2010-09-29

原猿から真猿へ14 猿の進化系統 総まとめ

約4ヶ月間追求してきた「原猿から真猿へ」シリーズもいよいよ総まとめに入ります
今回は猿の進化の流れ・集団形態・獲得機能について、ポイントを整理しながら振り返ります

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猿の進化は、大きく3段階に分けることが出来ます。
①原モグラから原猿へ
暁新世後期、地球温暖化を契機として北米にげっ歯類が大繁殖。既に北米に生息していた原モグラは、樹上逃避機能を獲得し、原猿が登場

②原猿から真猿へ
斬新世前期、地球の寒冷化に伴い、アフリカに原猿が集中。生存競争が激しくなる中、集団を形成する真猿へと進化。

③真猿から類人猿へ
中新世前期、温暖化に伴い、真猿(旧世界猿)と分岐した大型類人猿が登場、そして繁栄。
中新世後期、急速な寒冷化に伴い、大型類人猿は食料難に。雑食性の旧世界猿が世界中に繁殖。

それでは具体的に猿の進化過程を押さえて行きましょう。
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①原モグラから原猿へ
6500万年前、隕石の落下により恐竜が絶滅。急激な寒冷化と食糧減少が起き、地上の制覇種は巨大鳥類へと姿を変えました。
原モグラたちが住んでいた北米・ヨーロッパでは巨大鳥類が陸上を制し、原モグラは隠れ住んでいました。一方、巨大鳥類がいないアジアでは、哺乳類(肉食哺乳類・げっ歯類)が繁栄していました。
5500万年前、地球温暖化を契機にアジアから北米に哺乳類が移動します。肉食哺乳類は集団で狩りをし、それまで制覇種であった巨大鳥類を駆逐しました。北米で哺乳類が繁栄したことで、猿の祖先である原モグラはげっ歯類に生存域を脅かされ、新天地・樹上への逃避を試みます。
当時生息していた原モグラの「プルガトリウス」は、するどいカギ爪を使って木に登り、果物や昆虫を食べていたと考えられています。樹上逃避をする過程で、指の対向性を獲得し、これによって木から木へ移動することが可能となり、樹上適応を果たしました(カルポレステス)。
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写真:プルガトリウス(左)、カルポレステス(右)
樹上生活をする上で、もう一つ獲得した機能として「前方へ向いた眼窩」があります。樹冠で木々の間を移動する際に隣の木の枝までの距離を正確に把握することが必要になりました。それには、立体視をするために視野を重ねることが必要になりました。その結果、眼窩を正面に並べるという特徴を持つようになりました。
樹上適応は、最高の防衛力と生産力を手にすることとなり、やがて原猿たちは温暖化という後押しを受け、食糧限界まで繁栄していきます

②原猿から真猿へ
原猿が直面した本能不全
原猿が登場した暁新世後期は温暖化の時期で、世界中に巨木の森が広がり、原猿の生活の場となる樹冠をつくりだし、果実や木の実などの豊富な食料を提供しました。樹上をほぼ独占し最高の防衛力と生産力を手に入れた原猿たちは、5500万年前~4000万年前の間に、北米大陸から、ヨーロッパ、アジア、アフリカに至るまで、急速に繁殖、拡散しました。
樹上を独占した原猿は、大きな可能性を獲得すると同時に、大変な問題に直面します。縄張りを追い出されたら死ぬはずの弱い雄猿たちは、樹上逃避機能を獲得したが故に、
死なずに絶えざる緊張や怯えや飢えの苦痛など、全ゆる不全感に苦しめられることになります。

共感回路の獲得→弱雄が身を寄せ合う
恒常的な不全感にさらされた弱雄は性闘争本能を抑止し、追従本能と親和本能に収束し、お互いに依存し合う様になります。縄張りを持たない敗者たちが互いに身を寄せ合うのです。そして、互いに注視し続ける内に、相手も同じく依存し期待している事を発見し、互いに同一視して理解し共感し合うに至ります
本能ではどうにもならない状態に直面した原猿たちは、この様にして、サル・人類の意識の、第一の統合様式である共感回路を獲得します。共感回路は遺伝子を通じてメスにも遺伝し、それが何度も繰り返され、より発達していきます。

解脱充足(+統合)回路の獲得→単雄複雌群、若雄集団の形成
身を寄せ合った弱雄たちは、共感回路を母体とし更に不全感を和らげるために、より強い充足感を与える(得る)親和行為(スキンシップ)に収束します。スキンシップは皮膚感覚を発達させ、より不全感を解消する効果が高い+感覚(ドーパミン)回路を形成します。
この+回路は、全ゆる不全感覚をマヒさせる事が出来るので、サルたちは+回路に収束し、解脱収束(不全感を捨象しようと)します。この様にして、サル・人類の意識の、第二の統合様式である解脱充足(+統合)の回路が形成されます。
この回路が形成されると、若雄たちの集団が出来るのに加えて、首雄と雌たちも解脱充足を求めて繁殖期以外も常時行動を共にする、単雄複雌群を形成するようになります。

闘争共認回路の獲得→複雄複雌群の形成
このころ、地球環境は寒冷化し始め世界中に広がっていた樹林は縮小します。そしてアフリカに世界中の原猿が集まり、強烈な種間闘争が発生します。原猿たちは、+回路によって怖れや怯えや危機逃避をマヒさせ、仲間プラス、縄張り闘争プラスへと+共認収束することによって、遂に闘争集団を形成します。
こうして約3000万年前、第三の統合様式である闘争共認の回路を獲得し、同類闘争(縄張り闘争)を第一義課題とする真猿集団が形成されます。

原猿から真猿への進化史
原猿が世界中に広がったころに登場したのが、オモミス類とアダピス類です。当初はアダピス類のほうが大型で優勢でしたが、劣勢だったオモミス類がより強い不全にさらされ、闘争共認の回路を形成し、集団性を獲得して後の真猿の祖先であるカトピテクスやエジプトピテクスなどに進化したと考えられます。
一方、アダピス類は闘争集団を形成することなく原生原猿の祖先になったと考えられます。闘争に負けた原猿類はマダガスカル島などの離島や、アジア・アフリカの限定された地域に生息するようになります。
また、原猿との闘争には勝利した真猿の中でも種間闘争は続き、最初に敗北した種がアフリカを離れ大西洋を渡り現在の新世界猿になりました。

③真猿から類人猿へ
果実食が中心で大型化し当初は生存域を広げた類人猿は、1500万年前の寒冷化と食糧難により、葉食種である旧世界猿との縄張り争いに敗れます。
生き延びるために、類人猿はさまざまな適応戦略をとります。
小型化戦略をとったのが、「プリオピテクス」を祖先とするテナガザル。
大型化戦略をとったのが「ケニアピテクス」「シバピテクス」を祖先とするオランウータンやゴリラ。
集団性を高めていったのが「ケニアピテクス」を祖先とするチンパンジーやボノボ、
だと考えられます。
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写真:プリオピテクス(左)、ケニアピテクス(中)、シバピテクス(右)

 類人猿の集団は、母系制か父系制かと言うと判断が難しい所ですが、同じ祖先を持つ旧世界ザルの殆どが母系制であることを考えれば、もともとは母系制の集団であったと考えるのが自然です。人類も未開部族は殆どが母系集団であり、人類とチンパンジーの共通祖先である、原チンパンジーは母系集団であった可能性が高いと思われます。
類人猿は最も進化していると考えがちですが、実は旧世界ザルとの闘争に負けた敗者です。厳しい生存闘争に打ち勝つために、集団性を高める方向で進化したのが原チンパンジーであり、集団性を高めるために、類人猿の中でも最も知能=共認機能を発達させました。そして、人類が木に登れなくなる先祖がえりという逆境にさらされても生き延びることが出来たのは、原チンパンジーの段階で共認機能を発達させてきたからです。更に人類は共認機能を発達させ、観念機能を創り出す事で、なんとか適応することができ、ついには世界中に広がって行ったのです。

『原猿→真猿→類人猿の進化過程』を図版にまとめてみました
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こちらをクリックすると拡大した画像が見られます

■まとめ
樹上という特殊空間で「死ねない」という本能不全を抱えた原猿が、本能を超えた共感・共認機能を獲得しました。
共認機能を獲得した原猿は、地球寒冷化と集団闘争の激化に伴い、集団を形成していきます(真猿へ進化)。
この共認機能の獲得によって、猿はより多様で複雑な集団を作り出し、集団を統合するために更なる脳進化を遂げていきます(類人猿へ進化)。
原猿→真猿→類人猿の進化過程を辿っていくと、猿は『本能進化から共認進化』へと進化のベクトルを転換させた、ということが見えてきます。
私たち人類も、猿時代に獲得したこの共認機能を発達させていくことで、さらなる進化=観念機能を獲得していったのです。

【過去シリーズ記事】
原猿から真猿へ1 ~原猿って何?~ 
原猿から真猿へ2 ~猿の拡散と進化過程~
原猿から真猿へ3 ~真猿への進化を、現存する原猿の特徴から探る~
原猿から真猿へ4 ~原猿が陥った「本能不全」~
原猿から真猿へ5 ~共感回路の獲得~
原猿から真猿へ6 ~闘争集団の形成~
原猿から真猿へ7 ~サルの共認統合~
原猿から真猿へ8 ~真猿の進化過程~
原猿から真猿へ9 ~新世界ザルの進化と特徴~
原猿から真猿へ10 ~旧世界ザルの進化と特徴~
原猿から真猿へ11 ~類人猿の進化と特徴~
原猿から真猿へ12 ~縄張り闘争と同類闘争~
原猿から真猿へ13 ~歴史的な視点の重要性~

List    投稿者 andy | 2010-09-29 | Posted in 5)人類の拡散No Comments » 

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