2011-03-01

「続・人類の拡散」シリーズ 初期ホモ属~人類初の出アフリカ ホモ・エレクトス②~

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さて、前回のエレクトス①の続き。今回はエレクトスの③生存環境 ④骨格的特長を記事にします。
③エレクトスの生存環境
「人類進化の700万年」著者:三井誠、の動物化石から類推した気候変動の考察によると、300万~250万年までの東アフリカでは、森林で生きる種が激減し、乾燥した草原を好む種が繁栄してきたことが示されています。また、1997年に米国で発表された論文では哺乳類に変化が起きたのは250万~180万年とされており、エレクトスが生まれた200万年前後の気候は、乾燥化が少しずつ進み、森林からサバンナへと環境を変えていったと思われます。これは、ちょうどヒーバー氷期へと突入する時期とも重なりますね。
るいネットに非常によくまとまった投稿があります。

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原人の拡散=決死行の経過 るいネットより

①アフリカ⇒コーカサス:乾燥化→食糧難からの脱出(180万年前)
約200万年前、4万年周期で氷期と間氷期を繰り返しながら徐々に寒冷化が進む本格的氷河期の開始(間氷期で現在-1℃、氷期で現在-4℃)。アフリカは乾燥化・砂漠化が進行。そのため、食糧難から乾燥の比較的ゆるい北方へ移動、コーカサスへ到達(遺跡は175万年前)。コーカサスは標高も高いが、森林と草原がモザイク状となった比較的豊かな植生で、草食・肉食動物も多かった(これらの死骸も洞窟から発見)。気温はアフリカに比べ冷涼だが、食料確保には適した地として定着したのではないか(コーカサスの化石は脳容量などホモ・ハビリスとホモ・エレクトスの中間的な特徴を持ち、ここでハビリス→エレクトスに進化した可能性有り)。
①’アフリカ⇒ジャワ・中国へ?(180万年前)
ジャワの遺跡の年代は、最も古いとする説で180万年前とされ、中国の元謀(ユンモウ)で出土した石器は170~160万年前とされており、アフリカを出てグルジアを経由せずにアジアへ向かった一群が存在した可能性はある。しかしジャワの人骨(顎のみ)は推定身長3mとも言われ、また中国は石器のみ出土、ともに年代測定が定かではないなど確実性に乏しい。
②コーカサス⇒ジャワ:氷期・間氷期の振幅増大(110万年前)
約100万年以降、氷期と間氷期の周期は4万年から10万年に広がり、それに伴い気温変動の振幅も8~10℃と大きくなった。(おそらく)この中で大きく寒冷化に振れた氷期に、コーカサス地方の寒冷化に伴って、アジアへ南下した一群が登場し、ジャワ(スンダランド)へ到達。スンダランドの気候は温暖・湿潤で安定し、石器類も肉食に適応したハンドアックスは無く、狩猟ではなく採集中心の生活をしていたと思われる。
③ジャワ⇒中国:スンダランドの水没により北方へ(100万年前)
スンダランドは気候は比較的良好だが、この時代から氷期と間氷期の周期に合わせて陸地の水没が繰り返し起こっていた。そのため、おそらく原人がスンダランドに到着後ほどなくして(10万年~20万年後)、その一部の人類が中国へ北上した。なお、同じエレクトスでもジャワ原人より中国の原人の方が脳容量もやや大きく、若干の進化が見られる。また、中国の遺跡から火の使用跡が発見。寒冷地に対する知恵も獲得したと考えられる。

エレクトスがアフリカを出た理由には諸説ありますが、森林の減少によって、生物間の生存圧力=種間闘争圧力が高まり、森林からサバンナへの適応や、さらにはコーカサスなど比較的森林の残る場所への決死行が求められたと思われます。
ちなみに、よく耳にする諸説では、脳が大きくなった→エネルギーを必要とした→肉食になった→進歩的な石器を使うようになった→アフリカを出ることが可能になったとありますが、弱者である原人が移動できるようになったからといって、存在している場所が生きていける環境なら、好き好んでその場所を離れて移動するというのも考えにくい。やはり「移動できるようになった」のではなく「移動する必要性に迫られた」のが出発点だと思います。
肉食についても、乾燥化により森林からサバンナへと変化したアフリカにおいて、肉食にならざるを得なかったからだと思います。それも狩猟ではなく死肉と骨髄が中心。石器のつくりが骨から肉をそぎ落とし、骨を叩き割るのに適した形であることが、それを物語っています。
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写真は「日々のできごと、ときどき考古学」様からお借りしました。
また、ハビリスには色んな種類がいることを考えると、乾燥化により森林が減少したことで、ハビリスの段階で適応放散の原理により色んな種が生まれ、その中で適応的だったものがエレクトスにつながっていったと思われます。

④エレクトスの骨格的特長
☆エレクトスのスペック☆
脳容量レンジ :750-1251CC
脳容量平均  :988CC
体重      :63Kg(♂)52Kg(♀)
身長      :145-185cm

これを見ると、なかなかのものですよね。脳容量は現代人男性平均が1350CCなので、約2/3~3/4。体重や身長なんかは、現代人とも引けをとりません。
それまでのホモ・ハビリスと比較して特に変化した点を挙げると、
■■身体的変化■■
身体の大型化。特に女性の大型化か進んだ。アウストラロピテクスは身長130cm、体重30㎏程度、ハビリスでも身長130-160cm、体重35㎏程度ですから、エレクトスになって相当大きくなったことが解ります。
また、足と腕の長さにも変化が出ました。ハビリスは足に比べ腕が長く樹上適応型だったのに対し、エレクトスでは足の方が長くなり、現代人に近いプロポーションになっていきます。これは、森林生活に有利な身体から、地上生活=直立2足歩行に完全に移行したことを物語っているように思います。何故身体が大きくなったのかは、今後の追求点の一つかもしれませんね。

■■脳容量、頭蓋骨の変化■■
『人類進化大全』著者:クリスストリンガー他より引用。

エレクトスの頭骨は比較的長く、高さは低く、前頭部は平らである。脳頭蓋の底部は幅広いが、脳頭蓋の高さは低い。眼窩(がんか)の上にはごつい棒状の梁が左右に渡り(眼窩状隆起、眉隆起)、後頭部にも出っ張り(後頭隆起)が左右に渡っている。脳容量は1000ミリリットルに達し、現代人の平均容量の75%もある。しかし、頭骨の骨は厚く、いろいろな部分で骨が発達して(頭頂部では矢状隆起、ただし矢状稜とは違うので要注意)構造が強化されている。他の部分の骨格もおしなべて頑丈で、骨壁は厚く、彼らは骨の負荷にかかるライフ・スタイルを送っていたことがわかる。下顎骨は頑丈なつくりで、顎の先には頤(おとがい)がない。歯も大きいがヒト的である。

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脳容量の大きさや身体の骨格は、現代人にかなり近くなってきましたが、頭蓋骨の方はまだまだ原始的な形のようですね。ちなみに、アジアとアフリカでは下顎骨や歯、頭蓋骨に独特の違いがあり、出現してから絶滅まで、各々の地域で緩やかに変化していったと思われます。

■■二次的晩熟性■■
直立2足歩行を実現し、かつ脳容量が大きくなったことにより、新たな問題もでてきます。それは出産です。
直立2足歩行によって産道が狭くなり、それに逆行するかのように、脳は大きくなった。これを突破する仕組みが「二次的晩熟性」です。出産時は小さな脳で産み、出産してから脳を大きくする。現代人に繋がるこの二次的成熟性はエレクトスの時に獲得したのではないかと思われます。
参照:ヒトはいつから言葉を話し始めたのか(2)
また、二次的成熟性となったことにより、成長の過程での環境、外圧によって脳を進化させる可能性が生まれたこと。さらには、二次的成熟性となったことにより、女性の子育て負担が増大し、その一方で脳容量の増大⇒エネルギー(餌)の必要から、男性の餌探しといった、社会的な雄雌の役割分担が促進された点も、ハビリスと違うポイントだと思われます。

以上、エレクトスを見てきましたが、乾燥化による森林の減少を機に、決死行⇒二足歩行への本格化や、菜食から肉食(死肉、骨髄)⇒脳容量の増大がおこり、その結果、産道の問題⇒二次的成熟性の獲得⇒雄雌の役割分担の推進と、環境適応力の増大がエレクトスの生存戦略と思います。

List    投稿者 nannoki | 2011-03-01 | Posted in 5)人類の拡散2 Comments » 

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コメント2件

 コメットさん | 2012.02.16 16:30

ウグイスは梅の木にはとまらないんですね!
知りませんでした。
たしかに、ウグイスの鳴き声って印象的ですが、姿を見たことってないです*_*
これから梅の見頃ですね。
楽しみになってきました☆

 kumana | 2012.02.16 16:52

メジロって、ウグイスよりウグイスらしいですね~(笑)でも、それもおかしなはなしで。色の勘違いがあるようです。
ウグイス色っていうのがありますが、メジロのような緑っぽいのをそう呼んでいる人が多いようです。最近は見なくなりましたが、うぐいすパン(あんこが緑)というのも完全に緑色でした。
でも、ウグイスのような灰色っぽいのが本当のウグイス色なんですよね。ウグイスにしては迷惑な話し?そのへんについては、うぐいすにどう思っているのか、聞いてみたいところです。
 

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