2009-03-26

生命誕生とチューブリンタンパク質

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(ブタ脳チューブリン、この画像はこちらからお借りしました)
ブログでなんで屋の、3/1劇場会議レポートに生命誕生の段階でチューブリンが重要な役割を果たしたという仮説が紹介されていました。

こうしてできた生命物質は雨によって原始の海に溶け込み、原始スープを形成した。原始スープにごちゃごちゃになって海の中を漂っていた。その中でこれらの物質が反応することによって、中心体原基=生体活性分子は登場した。
中心体原基は、プリンヌクレオチド(ATP・GTP)がアミノ酸を引き寄せチューブリンタンパクとの複合体として形成されたもの。

チューブリンはどんなタンパク質なのでしょうか、そしていつごろ作られたのでしょうか、調べてみました。
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■チューブリンタンパク質と中心体

チューブリンと言われても良く分からない人も多いと思いますので復習です。(詳しくは「なんでや劇場レポート1~中心体が司令塔になれたのは何で~」を御参照ください)
チューブリンが使われているのは、中心体と呼ばれる細胞内小器官です。中心体は、真核細胞が細胞分裂する際に染色体の分裂に先立って分裂し、細胞分裂を誘導することから細胞内の司令塔ではないかと考えられています。
中心体は微小管が27本(3本×9セット)集まって出来ています。そして、この微小管がチューブリンタンパク質から出来ているのです。チューブリンにはαチューブリン・βチューブリンの2種類があり、この二つがくっついて1セットになっています。前の画像では、赤いのがαチューブリン、黄緑色がβチューブリンです。このユニットが螺旋状に積み重なって微小管が出来ているのです。このユニット同士を結び付けているのがヌクレオチドの一つGTPです。
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(微小管模式図、この画像はこちらからお借りしました)

■チューブリンタンパク質のアミノ酸配列

チューブリンタンパク質は、α、βそれぞれが、分子量が5万程度のタンパク質で、アミノ酸が450個ぐらい集まって出来ています。アミノ酸の種類もかなり多く、結構複雑な分子であることが分かります。アミノ酸配列は次の通りです。
 MREIVYIQTGQCGNQIGAAFWQTISGEHGLDSNGIYNGSSELQLERMNVYFNEAS
 NNKYVPRAVLVDLEPGTMDAVRAGPFGQLFRPDNFIFGQSSAGNNWAKGHYTE
 GAELVDQVLDVVRREAEGCDCLQGFQITHSLGGGTGSGMGTLLLSKIREEFPDR
 MMATFSVVPSPKVSDTVVEPYNATLSVHQLVENSDETFCIDNEALYDICMRTLK
 LNNPAYGDLNYLVSAVMSGITTCLRFPGQLNSDLRKLAVNMVPFPRLHFFMVGF
 APLTSPGAHSFRAVTVPELTQQMFDPKNMMAASDFRNGRYLTCCSIFRGKVAM
 KEVEDQMRNVQNKNSTYFVEWIPNNIQTALCAIPPRGLKMSSTFIGNSTSIQELFK
 RVGEQFSAMFRRKAFLHWYTGEGMDEMEFTEAESNMNDLVSEYQQYQEAGIDE
 EEEYEDEAPMEAEE
 (この配列はチューブリンの一次構造決定及びホモロジー解析より引用しました)

■チューブリンはどうやって作られているか

現在、細胞内でチューブリンがどのように作られているか調べると、DNAに遺伝子情報としてコードされており、他のタンパク質と同じようにmRNAとリボソームで細胞質内で作られます。
細胞内のチューブリン濃度が高くなると、チューブリンのmRNAだけを分解するRNaseが活性化しチューブリンは合成されにくくなり、チューブリン濃度が下がるとRNaseが不活性化してチューブリンが合成され、細胞内のチューブリン濃度は、微小管(中心体)が機能するように一定に保たれます。
細胞内にチューブリンタンパク質が常に一定の濃度で確保されているから、中心体は自己組織化することが可能になっています。
中心体はチューブリンがGTPの力を借りて自己組織化していきます。DNAの指令によらず出来上がる器官だと言えます。しかし、その材料であるチューブリンはかなり複雑なタンパク質であり、ヌクレオチドだけで合成するのは難しそうです。

■原核細胞のチューブリン

真性細菌(原核細胞)は、近年までチューブリンタンパクのような細胞骨格は無いと考えられていたようです。しかし、近年ではその存在が確認され、チューブリンホモログ(相同タンパク)と呼ばれています。
代表的なのがチューブリンホモログFtsZタンパク質で、このタンパク質をコードする遺伝子とアミノ酸配列も解明されています。下記がストレプトコッカス族(連鎖球菌)のアミノ酸配列です。リンク
 MTFSFDTAAAQGAVIKVIGVGGGGGNAINRMVDEGVTGVEFIAANTDVQALSSTK
 AETVIQLGPKLTRGLGAGGQPEVGRKAAEESEETLTEAISGADMVFITAGMGGGS
 GTGAAPVIARIAKDLGALTVGVVTRPFGFEGSKRGQFAVEGINQLREHVDTLLIISN
 NNLLEIVDKKTPLLEALSEADNVLRQGVQGITDLITNPGLINLDFADVKTVMANKGN
 ALMGIGIGSGEERVVEAARKAIYSPLLETTIDGAEDVIVNVTGGLDLTLIEAEEASQIV
 NQAAGQGVNIWLGTSIDESMRDEIRVTVVATGVRQDRVEKVVAPQARSATNYRET
 VKPAHSHGFDRHFDMAETVELPKQNPRRLEPTQASAFGDWDLRRESIVRTTDSVV
 SPVERFEAPISQDEDELDTPPFFKNR
 (この配列はこちらから引用しました)
チューブリンホモログFtsZは409個のアミノ酸により構成されており、前回投稿したブタ脳チューブリンの450個と大きくは変わりません。このクラスの複雑なタンパク質は、遺伝子のような設計図がないと同じタンパク質を複製するのは困難であると考えられます。

■古細菌のチューブリン

古細菌ではチューブリンタンパク質を持つ種と、もたない種がいるそうです。以下、ウィキペディア「古細菌の分類」より引用
>D-ファミリーDNAポリメラーゼ、RPA、真核生物型ヒストン、FtsZなどがユリアーキオータのみにしか存在しないという点でも特徴付けられる。
DNAポリメラーゼや、ヒストンと言ったDNA複製に関連するタンパク質と一緒にチューブリンホモログであるFtsZが登場しています。

■チューブリンは生命誕生以降に登場した

今分かっている情報ではチューブリンが登場したのは古細菌の段階のようです。細胞骨格タンパク質は、原核細胞よりも真核細胞でより発達していることからも、チューブリンなどの細胞骨格タンパク質が登場してきたのは生命誕生以降の、比較的遅い段階かもしれません。
遺伝子が登場し、自己複製の可能性が生まれた段階で、同じ遺伝子をきれいに二つに分けるために、細胞骨格=中心体が発達したと考えられます。生命誕生の段階でヌクレオチドとアミノ酸から作られた中心体原基は、チューブリンよりももっと単純なタンパク質だった可能性が高そうです。

List    投稿者 nodayuji | 2009-03-26 | Posted in ①進化・適応の原理3 Comments » 

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コメント3件

 DUNHILL | 2009.05.30 21:16

病原菌やウィルスは、免疫細胞の特徴である『抗原抗体反応』によって新しい変異体が生まれてくると以前の「なんでや劇場」で学びました。
この『抗原抗体反応』と『遺伝子組み換え技術』を実験室に持ち込むのは現代では簡単だと言われています。実際、ワクチンや新薬はそうやってつくられています。
現代人は医療薬の開発と引き換えに、人工的にウィルスや病原菌をつくる技術を発達させてしまったのではないでしょうか。
怖い話ですが、これはどうも事実です。

 ファーブルEYE | 2009.05.30 23:50

くっついたり、離れたりして、ウィルスは増殖していくっていうイメージがよくわかりました。
実際は、宿主側が取り込んだり、吐き出したりしているんですよね?
あとHAがくっついているのをNAが「切る」って、実際どうやっているんですか~?

 エヘン虫 | 2009.05.31 0:38

>そのために、政府はタミフルをたくさん備蓄していますが、既にタミフル耐性、すなわち、オセルタミビルリン酸塩と結合しないNAを持ったインフルエンザウィルスが登場しています。
ノイラミニダーゼ(NA)の発見は1940年代。薬開発の基礎となる結晶化に成功したのが1983年。タミフルが完成したのが1996年。薬ができるまでNA発見から50年も費やしているんですよね。
それが10年もしたら「効かない」とは…
ウィルスとどうつきあっていくか、ちゃんと考えた方がいいのではと思っちゃいます。まずは、ウィルスって何なのか、つまり、その起源あたりからちゃんと押えないといけないような気がします。

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