2009-05-12

最初の脊椎動物ってノロマだったってホント?

Arandaspis.jpg
オルドヴィス紀(約4.7億年前)に生息していた無顎類「アランダスピス」
 今日は、「当ブログの追求テーマ」として掲げられている「①最初の脊椎動物ってノロマだったってホント?」についてです。過去取り上げられたこともあるテーマです が、さらに深めていく切っ掛けとなれば幸いです。
 さて、地球上に初めて現れた脊椎(せきつい)動物は無顎(むがく)類と言われ、オルドヴィス紀(約4.7億年前)に出現した「アランダスピス」のような魚類であると言われています。
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無顎類の最大の特徴は、文字通り口に顎(あご)がないこと。顎のない口は下向きに開き、海底の泥を水とともに吸い込み、鰓孔から排出して有機物を濾し取っていたと考えられています。現在ではヤツメウナギが無顎類に分類されています。
yatsumeunagi.jpgヤツメウナギ
硬骨性の骨板など外骨格は発達していたものの、内部骨格は軟骨でした。鰭(ひれ)もあまり発達しておらず、胸鰭、腹鰭などの対鰭(ついき)は持っていませんでした。体は扁平なものが多く、泳ぎは不得意、つまり本当に「ノロマ」 であったようです。
「アランダスピス」が生息していた当時の海で、覇者として君臨していたのは、頭足類の「エンドセラス」で、最大のものは3メートルに達していました。
endoserasu.JPGエンドセラス
「エンドセラス」は、無顎類などに比べると遙かに進歩した遊泳能力を持ち、「アランダスピス」もこの「エンドセラス」の餌食になっていました。 🙁
そうした逆境にあって、この最古の脊椎動物が採った生き残り策が、ニッチへの進出です。海で生まれ、海に適応した生物が、海を追われて汽水域(川から海へ流れ込む河口付近)へ逃げ込んで適応していくことになります。
ところが、海に適応していた生物が、淡水に適応するためには、様々な問題が発生します。 🙁

●浸透圧

海水中では、脊椎動物体内の方が浸透圧が高い(=水分が体外へ排出されようとする)ため、動物はどんどん海水を飲んで非常に濃い尿を排泄します。一方、淡水中では、体内の浸透圧が低い(=水分が体内へ浸入しようとする)ため、大量の尿を排泄する必要があります。そこで、体内に入ってきた水分を漉して大量の尿を作り出すのが腎臓です。腎臓は海を離れたことによって必要となった臓器」なのです。(と書くといとも簡単にできたように思いますが、腎臓を持った「プテラスピス」が登場するのは、「アランダスピス」が登場してから、なんと6000万年後 です)
puterasupisu.JPGプテラスピス

●ミネラル不足

海水中にはカルシウムなどのミネラルが豊富に存在しますが、淡水中では少量しか存在せず、濃度も常に変動します。生存上必須のミネラルを安定供給するため、無顎類はその貯蔵庫としてリン酸カルシウムからなる硬骨を作りました。硬骨は、リン酸カルシウムで作られていますが、貝殻などの炭酸カルシウムと異なり、リン酸カルシウムはいつでも血液中に溶かすことができるため、硬骨組織をリン酸カルシウムで作ることで、いつでも再利用可能なミネラル源を手に入れることができました。」 😮

●乾燥対策

海と異なり、河川では乾季に干上がる危険性があり、干ばつに対して適応する必要があります。干ばつに直面した魚類は、干上がる前に泥の中にもぐり、肺で呼吸しながら、体表から粘液を出して乾燥を防ぎ、雨季を待ちます(これ乾眠と言います)。この系統が肺魚として現在も当時の姿のまま生き続けています。この肺魚の祖先こそ、空気呼吸をする肺を持ち、水中から陸上に進出して両生類、哺乳類へと進化し、われわれ人類へとつながります。 🙂
なお、「ノロマ」だった当時の無顎類も、胸鰭や腹鰭などの対鰭(ついき)を手に入れ、「ノロマ」の汚名を返上します。その胸鰭や腹鰭がやがて、陸上動物の四足となっていきます。 😀
Hemicy.gif対鰭を持つヘミキクラスピス
参考:「両生類:追い詰められ陸へ上った魚(1)」
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=126605

「魚類の進化」
http://www.mbrij.co.jp/nenpou/shimamoto08.pdf
「海水魚から淡水魚へ」
http://www.biological-j.net/blog/2006/09/000022.html

List    投稿者 blogger0 | 2009-05-12 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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