2011-04-22

雌雄の役割分化20~雌雄分化の塗り重ね構造 総まとめ

約5ヶ月間追求してきた「雌雄の役割分化」シリーズもいよいよ総まとめに入ります
男女の中性化、少子化、草食化etc.現代は男女の引力の低下が深刻下している時代といえます。性の再生を考える上で手がかりとなるのが、40億年にも渡り塗り重ねてきた生物進化の歴史です。

これまでの生物進化の歴史を振り返ると、生物がオスとメスに分かれたのは、外圧に適応し、進化を促進するためだったことがわかります。生物は変化する外部環境に適応するために、「安定性を保持しながら他方で変異する」という根源的な課題を解決することが必要でした。
この難題を解決するために、オスとメスが誕生したのです。
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□雌雄の役割分化 1 ~雌雄分化って何?~プロローグ
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では、直面した安定と変異の両立という課題に対して、生物がどのように挑んできたのか、大きく振り返ります
1.性の起源:単細胞生物の接合
生物における「性」(雌雄分化)の原初的現象は、単細胞生物の「接合」に見られます。
単細胞生物は通常単純分裂で増殖しますが、原核生物でも「細胞同士の部分的な融合→遺伝子の受け渡し」、真核生物では「細胞同士の合体→遺伝子の組み換え」を行うことがあります。
多くの場合、外部環境の変化=逆境を契機として接合が行われます。つまり、外圧変化に適応するために、細胞同士で遺伝子を組み替えて「変異」を生み出すメカニズムです。同一の自己を複製するのではなく多様な同類他者を生み出すことによって環境への適応可能性を高める戦略が雌雄分化の起点にあります。
(真核生物のクラミドモナスでは類型の異なる「型」がはっきり存在し、それを互いに認識しながら接合が行われています。この「接合型」が精子と卵子の分化へとつながった可能性が高い。)

□雌雄の役割分化 2 ~単細胞生物の「接合」~

2.有性生殖の登場:真核生物の有糸分裂と減数分裂
複雑な構造を獲得した真核生物は、正確に遺伝子を複製する「有糸分裂」機構を獲得。また細胞同士が合体(接合)して遺伝子を交換する「減数分裂」の仕組みを獲得します。
重要なことは、遺伝子の組み換えによる「変異」だけでなく、安定的な細胞分裂システム(有糸分裂)、一つの細胞が染色体を2対持つ2n体などの「安定機構」を備えていったことです。
安定的に変異を組み込むこと、すなわち安定と変異の両立が生物にとって大きな課題であったと推察されます。

3.殖産分化(生殖細胞と体細胞の分化):多細胞生物の登場
約10億年前、生物は単細胞生物から多細胞生物へ進化します。
単細胞生物は細胞一つで生殖も生産も全て担っており(万能細胞)、それゆえ細胞の負担が大きく高度な機能進化は困難です。
多細胞生物ではまず最初に、生殖を担い安定性が求められる生殖細胞と、変異に対応し生産を担う体細胞が分化します。
体細胞は生殖負担を無くすことで外圧変化に対応した変異=進化を生み出し、生殖細胞を生産=闘争過程にさらす必要がなくなり、安定的に守ることも可能になりました
更に、殖産分化過程で、体細胞は不死性(テロメラーゼ)を捨てます。体細胞は不死性を捨てることで仕事機能を高め、一方で有性生殖による変異を次世代に組み込み進化を促進しました。殖産分化が生き物の寿命=個体の死を生み出したわけですが、個体の死を許容した種の方がより適応的で進化してきたのが生物史の事実なのです。

□雌雄の役割分化3 ~雌雄分化の第一段階=殖産分化~

4.精子と卵子の分化:変異配偶子と安定配偶子
多細胞化=殖産分化とほぼ同時に、生殖細胞=配偶子は精子と卵子に分化します。
もともと有性生殖の誕生当初は、雌と雄の配偶子は同型同大で、同型配偶子接合を行っていましたが、一方が運動に特化し、もう一方が栄養保持に特化した方が、受精においても、発生においても優れることから、運動役割を担う精子と栄養役割を担う卵子に進化したと考えられます。
また精子は卵子を目指す過程で数多く淘汰され、より強い精子の遺伝子を伝える形で、変異に対応する役割も担っています。さらに、哺乳類のオスの体細胞には抗原タンパク質があり、精嚢と精巣を結ぶ輸精管の途中には、抗原物質を精子に浴びせるシャワー機能があります。これは、体細胞で外圧変化をキャッチして、精子に伝達するシステムが存在している可能性を示唆しています。
つまり精子と卵子の分化の本質は、精子=「変異配偶子」、卵子=「安定配偶子」ではないかと考えられます。

□雌雄の役割分化4 ~雌雄分化の第二段階=精卵分化~ 

5.体細胞系列の高度化:脊椎動物の登場と進化
殖産分化(保存と仕事の分化)を起点として多細胞生物の進化が始まります。
種の保存上負担の大きい生殖を専門に分離し、体細胞系列の高度な機能分化が可能となったことによって、一気に多様な生物群が登場します。
特に動物群は動いて栄養を摂るしかない⇒摂取機能の高度化⇒種間圧力上昇⇒摂取機能の高度化⇒種間圧力上昇・・・という循環的な外圧上昇構造が進化を促進、さらに統合機能としての脳神経系を発達させた脊椎動物が登場します。

6.雌雄躯体分化:オスとメスはどのように決まるのか?
精子と卵子が分化した当初は一つの個体の中に精子と卵子を作る生殖器官が共存していました。
生物史において雌雄の躯体が固定的に分かれるようになるまで、幾つかの段階を踏んでいます。
・生物の生殖様式は、無性生殖から有性生殖へと進化
・オスメスを決定する仕組みは、雌雄同体型→性転換型→孵化時環境依存型→遺伝子決定型へと進化
・進化すればするほど、雌雄の差異を促進、固定化していく方向に進化
種の保存に係る生殖過程を有性生殖に限定させることで体細胞系列を高度に機能分化させていくことが可能になったとも言えます。
また進化がもたらす種間圧力の上昇は、更なる運動能力・防衛能力(体細胞系統)の高度化、同時に生殖器官の緻密さが求められます。このような外圧に適応するためには、雌雄に躯体を分化していくことが適応的だったと考えられます。同時にメスの生殖負担は増大し、オスの闘争負担は増大する方向に進化します。
改めて、雌雄分化史(殖産分化⇒精卵分化⇒雌雄躯体分化)におけるオス、メスの本質を整理してみると、
オスとは、変異性の上に闘争能力(役割)が塗り重ねられた存在
メスとは、安定性の上に生殖能力(役割)が塗り重ねられた存在 といえます。

□雌雄の役割分化5 ~雌雄分化の第三段階=雌雄躯体分化~
□雌雄の役割分化6 ~雌雄分化の第三段階=躯体分化(特殊編)~ 
□雌雄の役割分化7~オスとメスが決まる仕組みとその進化
 

7.哺乳類の本能と雌雄分化
弱者であった原哺乳類は、寒冷化と低酸素という外圧を受けて、胎内保育機能を獲得しました。
しかし、卵産動物が一般に大量の卵を産み、その大部分が成体になるまでに外敵に喰われることによって淘汰適応を実現しているのに対して、胎内保育と産後保育の哺乳類には、適者だけ生き残ることによって種としてより秀れた適応を実現してゆく淘汰適応の原理が働き難くなります。そこで、淘汰適応が成体後に引き延ばされ、成体の淘汰を激化する必要から、哺乳類は性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化していきました。
その場合、種を存続させる為には、闘争存在たるオスがより闘争性を強めると共に、メスたちの外側で外敵に対応した方が有利です。従って、とりわけオスの性闘争(=縄張り闘争)本能が著しく強化されることになります。
こうして、哺乳類のオス・メス関係を特徴づけるオスの性闘争の激しさと内雌外雄の摂理(本能)、および群れの全ての雌が首雄(勝者)に集中する首雄集中婚の婚姻様式(本能)が形成されました。
集団形態は外圧の違いにより多少異なり、外敵闘争(や自然環境)が厳しいと雌雄で集団を形成し、外敵闘争に対して優位にあれば、単独生活を営む傾向にあります。

□雌雄の役割分化9 哺乳類の集団形態(事例紹介)
□雌雄の役割分化10~哺乳類の集団構造と外圧の違いによる特殊性
□哺乳類の性闘争本能

8.雌雄の役割分化と集団編成(原猿・真猿・類人猿)
サルも哺乳類時代の集団形態、役割分化を踏襲して進化しています。
サルと哺乳類の違いで特徴的なのは、一般哺乳類は外敵から身を守るという本能上の要因で集団化しましたが、原猿になると本能を超えた不全を解消するために同棲するようになったということです。
一般哺乳類はオス(首雄)がメスと子どもたちからなる集団と恒常的に同棲しているケースは少なく、交尾期のみ同棲するケースが多いです。しかし、原猿になるとオスが複数のメスの縄張りを包摂しながらの単独生活を基本としていますが、メス同士の親和関係、さらにオスメスの親和解脱行動が見られます。おそらく原猿後期あたりで、オスメス同棲する種が登場したのだろうと推察されます。
この「雌雄解脱共認」が紐帯となってオスメスの集団が形成されていったと考えられます。
雌雄解脱共認と同類闘争圧力の上昇から真猿段階では雌の性収束(挑発機能)や闘争集団の形成といった変化が見られるようになります。
まず、雌の性収束についてですが、真猿以降のメスは、発情期間が長くなるor頻繁になる傾向があり、また挑発機能(性のアピール機能)も強化されていきます。
また、挑発機能という点でも、一般哺乳類や原猿段階では、主にフェロモンの匂いや鳴き声でアピールしますが、真猿段階ではメスの生殖器官周辺が膨脹することもあり、明らかに進化していることが見てとれます。
次に、闘争集団の形成についてです。
真猿集団の内部に発生するオス間の性闘争(更にはエサの取り合いetc.の私権闘争)は、集団を破壊する危険性を孕んでおり、何としても止揚されなければならなりません。しかし、「自分以外は全て敵」とする性闘争(+自我回路)では、共認は成立しません。この様な欲と欲がせめぎ合い、自我と自我がぶつかり合う性闘争・私権闘争は、力によってしか制圧されません。そこで真猿は、性闘争を制圧した力の序列を共認することによって(力の序列を秩序原理とすることによって)、性闘争を止揚し、共認の破壊=集団の崩壊を喰い止めています。
このように、一般的な真猿のオスは、性闘争を序列規範により抑制しながら、一方で序列闘争を行い、全体として同類闘争に向う集団を形成しています。

□雌雄の役割分化12~サルの性収束と雌雄解脱共認
□雌雄の役割分化13~オス猿の序列統合
□実現論『ホ.サル時代の雌雄分化』

9.人類の脳進化
最後に人類です。
人類は、サル時代に獲得した共認機能を基盤にしながら、観念収束(脳進化)することで進化してきました つまり脳進化の中に、男女の役割分化を見出すことができます。

まず、性収束について考えてみましょう。性行為の際に快感(オーガズム)を体感できるのはサル(チンパンジー)と人類だけと言われています。
多くの動物が大脳辺縁系でA10神経が止まっているのに対し、人類のA10神経は大脳新皮質まで伸びています。これに加えて、他の動物はギャバ神経により伝達物質の抑制が行なわれますが、人類の場合はギャバ神経先端(前頭葉)で抑制機構が働かず「ドーパミンが垂れ流し」状態になることがあります。
つまり、脳内の快感回路の発達過程より、人類は充足・快感回路を発達させていく方向に進化したといえます。
また、脳も男女で差があります。
もともと、ほ乳類の脳にも性差があり、雌雄役割分化が出来ていますが、人類の段階では、本能+(共認)+観念が塗り重ねられており、さらに進んでいると言えます。
初期人類は、共同体の中で生活してきました。そこで女は安定した縄張りの中でおしゃべりをして共感充足し、子育てをして応望充足をする「充足存在」であったと推察され、共感、共認を軸に脳を発達させたと考えられます。
また、男は狩猟生活と自然という圧倒的な外圧に対して精霊を見て言霊化(言語)適応し、観念(言葉化)により集団を組織化(システム化)していきました。そこでは感情論に流されると論理的思考(組織を導く思考)の妨げになるので、あえて反応を若干封印する傾向に進化したのかもしれません。そして常に外圧闘争から変異適応し続ける「変異闘争存在」であったと推察され、システム脳として発達したと考えられます。
このように、人類は性の差別化をより推進していく方向で進化してきました。

□雌雄の役割分化15~人類の快感回路の発達について
□雌雄の役割分化16~脳の雌雄分化

10.まとめ
雄雌分化の歴史は、同類他者を生み出すために、安定と変異という軸上で、性の差別化を広げてきた歴史でした。雌雄分化の歴史を大きく分けると、以下の6段階に分かれます。

1.単細胞の接合:
真核生物の段階で安定と変異を両立しながら遺伝子を組み替える減数分裂のシステムを獲得。接合できる型が分かれ雌雄分化への歩みが始まる。この段階では単純分裂が中心で、遺伝子組み換えは環境が悪化した非常事態に限定されている。
2.殖産分化:
単細胞から多細胞に進化する段階で、細胞が生殖を担い安定性が求められる生殖細胞と、変異に対応し生産を担う体細胞に分化。体細胞は死ぬ事で、必ず変異した子孫を残すようになる。
3.精卵分化:
生殖に特化した生殖細胞は、安定が求められ栄養を蓄える卵子「安定配偶子」と、淘汰される事で変異をにない運動する精子「変異配偶子」に分化する。
4.躯体分化:
原始的な生物は雌雄同体が主流だが、安定が求められる卵子を生み出す体=メスと変異に対応する精子を作り出す体=雄に分化し、進化が進むほど雌雄の分化は固定化する。更にメスは安定性の上に生殖能力(役割)が塗り重ねられ生殖負担が大きくなるように、オスは変異性の上に闘争能力(役割)が塗り重ねられ闘争負担が大きくなるように、差別化を広げながら進化していく。
5.役割分化と集団編成:
哺乳類の段階になると、雌の胎内保育機能の獲得と雄の性闘争本能の強化により、内雌外雄の集団編成、および群れの全てのメスが首雄に集中する首雄集中婚の婚姻様式が形成。雌雄の引力が集団の最大の引力(活力)となる。
猿段階になると、原猿段階は単独生活を営んでいたが、猿間の同類闘争に対応するために、真猿段階ではボス以外の雄も集団に残り闘争集団を形成していく(単独生活→単雄複雌型→複雄複雌型)。
6.雌の性収束と雌雄解脱共認:
真猿段階では、同類闘争上戦力外となった雌が肉体改造→性収束していく。ボスとの雌雄解脱共認を核として、生殖集団(母系集団)を形成する。極限時代の人類においても同様で、女たちは首雄の期待に応望することで、充足回路を発達させ、雌雄解脱共認を生み出す。これを基盤としながら本源集団(共同体)を形成した。

***
改めて生物史を振り返ると、雄(男)と雌(女)という存在は、生物進化の初期段階から外圧に適応する上で、不可欠な存在として運命づけられていたことがわかります。
現代では、生命原理に根ざした男女の役割が、男女同権論や個人主義によって否定され、役割規範の解体・集団の解体が進行してしまっています。しかし、生命40億年の歴史を冒涜することなどできるはずがありません。
集団を再生し、活力のある社会を作り出していくための土台は、この間追求してきたように男女共認です。そして、男女共認の核となるのは、進化の課程で獲得してきた男女の役割規範である、充足存在という女規範、闘争存在という男規範です。
閉塞した現代社会を突破するためには、生物の摂理を道しるべに、新たな男女関係・新たな集団を作り出していくことが求められているのです。

最後に雌雄の役割分化シリーズの総図解を作りましたので参照して下さい。
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List    投稿者 andy | 2011-04-22 | Posted in ③雌雄の役割分化No Comments » 

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