2009-06-14

Y染色体の不思議:変異蓄積体か?変異促進体か?

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この画像はこちらからお借りしました。
性染色体は変異の模索機構~第87回なんでや劇場より~の中に、「遺伝子変異はY染色体に蓄積」という説明があり、その仕組みを調べていたところ、Y染色体が変異を蓄積していると考えると、つじつまの合わないことが見つかって来ました。
Y染色体は変異を促進する役割を担っている、そして、変異の蓄積は他の遺伝子が担っていると考える方が、上手く説明できそうです。
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●相同染色体があってもX染色体は修復されていない

先ほど紹介したブログ記事には、X染色体は相同染色体があるために突然変異があっても修復し変異を蓄積しないのに対し、Y染色体は相同染色体がないため変異が修復されずに変異を蓄積する、とあります。しかし、詳しく調べてみるとX染色体も相同染色体があるからといって、修復は行なわれていないようです。具体的な事例として、血友病の事例を挙げてみましょう。

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この画像はこちらからお借りしました

血友病のような遺伝病は、男性に多く発生しますが、その遺伝子異常はX染色体上の遺伝子変異が原因になっています。そして、正常な父親と血友病保因者の母親から生まれた子供は、男の子は50%の確立で血友病に、女の子は50%の確立で保因者になります。これが意味しているのは、女性のX染色体上の遺伝子変異は、正常な相同染色体があっても修復されないと言うことです。

血友病以外にも、色覚異常や、免疫異常などの男性に発生しやすい遺伝病はX染色体上に遺伝子変異があり、血友病と同じように女性保因者が正常な相同染色体を持っていても、変異は修復されずにそのまま遺伝されています。

●相同染色体による遺伝子修復は行われていない

遺伝子の修復機構を調べてみると、相同組み換えによる修復機構はありますが、より詳細に調べてみると、相同組み換えによる遺伝子修復は、相同染色体によるものではなく姉妹染色体によって修復されていることが分かります。

姉妹染色体とは、自己複製した分裂前のコピー染色体のことであって、父親由来、母親由来の別の相同染色体を指すものではありません。Y染色体もX染色体も、修復機能には差はないようです。

ウィキペディアの遺伝子修復から相同組み換えの記述を紹介します。

相同組換え(homologous recombination: HR)の場合、切断部の修復の際に用いる鋳型としてまったく同一か、よく似た配列をもつゲノムを利用する。この機構は細胞周期において、DNAの複製中か、または複製終了後の間において主に用いられると考えられている。 これは損傷を受けた染色体の修復が、新しく作成された相同な配列を持つ姉妹染色分体を利用することで可能になるからである。 ヒトゲノムでは繰り返し配列が多く、利用可能な同一な配列を多く含んでいる。これらの他の配列との間で交差して起こる組換えにおいては問題を起こすことが多く、結果として染色体の転座や他の染色体再編成を引き起こすことがある。

姉妹遺伝子以外との間でも、遺伝子修復が全く不可能と言うわけではないようですが、その場合は、遺伝子を完全に修復できず、変異を起こすことが多いようです。

●Y染色体はどんどん小さくなってきている。

Y染色体は非常に小さな染色体で、どんどん小さくなってきているようです。しかもY染色体のかなりの部分は意味がない単純な繰り返しであり、変異情報を蓄積しているとは考えにくい面があります。先ほど見たように、男性に発祥しやすい遺伝病の変異も多くがX染色体に保存されています。

一方で、どんどん小さくなってきているということは、Y染色体で遺伝子変異が起こっていることは間違いないようです。これはどのような現象なのでしょうか。

●Y染色体上の性決定遺伝子、SRY遺伝子が変異を促している

Y染色体がどんどん小さくなっていくと言う変異が始まったのは、Y染色体にSRY遺伝子がくっついてからだと考えられています。もともと、別の染色体上にあったSRY遺伝子が移動してきてY染色体にくっつき、性染色体として働き出すと同時に、Y染色体は変異を始め、どんどん小さくなってきたと考えられています。

なぜ、SRY遺伝子はこのような変異を起こさせるのでしょうか。この理由については以前るいネットで仮説が提起されていますので紹介します。

性染色体のそもそもの役割~トランスポゾンとの関係(仮説)

☆ここで仮説であるが、SRY遺伝子はトランスポゾンが転移した遺伝子なのではないだろうか?というストーリーがある。この仮説に沿うならば「タンパク質→トランスポゾン→SRY遺伝子→Y染色体」という過程が成立すると思われる。

SRY遺伝子の前身は、自分の遺伝子を組み変える遺伝子であるレトロポゾンであり、SRY遺伝子は今も、他の遺伝子の変異を促進させるスイッチ=変異促進体の役割を果たしていると考えられます。何らかの外圧が働いたときに、SRY遺伝子のレトロポゾンとしての機能が働く仕組みがあり、外圧に適応するために遺伝子組み換えを行っているのではないでしょうか。

遺伝子レベルの小変異は、外圧→SRY→遺伝子組み換えで、遺伝子レベルを超える大変異は、外圧→中心体→分裂システムや代謝システムレベルの変異という形で実現されていると考えることも出来そうです。

List    投稿者 nodayuji | 2009-06-14 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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