免疫って何?(9)~リンパ球の組み換えの仕組み~
今回の記事では、リンパ球系の獲得免疫であるT細胞、B細胞の働きに着目します。
T・B細胞の働き ~連係プレーで身体を守る~
T細胞、B細胞の働きは、次のようにまとめられます。それぞれが単体で行動するのではなく、他の免疫細胞と連係して働いているところがポイントです。
『免疫プラザ』より引用させていただきました。
T細胞
T細胞は主に感染した細胞を見つけて排除する。T細胞は3種類あり、それぞれ司令塔、殺し屋、ストッパーの役目を担う。
- T/ヘルパー細胞は免疫の司令塔であり、助っ人。マクロファージから病原菌(抗原)の情報を受け取り、B細胞に抗体を作るよう指令を出し、抗体を作るのを助ける。マクロファージと共同で、サイトカインを放出、T/キラー細胞、NK細胞を活性化させる。
- T/キラー細胞は殺し屋。T/ヘルパー細胞から指令があると、感染した細胞にとりついて、その細胞を殺す。
- T/サプレッサー細胞はストッパー役。過剰に攻撃したり、武器を作ったりしないように抑制したり、免疫反応を終了に導く。
B細胞(抗体産生細胞、抗原提示細胞)
- T細胞の指令により、病原菌(抗原)に応じた抗体を産生し、抗原を攻撃する。B細胞はあらかじめ表面にレセプターをアンテナのように掲 げ、抗原と結合、同時に抗原を提示する(標識になる)。
その他、こちらも参考になります。
『獲得免疫の概要』
『獲得免疫の認識機能』
では、どうやって様々なウィルスに対応しているのでしょうか?
どうやって様々なウィルスに対応しているの?
抗原となるウィルスや細菌は何千万種類とあります。したがって、あらゆる抗原に対応するためには、何百・何千万種類の抗体を体内に用意する必要があります。では、どうやって多種多様な抗体を作り出しているのでしょうか。
T細胞・B細胞は、自らも遺伝子変異を起こして、さまざまな抗原に対応しています。その具体的な変異の仕組みには、次のようなものがあります。
以下、『「変異」を追及した抗体』を参考に、B細胞が産生する抗体の遺伝子変異についてまとめます。
<1>DNA組み換え
生殖細胞からB細胞が分化する際、Y字型の下の部分(重鎖可変領域 (VH))を決める遺伝子は、VH遺伝子部分、DH遺伝子部分、JH遺伝子部分という3つに分かれていて、それらが組み合わされます。また、Y字型の上の部分(軽鎖可変領域 (VL) )は、VL遺伝子部分、JL遺伝子部分という遺伝子断片に分かれていて、最終的にはその組合せによってDNAが決定されます。
なんと!「DNAは固定的で変わらない」という印象に反して、生殖細胞から分化する際にDNAが組み替えられているのですね。これを「遺伝子再編成」と呼びます。
VH遺伝子部分、DH遺伝子部分、JH遺伝子部分には、それぞれ50種、30種、6種の遺伝子断片があるので、全体では50×30×6=9000種類の組合せが可能です。
また、VL遺伝子部分、JL遺伝子部分には、それぞれ35種、5種の遺伝子断片があるので、その組合せは35×5 = 175種類となります。
つまり、Y字型の上と下の組合せとしては、9000×175=150万種類以上の組合せが可能になっています。
<2>遺伝子断片同士の結合部のあいまいさ
2段階目は結合部のあいまいさです。これは単純でDNA組み換えの際にV遺伝子断片とJ遺伝子断片が結合するわけですが、この結合位置がふらふらしているのです。このあいまいさも多様性を生み出す一つとなっている。というわけです。
『「変異」を追及した抗体』より
<3>成熟B細胞内における体細胞高頻度突然変異
突然変異といえば、減数分裂を行わず生殖細胞を作らない単細胞生物の変異方法です。高等生物では、様々な修復酵素で突然変異は拘禁されているのですが、なんと成熟したB細胞のY字型部分では、普通の体細胞の一万倍という高頻度で突然変異が起きます。
・・・
では、このような「変異を繰り返す免疫細胞」は、なぜ生み出されたのでしょうか?
次回は、T細胞・B細胞の起源の謎に迫ります。
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