
 
【問題点】地球と同様のしくみで形成されたと考えられる金星や火星は、海がないため、原始太陽系円盤ガスを温存しているはずだが、そうなっていないのはなぜか。
 
 
③水を含んだ外部天体の衝突と脱ガス【レイトベニア説】 
 
【概要】地球軌道付近では原始ガスがとどまれずに散逸してしまった場合の説。水を含む微惑星が地球軌道より遠いところで形成され、地球に多数飛来して衝突する(重爆撃期)。微惑星の飛来元は、太陽系外縁(カイパーベルト=彗星の巣)あるいは小惑星帯(メインベルト)が考えられる。その衝突エネルギー(熱)により微惑星に含まれる水が水蒸気として噴出し、大気を形成する。後に地球が冷えると水蒸気が雨となって地上に降り、海洋が形成される。
 
【問題点】微惑星が太陽系外縁(彗星の巣)から飛来したと考える場合、現在、地球に飛来する微惑星(隕石)のほとんどは小惑星帯からという事実と整合しない。微惑星が小惑星帯から飛来したと考える場合、地球や火星軌道で散逸してしまったガス(→水)が、なぜ小惑星帯の微惑星に残っていたのか。
 
***
 
以上、それぞれ可能性も問題点もあります。詳細は、以下の論文を参照してください。
地球の海水の起源
地球の海の起源
 
可能性が高いのは、海の重水素比率との整合を加味すると①が有力となりそうです。海水の量との整合に疑問が残りますが、それは条件設定の不正確さとも考えられます。
 
海の起源がはっきりしないのは、現在の太陽系形成理論に問題があるからでしょう。だから、金星や火星に(かつて海や多くの水があったのに)海が無い理由も解明されません。
参照:「火星に海があった有力な証拠」、「金星にかつて海は存在したか
 
太陽系の形成論は継続して追求していきます。
 

List    投稿者 staff | 2012-07-02 | Posted in ⑫宇宙を探求するNo Comments » 

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