2011-05-29

「放射性物質の内部被爆」シリーズ~体内に摂取する可能性のある放射線物質は?(呼吸・野菜編)~

前回は、私達の体内へ放射性物質が取り込まれていく過程の内、主に経口摂取(食物を介しての体内摂取)について、特に水産物に絞って追求・考察を重ねました
今回はその続きです

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(画像はコチラからお借りしました)
現在、よく報道等で取り沙汰されている放射性物質の放出は海洋だけではありません。
土壌の汚染も今後更に深刻な事態に突入することが予測されます そこで、今回は大気→土壌への汚染からどのようにして私達の体内に放射性物質が取り込まれていくのか?を追求していきます :roll:

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1.呼吸によって摂取されやすい放射性物質は?
空気中にはどのような放射性物質が飛散しているのか?
原子炉が爆発した3月と現在では飛散物質が異なるため、一概には言えませんが、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が公開しているデータ(リンク)によると以下の通りとなります。

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ファイルをダウンロード

当初は様々な物質が飛散していたが、数値的に変動幅が小さくなり安定期に入った4/1-4/21では、以下の物質が空気中の放射線物質の大半を占めており、呼吸によって体内に摂取されやすくなっています。

ヨウ素-131が53%
セシウム-134が約21%
セシウム-137が約19%
吸入摂取時の線量換算係数(μSv/Bq)は、ヨウ素-131が0.0074、セシウム-134が0.02、セシウム-137が0.039となっており、半減期の長いセシウムが体内に長く存在するため影響度が高くなっています。

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ファイルをダウンロード

しかし、福島の原発周辺は未だ数値的に高いところも多々ありますが、上記の数字を見てもわかるように、現在はあまり大騒ぎするほどの数値にはなっていません。
今後の原発の状況に大きく拠るところはありますが、現在は概ね大丈夫だと判断できます。

続いて、大気汚染から放射性物質が降下・沈着している土壌の汚染について整理していきます。

2.土壌から摂取されやすい放射性物質(植物への移行による経口摂取)

植物の移行(濃縮)経路について

植物の放射性物質の濃縮(移行)は
直接移行:大気中の放射性物質の付着
間接移行:土壌中の根からの吸収

の大きく2つの経路があります。

①で付着した物質が内部に取り込まれる割合は低い。
②で、土壌に沈着した放射性物質は水中や大気中と異なり移動しにくく滞留時間が長くなります。元素が移動する場合は主として水を媒体にしているため、水溶性の元素であるヨウ素やセシウムが生物濃縮・移行をし易いのです。

今後注意が必要となるのは②の移行です
ではその移行メカニズムを紐解いていきます

植物(野菜)が取り込みやすい元素・物質

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(画像はコチラからお借りしました)

野菜をはじめ我々生命がこれらの放射性物質を積極的に取り込んでしまうのは、セシウムもストロンチウムも生命に必要不可欠な炭素・窒素・リン・カリウム・カルシウムの5大栄養素の同属元素だからです。
また、これらの5大元素のうちリンやカリウム・カルシウムはほとんど我々生命が利用できる形で地球上には存在しておらず、多くの場合は岩石等に含まれており摂取することが困難な元素です。
したがって、我々生命は食物連鎖という閉鎖系の循環システムの中で、少ないながらも利用できる形になっている主要元素を互いにやりとりしながら共存しているのです。

中でも、カリウム・カルシウムはイオン化傾向が高く、水溶性であるため海洋には多く存在しますが、陸上生物にとっては貴重な栄養源です。この為、これらの元素が植物によって積極的に取り込まれ、またそれらの物質を体外へ排出すると水で流れてしまうので植物だけではなく動物含め体内に保持しておく機能を進化の歴史の中で獲得してきました。(カリウムは浸透圧調整や筋肉(電解質)として、カルシウムは骨として体内に保持しています)

よって特に、カリウム・カルシウムの同属元素であるセシウムやストロンチウムは植物や動物の体内へ取り込まれやすい物質と言えるのです。

では、次にこれら放射性物質がどのくらいの濃度で植物に濃縮(移行)していくのかを見ていきます。

植物の移行係数

先日、長期化する原発土壌汚染による食品への影響から、農水省より各食品への放射性セシウムの移行係数が発表されました。

以下のサイトに、移行係数が比較された一覧表があります。
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リンク

「移行係数=植物の地上全体部分の元素濃度/土壌中の元素濃度」で求められます。

上記のサイトの情報から見ると、移行係数が高いのはサツマイモやジャガイモなどの芋類ソラマメなどのマメ類(種子類)であることがわかります。

またここでは、載ってはいませんがイネは先日の発表では0.1という高い数値を公表しています。(これは、日本人の主食ということもあり、安全側に設定したと考えられます)

ほうれん草はこの表では0.00054と比較的低い数値を示していますが、参考にしている論文が1論文であり、栽培された時の土壌や気候(日照時間)にもよるのであまり参考になりません。
ほうれん草をはじめとした緑黄色野菜はカリウムを多く含むことでも知られており、実際今回の汚染事故後、暫定基準値の500ベクレル/kgを超える放射性セシウムを検出しています。

上記のサイト等の移行係数はあくまで目安です。なにより参考にしている論文が少ない。

そこで、次は生命、とりわけ植物とカリウムの関係に着目し、同属である放射性セシウムがどのように植物に取り込まれ、またそれらがどこに蓄積されていくのか?その構造を追っていきます。

植物内のカリウムの働き:炭酸同化作用(≒光合成)

上記の表から見ても、セシウムの移行係数が高い数値を示しているのは栄養素(でんぷん質・糖など)を蓄える種子や球根などの部位や食品に多く濃縮されることが分かります。
これも、植物の中でのカリウムの働きに大きく因っていると考えられます。
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画像はそれぞれコチラコチラからお借りしました)

植物は光合成(≒炭酸同化作用)によって水と炭酸ガス(CO2)からデンプンを作りますが、この炭酸同化作用はカリウムがないと進みません。植物が窒素から蛋白質を作る時にも、カリウムがないと反応が滞ります。また、植物はデンプンを分解し糖にして植物内を移動させますが、この変換反応もカリウムなしにはうまくいきません。この他、植物は糖から様々な生理活性物質(ビタミン類、抗酸化物質類)を作りますが、この合成もカリウムなしには成り立たないのです。つまり、植物の重要な化学反応は、すべてカリウムの助けなしにはできないのです。

炭酸同化作用(参考)
植物がその体内で、無機化合物または簡単な有機化合物から体を構成する有機化合物を合成する働きをいう。光を吸収する明反応と炭水化物をつくる暗反応からなる。

これらの同化作用(≒光合成)は、いずれも、葉の体積(大きさより厚みが大切)と密接な関係があります。
葉の大きさより厚みが大切とは
例えば:A3サイズとA4サイズ2枚重ねと体積は同じでも、炭酸同化作用(光合成)はA4サイズ2枚重ねのほうが大きくなります。

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(画像はコチラからお借りしました) 

これは、日の光が強い環境下(強光下)の植物程、葉の柵状組織が発達し、葉緑素を持つ細胞が密になる=炭酸同化作用の割合が大きくなる為です。(上記図を参照)
これは生命細胞にとって有害な紫外線が強くあたる強光下に生息域を求めたため、紫外線からの細胞破壊から組織を守るために葉を厚くしてきたと考えられます。結果、光合成を行う葉緑素を含む細胞を大量に敷き詰めたことで炭酸同化作用を大量に行うことになり、成長に必要ない余った養分はその他の部位(実・種子・茎・根)に蓄積し、次世代への養分としているのです。

また単子葉植物では、細長い葉の形のものが多い。特にイネ科の植物は、やや硬く、立ち上がった細長い葉をもつものが多く、草原での生活に適応しているといわれる。光が根本まで入りやすく、植物体全体で光合成ができる形である。これも、湿原地という限られた範囲で種として生き残るために、他の株との共存を図るための外圧に適応してきた一つの進化形態であると言えます。

植物が育たないカリウム不足

カリウムは植物内で窒素と同程度の重量が必要な多量必要元素です。植物は炭酸同化作用でデンプンを作り養分を貯蔵しますが、カリウム不足ではこれができなくなり、芋(根や茎)や種(豆や穀類)が太らなくなります。植物は糖から細胞壁を作ります。この壁の材料がセルロースやヘミセルロースで、壁と壁を接着するノリがペクチンです。カリウムが不足するとこれらが作られなくなるので、植物が軟弱になります。植物は浸透圧を高めたり、寒さから身を守るために糖の濃度を高めます。カリウムが足りないとこれができなくなるため、乾燥や寒さなどのストレスに弱くなります。

以上より、植物はカリウムを積極的に体内へ取り入れようとするのです。それが、今回の原発事故による放射性物質の土壌汚染によって、同属であるセシウムも誤って吸収してしまい、根菜や種子類(デンプン質やたんぱく質・糖類の豊富なもの)、緑黄色野菜(特に葉の厚いもの)等の栄養価の高い食物程汚染されていくという事態になっているのです。
3.まとめ

以上の追求・考察より

葉緑素の多い葉物野菜(特に葉が厚い植物)は光合成による生成物が多くなる為、その養分を運搬・調整するためのカリウムを多く摂取する傾向が高い同属性の放射性セシウムを吸収しやすい
根菜(サツマイモ・じゃがいも・サトイモ)や豆類(大豆やソラマメ等)、米などの穀物は葉で炭酸同化した養分を蓄積したものであり、その分カリウムをはじめとした栄養素が多く含まれる=今後他の部位に比べ濃縮率が高くなる傾向にある
放射性セシウムは根から吸収される為、土中の根の張り方によって吸収率が変わる。(りんごなどの比較的土中深く根を張る植物は土中深くまでセシウムが沈着するまでは、移行係数が低いと考えられる)
イネ等の種子類・穀物類は栄養価の高い胚芽等を除いた精米であれば大方の放射性物質は除去できる
栄養素の取り込み方、蓄積の形はその生命の進化の歴史に依拠している。その植物の成り立ちさえわかれば、有る程度どこにどの程度蓄積されるか漠とではあるが相対的に判断できる。

ということが構造的にわかってきました。

現実問題として、野菜に関しては原産地を確認しながら摂取していけば現在出荷されているものに対してそれほど過敏にならなくてもよいと考えられます。
またどうしても気になる場合は食べる部位(葉部や胚芽部を避ける)や量を考えて摂取することを薦めます。

4.今後

重要なのは現在も原発事故は収束しておらず、今尚収束の兆しさえ見えていない。更に言えば、今後もっと深刻な事態になることも可能性として考えられるということです

政府や、東電等の当事者達からは二転三転した不確定的な情報しか手に入りません。
そのような情報を鵜呑みにするのではなく、こうした事実構造を押さえていくことで少ない情報であっても素人でも自らで判断していくことができます。

今回までは、体内に入ってくる放射性物質について経路とそのメカニズムを素人なりに追求してきましたが、次回は放射性核種を取り込んだ場合。すなわち、内部被曝⇒発ガンのメカニズムに迫っていきます :D

これからも引き続き応援お願いします

参考文献・サイト
「地球生態学」で暮らそう  槌田 敦 著
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%89)
(http://www.kagakunavi.jp/keyword/%E7%B5%84%E7%B9%94)
(http://blog.goo.ne.jp/organic-life-circle/e/ca3583c58a5d10bc1345449a768f1273)
(http://mogu.pupu.jp/calium.htm)
(http://natural-history.main.jp/Education/Photosynthesis/Photosynthesis_series.html)
(http://www.rwmc.or.jp/library/other/file/kankyo1.pdf)
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%A5%E6%96%99)
(http://www.iaea.org/inis/collection/NCLCollectionStore/_Public/30/031/30031654.pdf)
(http://www.machida2.co.jp/genpatsu/nousuigyo.pdf)
(http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-999.html)

List    投稿者 tyani | 2011-05-29 | Posted in ⑪福島原発問題2 Comments » 

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コメント2件

 takashi | 2012.09.23 22:33

>戦争圧力の中では、相手と自分を重ね合わせ、一体化する同化回路は邪魔となります。
とありますが、戦争の中でも、相手と自分を重ね合わせることは、むしろ重要だと思います。
なぜなら、戦争に勝つには、敵の戦術を知る必要があり、そのためには、徹底して敵に同化する必要があるからです。
その能力に特化した人が、軍師に登用されたのだと思います。
まぁ、それ以外の人々は低下して行ったのだとは思いますが・・・。
したがって、私権時代であろうと、必要な能力であったのではないでしょうか。

 andy | 2012.09.24 23:03

>なぜなら、戦争に勝つには、敵の戦術を知る必要があり、そのためには、徹底して敵に同化する必要があるからです。
軍師たるもの敵の戦術に同化するというのはその通りだと思います。ただし、同化し、相手のことを知り尽くしたら、逆に相手を欺くのが優れた戦略家でしょう。そこには、原始人の対象への究極の同化(=人、自然、宇宙との一体化)とは異なる自我意識が存在していると思います。近代科学者の思考も同様かもしれません。

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