2011-03-31

生物と放射線

福島の原発事故以降、放射線に関するニュースが毎日のように流れています
確かに放射線は危険なのですが、放射線がなぜ危険なのか?そもそも放射能は生物にとってどんな存在なのか?ということが報道されることはありません 🙁 。
今回は生物と放射能という切り口で記事を書いていこうと思います。

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1.生命の誕生と放射線
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 地球が生まれたのはいまから46億年前、そして生命の誕生は40億年前と考えられています。そして最初に生命が誕生したのは深い海の底だったと考えられています。生命が誕生した当時は、生命に有害な放射線の一種である宇宙線が地球に降り注いでおり浅い海では生きられなかったからです。
 生命が浅い海で暮らせるようになったのは、地球に磁場が形成され、有害な宇宙線の進入を防ぐことが出来るようになった27億年前頃です。
 そして、生物が陸上に進出してきたのは紫外線を防ぐオゾン層が形成された5億年前のことです。このように生命の誕生、進化の歴史と放射線の関係を振り返ってみると、生命は宇宙線や紫外線などの有害な放射線の届かないところで生まれ、そして危険がなくなったところに進出していったのだ、といえるでしょう。放射線は生命の秩序とは相容れないのです。

2.放射線は生物にとってなぜ危険か
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 放射線は単純なエネルギー量はそれほど大きくありません。成人に取って致死量の放射線も熱エネルギーに換算すると、体温を0.0017度上げる程度のエネルギーしか持っていません。生物にとって危険なのは、放射線はエネルギーの総量は小さくても、それが極端に集中しているため、生物の体を作っている分子、その中でも生命の設計図である遺伝子を破壊してしまうからです。
 生命の細胞を構成している分子が破壊されても、遺伝子が無傷であれば壊された分子を修復、再生産することができます。しかし、遺伝子が破壊されてしまうと修復することは非常に困難です。通常状態の遺伝子は2本鎖の構造になっており、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類が、AはGと、CはTと結合しており、たとえばAが破壊されてもペアのGが残っていれば破壊されたのがAであることが分かり、修復することが可能です。
 しかし、細胞分裂中の、ペアが離れた状態で破壊されてしまうと、元々の遺伝情報がなんだったのか分からず修復することはできないのです。放射線の影響は細胞分裂が盛んな細胞ほど大きく現れ、乳幼児ほど被害が大きく、造血細胞の異常である白血病が起こりやすいのは、細胞分裂が盛んなためです。

3.放射線の種類と生物への影響
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 放射線には、いくつかの種類があります。ヘリウム原子核が飛び出すα線、電子が飛び出すβ線、高エネルギーの電磁波が飛び出すγ線、中性子が飛び出す中性子線が主要な放射線です。
 α線とβ線は物質を透過する能力が低く、あまり遠くにまで伝わりません。γ線と中性子線は物質の透過能力が高く、かなり遠くまで届きます。従って、一般的にはγ線と中性子線が危険な放射線と考えられています。
 しかし、実際は逆になります。透過能力が高いということは、透過後もエネルギーを失ってないため、生物へ与える影響は小さくなります。そして、透過能力が低いということは、生物内に留まり大きな影響を与えます。従って、α線とβ線を発する放射性物質は外にある場合はあまり被害は出ませんが、一度、生命体内に吸収されてしまうと大きな被害を与えることになります。この代表がプルトニウムです。
 このように、放射線はその種類や、放射線の影響を受ける細胞の種類によって、生命に与える影響が違うため、その影響を加味して作られた単位がシーベルトです。同じ放射線量でも、その影響値であるシーベルトは小さくなったり、大きくなったりします。

<参考>
よくわかる原子力 
原発をどうするか。【吉岡英介氏のHPより③】
東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か
放射線の基礎知識
何故放射能で遺伝子が傷つくんですか?回答No.3

4.放射線で成長する生物がいる!?
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 生物にとって、放射線がいかに有害であるかを知っていただきましたが、生物の中には、放射線を成長の糧する進化を遂げたものもいるようです。例えば、チェルノブイリ原発周辺では放射線を吸収する菌類が発見されています。
 この菌は、植物が「可視光線」をエネルギー源にしているのと同様に、「放射線」をエネルギー源として使っています。この菌類が放射線を捉える為に使っている(植物でいう葉緑素の役割)のが、メラニン色素です。人間の皮膚にもメラニン色素は存在してはいますが、この菌類は放射線を吸収できるように進化しているので違うものになっています。
 ちなみに、この菌はCryptococcus Neoformansといい、髄膜炎や脳炎を引き起こす病原菌です。しかし、AIDSなど免疫異常を起こさないかぎり何の症状も起こさないので安心してください。
 今回発見されたものは変異種ではないようなので、もともと進化の過程で放射線をエネルギーにする機能を獲得していたと考えられます。
 この生物は放射線をエネルギー源にするからといって、放射性物質を無くすわけではありません。つまり、生物は放射性物質を無くすことはできないのです。
<参考>
チェルノブイリで放射線を食べる菌が見つかる
ダイミテイ『上の人などいない!』
生態学と進化『空腹なキノコは放射線をむさぼる』
横浜市ホームページ『クリプトコッカス症について』

まとめ

 地球は約20億年をかけて水や磁気を形成し、有害な宇宙線の進入を防ぐ環境をつくってくれました。そのおかげで生物は生存域を広げ、多様に進化し、人類も誕生することができました。
何度も繰り返しますが、放射線は生命の秩序とは相容れないものなのです。
そのような放射線を出す、核のエネルギーを使い大規模な発電をすることは、生命の秩序に反するものであり、そもそも間違っていると言えます。
これを機に、自然の摂理に立ち返ったエネルギーを考えていくべきだと思います。
(masamune)

List    投稿者 MASAMUNE | 2011-03-31 | Posted in ⑪福島原発問題1 Comment » 

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コメント1件

 hori@dr3.jp | 2018.01.25 9:58

素晴らしいご報告ありがとうございます。因みに5憶年前の地球の放射線量はどれぐらいあったのでしょうか? 1シーベルト以上では?と思うのですが、如何なものでしょう。

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