2010-09-21

人類の拡散と進化シリーズ4~ホモ・サピエンスの進化~

前回の記事では、原人段階の観念機能の進化について追求してきました。
今回は、いよいよ私たちの直接の祖先である人類(ホモ・サピエンス)の進化について紹介していきます。
私たちの祖先は、どのようにして外圧に晒され生き続けてきたのでしょうか?また、枝分かれした他の人類は、その後どうなってしまったのでしょうか?
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   写真1 大地を移動する人類

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1.現生人類につながる系譜
るいネット「人類の拡散と観念機能の進化④~新人段階 1~」より引用。

>初期ホモ・サピエンスは、16万年前にアフリカで誕生する。アフリカから移動せず残った旧人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)がその直接の祖先と考えられている。つまり、最後までアフリカを出ず、残り続けた種が、最終的にホモ・サピエンスに進化したことになる。
>ホモ・サピエンスへの進化過程を系統樹的に整理すると、
猿人(アウストラロピテクス)→原人(ホモ・ハビリス、ホモ・エルガスター)→旧人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)→新人(ホモ・サピエンス)
となります。

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               図1 人類の進化系統図

現生人類に繋がる系統は、どのような特徴を持っていたのでしょうか?
上記の進化系統図のくびれているところに、注目してください。
原人→旧人の間のくびれているところ、これは、ホモ・ハイデルベルゲンシスという種です。
ホモ・ハイデルベルゲンシス自体については、分かっていない事が多いですが、ホモ・エレクトス(原生人類に繋がる原人)に比べ脳容量が大きく(1100cc ~ 1400cc)、より高度な道具を作り、より人間的な行動をとることができたとされています。
次に、旧人→新人の間のくびれているところ、これが私達と同じホモ・サピエンスです。
ホモベルゲンシスからは、ホモ・サピエンス以外に、ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルタレンシス)が枝分かれしていますが、ネアンデルタール人は、ヨーロッパから西アジアに居住しています。原生人類に比べて脳容量こそ大きいものの(1600cc)、原生人類に比べ、喉の奥(上気道)が短く「言語」を扱う能力が低かった可能性が指摘されている他、骨格も頑丈であったとされています。
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写真2 現生人類(左)とネアンデルタール人(右)の頭骨の比較

2.アフリカに残り続けた人類が生き残ったのはなんで?

>初期ホモ・サピエンスは、16万年前にアフリカで誕生する。アフリカから移動せず残った旧人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)がその直接の祖先と考えられている。つまり、最後までアフリカを出ず、残り続けた種が、最終的にホモ・サピエンスに進化したことになる。
原人段階、旧人段階でアフリカを出てアジア・ヨーロッパに拡散した人類種は少なくても3万年前ごろには死滅してしまう。(死滅の原因は氷河期末期の急激な温度変化と思われる)皮肉にも、アフリカに残り続けた種が最も適応的な進化を遂げ、生存域を広げていった。
>最も重要なのは、アフリカに留まり続けた原人が旧人に進化し、更にアフリカに留まり続けた旧人が新人に進化したと言う点にある。

ここで注目したいのは、現在の我々に繋がる祖先は「最後までアフリカに残り続けてきた種」という点です。何故、残ったのでしょうか?そして、最後まで残り続けた種が生き残ったという事は何を意味したのでしょうか?
生物の進化は、常に逆境に対峙し、その壁を突き抜ける時に達成される。
つまり、最も外圧の高い土地=アフリカに残り続けた人類こそが、最も高い逆境に晒されながらも、進化を続けてきたという事実がそこにある。
例えば、先にアフリカを出た旧人などが最初に定住した地、スンダランドは、アフリカに比べて遥かに安定した環境でした。
激しい気候変動を契機とし、アフリカを旅立つ事も決死行ではあるが、むしろどんなに厳しい環境になろうとも、その自然を直視し、決して否定することなくそこに留まり続けてきた人類(=新人)だけが、脳容量をさらに発達させ、3~5万年の劇的な気候変動をも乗り越えたのです。
逆に、先にアフリカを出て拡散した原人・旧人は気候変動に適応できず、絶滅してしまいました
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写真2 スンダランドでの生活の様子       写真3 アフリカでの生活の様子

○原人・旧人を絶滅させた外圧とは?
7万年前~1万年前の氷期をヴュルム(ウイスコンシン)氷期と呼ぶ。また最も氷床が拡大したおよそ2万年前をヴュルム氷期の最寒冷期と呼ぶ。最寒冷期の状態が続いたのは実際は非常に短い間(おそらく2000年ほど)であったと推測されている。
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   図2 3~2万年前の地球温暖環境(ヴュルム氷期)

3.GREAT JOURNEY ~世界中に拡散した人類~

このように、厳しい自然外圧のアフリカを生き抜き、進化してきたホモ・サピエンスだが、少なくても12万5千年前にはユーラシアに拡散し始める。
ホモ・サピエンスは、まずは原人と同じルートを辿り、現在の東南アジアのスンダランドに辿りつく(約7万5千年前)
そこから、オーストラリア、中央アジア、ヨーロッパ各地へと広がり、約2万5千年前(最近の発見で5万年前に覆る可能性がある)にベーリング海峡を越え、1万5千年前までには南アメリカ最南端にたどり着く。こうして人類は全世界へと広がっていったのである。

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            図3 新人の拡散ルート

アフリカを出たホモ・サピエンスは、全世界へ拡散し、現在の私たちの祖先となりました。ネイティブ・アメリカンの口承史に、この遥かなる長い旅路を以下のように伝えています。

われらの中にじゅうぶん知恵のある者がいないときは、多くの者が心を一つにすれば、確かな道をみいだせるかもしれない。
一つの道でもなく、またもう一つの別な道でもなく、その二つの釣り合いが確かな道を照らし出す―

(一万年の旅路―ネイティヴ・アメリカンの口承史 ポーラ アンダーウッド (著))

【図解】人類の拡散と観念機能の進化~猿人~新人段階~
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次回は私たちホモ・サピエンスの観念機能の進化について、より詳細に迫っていきます。
お楽しみに

【転載図版】
図1人類歴史年表表 
図2おてんきひろば 新生代の気候
図3当ブログ8/24記事
写真1おおた 葉一郎のしょーと・しょーと・えっせい
写真2ウィキペディア
写真3国立科学博物館 日本人はるかな旅展
写真4 地球大進化6 NHK出版

List    投稿者 andy | 2010-09-21 | Posted in 5)人類の拡散2 Comments » 

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コメント2件

 スラッカー | 2011.05.18 16:19

え?てことは核爆が・・・
「放射能を含んだ瓦礫」が燃料棒の破片と知った時以上の衝撃です
まー考えれば燃料棒が飛び散ってるわけですからね・・・
上も心配ですが下の土や水も心配です
もうメルトダウンした燃料棒は回収不可なんですかね

 匿名 | 2011.05.23 16:07

スラッカーさん、コメントありがとうございます。
人間の管理下から一旦自然界に放散してしまった放射性物質の回収は、普通に考えてもちょっと無理ですよね。
最近思うのですが、放射性物質を人為的にコントロールできるという発想そのものが、現代の科学レベルでは無謀だった、あるいは傲慢だった・・・つまり原子力については、実はわかっていないことがまだあまりにも多過ぎたということではないかと思います。
もっと謙虚に『自然の摂理』を学ぶ姿勢の重要性に気付くことが、今回の原発事故における唯一の“高い~高い~授業料”なのかな?なんて感じています。

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