2009-07-28

哺乳類の縄張り闘争本能(性闘争本能)の獲得過程

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『生命は誕生時点から不完全(完結したものでは無い)なものであり、ゆえに共に生きてきた=群れる結果になった』
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「生き物の原点は個体でなく群体にある」という認識は、生物史を学んでいく過程で得られた非常に重要な認識でした。
人間は一人では生きていけないといいますが、個人主義をはじめとして、すべてを個体→個人→自分というように自分中心にものごとを捉えてしまう意識構造に対する違和感は、生命史に遡ればその起源を読み解くことができます。
しかし個体を全面的に押出すのは人間だけではありません。哺乳類の縄張りとメスを巡る同類同士の争いは非常に  激しい闘い 😈  です。
哺乳類特有の縄張り闘争本能(性闘争本能)は、群れることを適応するため(生存するため)の第一戦略とする生物原理から考えると、かなり特異な本能であると考えられます。
この特異な本能がどのように形成されてきたのでしょうか?
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■哺乳類の誕生
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・哺乳類登場は概ね2.3億年前。アデロバシレウスという現在のトガリネズミのような外見の小動物として両生類から進化して登場する。
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両生類と比較した哺乳類の特徴は、胎生であることと、恒温動物であること。
このように進化した背景には、

哺乳類は、肉食両生類と肉食爬虫類の両方に追われて、乾燥適応だけでは生き残れないために、寒冷地に適応していった種です。毛皮をまとって恒温動物に進化したのも、完全な胎生に進化していったのも、寒いとからだが動かない、卵が孵らない・・・などの弱点を矯正して、寒冷な環境でも子孫を残し種として生き残っていくためです。

リンク 
という理由がある。
・アデロバシレウスの生活形態は未明な点が多いのですが、夜行性・食虫・落ち葉の影に生息という推測が一般的。
アデロバシレウスが夜行性への適応が可能になったのは、聴覚に秘密があると考えられています。
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■恐竜全盛時代を生き延びた哺乳類
アデロバシレウスの生活形態で注目すべきは夜行性ということ。恐竜全盛の時代においても原始哺乳類は生存域を使い分け、外敵闘争をうまく避けてきた。
生存域は落ち葉の下、生活時間は夜間ということで隠れ住むには比較的安定的な生存域を確保していたと考えられる。
このアデロバシレウスの祖先にあたるのがキノドン類。
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彼らが登場するのは、ペルム期終盤の2.5億年前。ここから三畳紀(2.1億年前)にかけては乾燥と高温化が進み、さらに低酸素状態が続く。
キノドン類の特徴は、腹部の肋骨が縮小し、胴がねじれる様になった事、体毛を獲得していた可能性も高いこと、胎生を獲得し、多量の酸素を確実に胎児に届けられるようになったことが上げられる。
ここから推測するにキノドンの段階から親和機能は強化されていったと考えられる。
胎生=免疫機能の抑止と、毛づくろいの行為などがその機能を物語る。
ただし彼らの行動はこの時代の恐竜と重なり合っており、外敵闘争を第一義とし、かなり不利な捕食対象の弱い生物として生存していたと考えられる。実際6,000年前の恐竜の絶滅と同時にキノドン類も絶滅している。(この段階では強い性闘争本能は獲得していないと推測される)
そこから進化した原始哺乳類は、親和機能を受け継ぎながら、夜行性・落ち葉下という特殊環境下で進化を迎える。
ここで外圧状況が変化し、外敵闘争圧力がかなり低下する。かつ落ち葉下でエサは栄養価の低い昆虫程度では、エサを巡る同類同士の争いは過酷なものだったのではないか。
この状況下において同類同士の縄張り闘争(性闘争)の本能強化が必要になった。
■オスメス分化と進化
オスメス分化の視点で哺乳類への進化を捉えると、両生類が有性生殖、雌雄異体が基本にしながら、性決定要因は温度依存型などの環境要因によるものがある(トカゲの一部は温度依存型で性決定される)のに対し、両生類から2派に進化する、哺乳類系統と爬虫類→鳥類では大きな変化が見られる。
ヘテロ染色体と呼ばれる、性染色体が確立し、遺伝子レベルで性が決定されていく。
そしてこのヘテロ染色体は哺乳類系がXY型(オスがヘテロ染色体を所有)爬虫類・鳥類はZW型(メスがヘテロ染色体を所有)と異なる進化を遂げる。ヘテロ染色体は変異を蓄積させる染色体であり、進化適応を進める原動力にもなりうる。
オス側が変異の担い手に特化してくためにも、オスの淘汰適応を激しくさせ外圧適応の進化スピードを上げる必要があった。
それに対してメスは安定のベクトルに進化を進める。出産・育児時の安全や食料の確保の必要があるので、雄のヤリ逃げを防ぐべく閂本能を形成する。つまり、安全と食料を保障してくれる雄に対してのみ閂を解除するという本能である。こうなると雄は、雌と交わる為にはまず縄張り(種によっては巣までも)を確保しなければならなくなる。
また胎生の獲得は、淘汰適応が働きにくいという側面も生み出す。卵から孵化するそれまでの生物は外敵に多くが捕食されてしまうという淘汰原理が働くが、胎生の場合それが働きにくい。よってオスメスが交わる前の段階で激しい淘汰圧力(=オスの性闘争)を働かせることが、種の存続のために必要だった。
■まとめ
外敵圧力が働きにくいという特殊環境と胎生の獲得が、性闘争強化の要因と考えられる。
それが後の多様な進化~大型化・地上の制覇種に進化した原動力ともなった。
一方生命の根源的本能である集団本能集団本能(=追従本能)を封鎖し、性闘争本能を強化する進化の方法は一般的な生物進化からすれば、尋常ではない進化形態と考えられるが、この本能の獲得には相当な年月を費やしている。
2.3億年前に登場した哺乳類が現在のような多様性を獲得したのは、約1.6億年後の6,500万年前になる。3億年前の古生代に繁殖した単弓類も含めた進化史をみれば、そのほとんどの種は絶滅してくなかで、哺乳類だけが現在まで繋がる種として生き延びている。これは奇跡的な生存確率だろう。
つまり従来の本能(追従本能)では適応できず、まったく新たな本能(=異常に強い性闘争本能)と胎s生(=親和機能)を獲得した種が淘汰適応を繰り返しながら、圧倒的に不利な外圧状況の中で生き延びてきたと考えられる。

・外圧の変化(気象上の変化)→従来の生殖では適応できない⇒胎生の獲得(親和機能の強化)⇒安定のベクトル(ホモ染色体に蓄積)進化(約3.0億年前)
・外圧の変化(夜行性・外敵不在)→従来の本能(追従本能)では適応できない⇒性闘争の強化⇒変異のベクトル(ヘテロ染色体に蓄積)進化(約2.3億年前)
*⇒オスメスの役割分化を促進(1.6億年間)⇒多様な進化~大型化・地上の制覇種(約6,500万年前)

List    投稿者 chai-nom | 2009-07-28 | Posted in 2)知られざる原始哺乳類1 Comment » 

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コメント1件

 匿名希望 | 2009.12.17 19:52

 進化を論ずる前に、まず淘汰圧について理解してください。表現型も遺伝子型も、他の遺伝子と共存しているとは限りません。ランナウェイ仮説とハンディキャップ理論などをみてみてください。
 実際、遺伝子は共同的ですが、それは結果論です。自然淘汰の末、うまくまとまっているだけです。
 群れのメリットは確かに存在しますが(希釈効果など)、種内競争の増大などデメリットも存在します。デメリットの多い場合は、単独生活します。
  
 進化とその産物は効率的・共同的とは限りません。仮に共同的であれば、植物などは種間競争をやめて、調和する生命体になるはずです。(エヴァンゲリオンみたいなw)
 それと、進化は定量的・階層的なものではありません。下等な方向から高等な方向へ行くとか、単純から複雑を目指すとか、そういうものではありません。例を挙げれば、ヘビはトカゲより進化していますが、体構造は単純です。数の拡大でみれば、真正細菌は質量が人間と同じくらいあると想定されています。単純から複雑を目指すものではありませんし、複雑な生物が適応度が高いことはありません。
 

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