2009-05-22

生命の起源と進化に学ぶ-6-多細胞生物の誕生

生命の起源と進化に学ぶシリーズも第6回となりました。今回はいよいよ多細胞生物の登場です。
減数分裂の機能を獲得し、安定と変異を両立することが可能になった、2n体の単細胞生物から、多細胞生物が登場します。多細胞生命の登場により、さらに進化が加速し私たち人類の登場につながります。多細胞生物の進化の秘密はどこにあるのでしょうか。
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この画像はこちらからお借りしました。
今日は、多細胞生物進化の秘密を紹介します。
1.体細胞と生殖細胞の分化
2.体細胞の専門分化と統合
3.生殖細胞の精卵分化
4.オスメスの躯体分化
5.オスとは何か、メスとは何かのまとめ
6.動物と植物の進化戦略の違い

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●体細胞と生殖細胞の分化


減数分裂と体細胞分裂を並行して進める能力を獲得した2倍体生物から多細胞生物が登場してきます。
単細胞生物は一方で摂食しながら、なおかつ種の保存のために、減数分裂を繰り返さなければならず大きな負担がかかります。この問題を解決するために生殖と摂食を分化したのが多細胞生物なのです。
生殖負担を生殖細胞に特化させることで、仕事細胞(体細胞)の負担を軽くでき、生殖細胞のような万能性が不要であり、多様な機能分化と高度化、それによる運動機能(摂食機能)の発達が実現できます。
体細胞は環境の変化などの外圧状況に応じて新たな機能を獲得していく変異の役割を、生殖細胞は遺伝情報を保持する安定の役割を担うことになります。

●体細胞の専門分化と統合

体細胞の多様な機能分化が進むほど、高度な統合機能が必要になってきます。その統合役は神経細胞であり脳細胞です。
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最も原始的な海綿動物の細胞は生殖細胞、外皮細胞、中間細胞などに分かれていますが神経はありません。腔腸動物(イソギンチャク、ヒドラ)になると、触手や食道が発達し神経も登場します。棘皮動物(ナマコ、ヒトデ)になると血管や筋組織、腸管などの消化器官が登場し、原索動物(ナメクジウオ、ホヤ)で脊索、神経管、鰓が登場し、脊椎動物(魚類、両棲類、は虫類、哺乳類)の段階で脊髄と脳が完成します。
多細胞生物は、単細胞生物のような全能性を捨てて、分化と統合(=組織化)によって生きる道に可能性収束し、高度な進化を実現することが出来たのです。

●生殖細胞の精卵分化

体細胞だけでなく生殖細胞も分化し精子と卵子が登場します。卵子は発生(初期分裂)に備え栄養を蓄えるために運動をせず、精子は運動能力に特化していったのです。精子は「運動=受精」、卵子は「蓄積=発生」にそれぞれ特化していきました。
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そして、精子は運動=受精の役割を担うために数を増やし、より強く淘汰圧力を受け、外圧に適応する変異促進の機能も担うようになって行きます。逆に卵子は栄養を蓄積する役割を担うために数を減らし、運動もしないことから淘汰を受けにくい、安定の機能を担うようになっていきます。つまり精子=変異配偶子、卵子=安定配偶子、これが精卵分化の本質です。
さらに、精子と卵子の構造の違いに着目してみると、精子にはあって卵子にはないものがあります。それが中心体です。中心体は細胞分裂における司令塔の役割を担っていますが、その構造はRNAとタンパク質の複合体であるRNP(リボ核酸タンパク質)です。RNAはほとんどが1本鎖で存在しており、DNAに比べて反応性が高いことから鎖の切断や結合の柔軟性を持っており不安定な構造であるとされています。言い換えれば、変異性が高い構造です。
構造の面から見ても、中心体を持つ精子はRNA=“変異”を組み込んだ配偶子であり、逆に中心体を持たない卵子とは変異を避けて“安定”的な保存機能に特化した配偶子であると考えることができます。

●オスメスの躯体分化

「精子」と「卵子」が分化した段階では、まだオスとメスに体(躯体)が分かれたわけではありません。
魚類に進化するまでは、一つの体で精子も卵子もつくる雌雄同体の生物が結構います。
魚類に進化したあたりで、ようやく精子をつくる躯体と卵子をつくる躯体が分かれる雌雄異体が多くなってきますが、魚類の段階では「オス」「メス」を行ったりきたりする性転換をする種類が結構います。
オスとメスの躯体が分化したのはなぜでしょうか。体細胞の分化が進み摂食機能が高度化するにしたがって種間圧力が上昇します。この外圧に対応するため、体細胞のさらなる高度化が進むと同時に、繁殖力を高めるために各々の配偶子、生殖巣、生殖器を緻密につくりあげる必要も高まり、精子をつくる躯体(=オス)と卵子をつくる躯体(=メス)に分化して行きます。
さらに、摂食機能高度化⇒種間圧力上昇に対応するため、幼体保護と防衛力上昇の要請が加わります。
安定的な保存機能に特化した卵子を持つメスが幼体保護に、そして、外圧に適応する変異を担う精子を持つオスが防衛力上昇に必然的に向かいます。

●オスとは何か、メスとは何かのまとめ

オス・メスの分化史(①殖産分化→②精卵分化→③雌雄躯体分化)を通して、オスとは?メスとは?の本質は
 外圧に対応するため、変異性の上に、闘争能力(役割)が塗り重ねられた存在=オス
 種を保存するために、安定性の上に、生殖能力(役割)が塗り重ねられた存在=メス
ということがわかったと思います。
生物数十億年の歴史の中で、外圧に適応していくために役割分担と調和が塗り重ねられてきましたオスという役割(存在)、メスという役割(存在)があわさってはじめて、外圧に適応できたし、種をつなぐこともできたのです。

●動物と植物の進化戦略の違い

多細胞化が進むにつれて、大きく動物が歩んできた戦略と、植物(一部の昆虫)が歩んできた戦略とが異なっていきます。
動物は生殖様式を限定化し体細胞の複雑化・高度化を進めます。植物(一部の昆虫)は体細胞の複雑化・高度化を限定化し生殖様式を多様化します。一体、何が違うのか。それは、外圧構造の違いにあります。
動物は動いてエサをとるしかないために、摂食機能を進化させる圧力が強く働き、その進化がさらに種間圧力を強化し、身体機能の高度化(=体細胞系列の高度な機能分化)を促進させるという外圧(循環)構造にあったと考えられます。
言い換えると、動物は、最も負担の大きい生殖過程を分離することによって初めて、体細胞系列を高度に機能分化させていくことが可能になったとも捉えることができます
それに対して、植物は基本的には動かない。光合成により自立的に栄養分をつくり出せるし、生存するために摂取する物質は、水や二酸化炭素等々、自然界に潤沢に存在しています。(植物などに寄生する昆虫もそれに準ずる)
つまり植物は、動物ほど外圧環境(種間圧力)は高くないため、体細胞系列を高度に機能分化する必要がなく、生殖様式の多様化に向かったのです。

List    投稿者 nodayuji | 2009-05-22 | Posted in ⑦なんでや劇場レポート5 Comments » 

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コメント5件

 あれっくちゅ | 2009.07.21 16:09

納豆菌、特に臭いの少ない納豆は、
バクテリオファージに弱いというのは有名だそうですね。
ついつい期限切れの納豆を食べてしまいますが、
臭わない納豆は賞味期限を守らないとヤバイ!

 あれっくちゅ | 2009.07.21 16:09

納豆菌、特に臭いの少ない納豆は、
バクテリオファージに弱いというのは有名だそうですね。
ついつい期限切れの納豆を食べてしまいますが、
臭わない納豆は賞味期限を守らないとヤバイ!

 andy | 2009.07.23 14:02

>あれっくちゅさん
バクテリオファージの特異性(特定の細菌を攻撃する)を活かして、欧米では食品の除菌や細菌感染症の治療薬に実用化されているようですね。
僕は納豆が好きなので、臭いは特に問題ないですが、気にする方は要注意ですね。

 s.tanaka | 2009.07.25 20:24

> バクテリオファージに感染した細菌は、ウイルスがもっていた耐性や
毒性などの遺伝形質を獲得し、より毒性の高い細菌に変異する
確かに、これはウイルスが細菌を“襲う”というよりも、互いに干渉し合って
変異を加速している感じですね。やっぱりウイルスって、生物の切れ端っぽい・・?

 andy | 2009.07.28 15:49

>s.tanaka さん
原核生物などの原始生物ほど、ウイルスによる変異促進を体内に持っているように思えます(プロファージ、プラスミドなど)。
免疫機能を高度化して進化を遂げた生物(人間など)とは対照的です。
この当たりは、さらに調査して記事を書きたいと思います。

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