2009-10-20

収束と統合、可能性収束の論理4-多様化戦略(機能)の持つ意味

本日は、「収束と統合」シリーズ第 弾です。
前回までの投稿で、生物進化の基礎概念となる「収束と統合」という概念、さらには現在の進化論の主流を占めるネオダーウィズムの欠陥について論じてきました。
収束と統合、可能性収束の論理1 収束と統合とは生きているという状態そのもの
収束と統合、可能性収束の論理2 進化論は神の証明か
収束と統合、可能性収束の論理3 収束不全の遺伝子たち(自然選択では語れない)
さて、今回は、ネオダーウィズムでは語れないカンブリア大爆発を例に挙げながら、生物多様性の奥に潜む進化のメカニズムを見つけ出していきます

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るいネット「多様化戦略(機能)の持つ意味、その2」を引用しながら、生物進化のメカニズムを考察していきます。
1.多様化戦略とは、可能性蓄積ではないか

カンブリア紀に一気に多様な生物種が出現したことは、付加構造にしても、転換構造にしても、「基底構造は一気に変わりうる」ことを示しているのではないでしょうか。そのためには、その転換以前に転換可能性が蓄積されているわけです。もちろんそれは、既にほぼ明らかにされているように「多様なDNAの変異蓄積(DNA量の増大も含みます)が、カンブリア紀の大爆発以前に起こっていた」というような遺伝子に着目した視点だけではなく、生物学的構造内部、つまり同一種のレベルで個体・細胞・DNAに潜在化する多様性を通して、可能性(転換エネルギー)が蓄積されていたのではないかと思います。

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カンブリア紀は、多種多様な生物が登場。画像はコチラからお借りしました。
カンブリア大爆発のような短時間での進化拡大現象は、従来の突然変異説では説明できません。むしろ、多様な種の登場以前に、生物はその体内に変異可能性を蓄積し、ある環境変化によって蓄積された変異が一気に発現した、と考える方がスッキリします。
このように考えると、カンブリア大爆発以前に構築された生物の多様化戦略(分裂⇒有性生殖)とは、環境変化に対するリスク回避としての機能だけでなく、大進化を遂げる上での変異蓄積機能という位置づけがあるのではないでしょうか?

【参考】
カンブリア大爆発とは?
 5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる動物の「門(ボディプラン、生物の体制)」が出そろった現象であるとされる。原因はスノーボールアース(雪球地球)の終結であると言われている。
可能性の蓄積と分子シャロペン


2.個体の多様化が進化を引き起こすのではない

まず、多様化がそのまま構造転換を引き起こすようでは、そもそも基底構造が成立していない(種の存立基盤がない)わけで、それでは協働性を持った同類にならないわけです。だから、万が一そのような因子が発現されれば排除されるだろうし、それを生み出さないような(集団を突き抜けない範囲での)多様性の確保ということになります。その一つの維持システムが「性システム」なわけです。多様な同類他者を生み出すシステムであると同時に、変異可能性を蓄積するシステムであり、同一性を保持するシステムです。

個体の多様化が構造転換=進化を引き起こすと考える説は大きな矛盾をはらみます。それは、種の同一性を確保できなくなるからです。
種の同一性が確保できないと、交配が出来ませんから種を残せません。突然変異の発生確率は非常に低いので同じ変異を起こすものはまずいません。種が変わるような突然変異を起こすのが一匹しかいなければ種として生き残ることは出来ません。
カンブリア大爆発のように、短期間でものすごい数の異なる種が誕生する現象は、突然変異でたまたま生まれた個体が運良く生き残る、という偶然が短期間で次々と起こらないと実現しません。突然変異などで多様化した個体単体から、種の進化が出発すると考えるのは無理があります。
つまり、種内で多様性を獲得するシステムは、新しい種を直接生み出すわけではなく、種としての同一性を確保した範囲で、進化の可能性を蓄積している段階だと考えられます。
では、種の進化はどのように起こると考えれば良いのでしょうか

3.多様な個体の集合によって、新たな適応体が登場する

『生命を捉えなおす』(清水博:中公新書)では、個体と要素の関係において各要素に入ってきたさまざまな情報に反応しての要素のさまざまなリズムがあり、それらが一気に引き込み現象を起して同調し、新たなるリズムを起す(一種の創発性)と述べています。私は、このような個体に注目しての言明だけでなく、むしろ種(生物学的構造)と種内の多様な個体との関係にこそ、言及されべきではないかと思います。集団内のさまざまな多様な個体、それらが集まって単純なΣではなく、一つの新たなる適応機能(答え)を生み出していくのが、生命体の集まりなのだと。
このことは、最近の認知観であるところの、「分散表象の処理」を核とするコネクショニズムでも触れられている点です。分散表象とは分散(多様化した)ニューロンがAという事象に対して分散して(Aを分断して別々の箇所を)認知するのではなく、それぞれがA全体を認知して、それらを重ね合わせて新たなる認知を生み出すという仕組みです。

コネクショニズムを端的に説明すると、「全機能を総合的に判断する過程」のこと。脳内の神経回路網の結びつき・認識機能も同様の機能をもっている(参考記事はコチラ)。
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写真はコチラからお借りしました。
生物が外圧に対峙したときに、今までの変異蓄積全てを同時に峻別し、最も可能性のある新たな機能を作っていくということです。このシステムにより、過去の状況認識を蓄積⇒外圧時にはそれを総動員して適応することにより変異を遂げながら種として同一性を保つのではないかと考えられます。

以上より、生物進化のメカニズムをまとめると、
生物の多様化戦略が、生物内部に変異蓄積(=適応可能性)を生み出す
個体の多様化(ex.突然変異)ではなく種内の多様化が、種の同一性を維持しながら進化の可能性を模索する
同種の多様な同類同士が蓄積した変異が、ある外圧状況下で総動員され、もっとも可能性のある方向に収斂することで進化が起きる

となります。
つまり進化とは、無数の同類同士の変異蓄積を、最も可能性のある方向に収斂させる過程で生み出される、といえるのではないでしょうか。

List    投稿者 andy | 2009-10-20 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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