2009-03-13

なんでや劇場レポート3 第三弾 「地球の安定化」と「生物の進化」、そして「宇宙」の関係性②

さて、レポート3もいよいよ最後です。
第2弾で、地球の安定化は「宇宙の摂理」に反していると、書きました。
本当に地球は「宇宙の摂理」に反しているのでしょうか?
生物との関係性は?更に深く追求してみましょう。
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地球の安定化=「原子スープ・原始大気」と言う高エントロピー状態から、「核・地殻・大気」の層構造=低エントロピー状態への変化を考える上で注目する必要があるのが、「宇宙」との関係性です。
現在宇宙は、「膨張している」と言われ、観測によって事実として確認されています。
(この膨張現象を説明する理論は「インフレーション理論」と呼ばれており、有名なビッグバン理論が孕んでいた矛盾性をクリアした理論として有名です。現在の宇宙論の主流を占めています)
話があまりにややこしいので、詳細は省きますが、宇宙は素粒子の「ゆらぎ」によって生まれた超高密度エネルギーが一気に爆発(所謂ビッグバン)したことで誕生したと考えられており、この爆発したエネルギーがひたすら膨張して行っているのが、現在までの宇宙であり、これからも膨張は続いていきます。
詳細はこちら
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宇宙の膨張イメージ
画像はこちらからお借りしました
爆発エネルギーによって生じた膨大なエネルギーの膨張過程における”衝突”や”偏り”が恒星や惑星を生んでいきます(地球が生まれたのも、この過程の一つです)が、基本的には熱力学第2法則に基づいて、宇宙は膨張しながら、均質化して行っている(=エントロピーが増大していっている)と考えられています。
例えるなら、今現在の宇宙は”宇宙”と言う水の中に”星”と言う氷が浮いている状態で、最終的には”星”と言う氷も全て溶けて完全に均質なエネルギー状態・物質状態になると言うことです。
膨張しているのは、コップに入っていた水がこぼれて、極限まで薄くなりながら広がっていくイメージでしょうか。(なお、完全に均質化すると、宇宙の温度は絶対零度となり、全ての物質活動がストップすると考えられています。(熱力学第三法則))
ちなみに、宇宙は開放系(どこか外に繋がった空間)なのか、閉鎖系(閉じた空間)なのか、物理学会では議論が続いていますが、どうやら「閉鎖系」と考えるのが辻褄があうようです。なので、宇宙が膨張していると言っても、宇宙全体に存在するエネルギーの総和は一定(熱力学第一法則)です。
この宇宙の構造を押さえた上で、話を「地球の安定化」に戻します。
先ほど、地球の「安定化」は熱力学第二法則=「宇宙の摂理」に反していることになると書きましたが、これは地球を「閉じた空間(閉鎖系)」として考えた場合の話です。現実には、地球は「宇宙に対して開放系」で、地球のエネルギーは常に宇宙空間へと放出されています。
地球はエネルギーを太陽から受け取り、同時に取り入れられた太陽エネルギーを放熱することで熱収支を行っています(これも熱力学第一法則(エネルギー保存則))が、最近の地球物理学・地熱学等の発達によって、地球は太陽から得たエネルギーより、少し多くのエネルギーを放出していることが解ってきました。
ここで放出されている、+α分のエネルギーこそ、微惑星・隕石の衝突・集積・合体によって生み出された、地球誕生時のエネルギーなのです。つまり、地球は太陽から熱をもらって、その熱を宇宙に反す以上に、地球の内在エネルギーを放出しており「ゆっくりと冷えて行っている」と言うことです。
この、宇宙空間に対する地球内在エネルギーの放出こそが、地球安定化の原因なのです。
熱は常に高温から低温へと流れて均質化する→エントロピーが増大すると言うのが、熱力学第二法則です。
これを「地球」と「宇宙」の関係に置き換えてみれば、「高温」である地球から、「低温」である宇宙へと熱エネルギーが流れており、宇宙全体として見れば、エネルギーが均質化する方向=エントロピーが増大する方向へと向かっているのです
もし、地球に重力がなければ、物質も全て宇宙に流出していき、宇宙の均質化へと向かうところですが、重力によって物質は地球上にとどめられています。宇宙の均質化=エントロピー増大に向かって、エネルギーのみが地球から放出され、物質は重力によって地球上に留められたと言ってもよいかもしれません。
かなりややこしいですが、宇宙が膨張しながら均質化=エントロピーを増大させているからこそ、(高温である)地球から熱エネルギーが放出されていき、結果として地球が冷えていく。
冷えていくから、地球上の物質は組織化(≒固体化)していく=(環境的)安定化

地球の安定化は、このような構造になっている訳です。
(なお、地球だけを見れば、見かけ上エントロピーが減少しているように見えますが、先述したように地球は宇宙に対する開放系なので、その見方は意味が有りません。宇宙全体で見れば、均質化=エントロピー増大の方向に向かっているので、熱力学が成立しています)
さて、最後に「生物」に関して考えて見ます。
劇場レポートのまとめに書いたように、生物は生体膜による「濃縮型内部空間」を構築することで、生命そのものを「高エネルギーの蓄積場+反応系」として構築し、地球の安定化と言うベクトルに適応してきました。
先述したように「地球の(環境的)安定化」とは「宇宙空間へのエネルギー放出」ですから、生物の”適応”とは、エネルギー放出によって、低下していくエネルギー場(=地球)への適応と言うことが出来ます。
生物は、高度な生物になればなるほど、体内に高度な(エネルギー)反応系を持っています。
これらの生体エネルギーを集約すると膨大なエネルギー量になりますが、生命は①生体内にエネルギーを蓄積し、②蓄積したエネルギーを複雑な反応経路で反応させることで、低下していくエネルギー場の中でも効率的かつ膨大なエネルギーを生産することに成功したとも言えます。
そう言う意味で、生物の「進化」とは生体内へのエネルギー蓄積量の増大と、効率的な反応経路(燃焼回路)の獲得とも言え、生物とは、生体エネルギーの増大=内圧上昇と言う可能性収束の実現体と言えると思います。
また、「宇宙」と「生物」の関係性を見ると、非常に面白い構造に気が付きます。
生物の体を構築している、タンパク質やヌクレオチドは高度に組織化された高分子ですから、「低エントロピー状態」の物質と言えます。
加えて、生物は進化すればするほど、細胞が組織化され、さらに群体→多細胞→群れ→社会と言う具合に高度に組織化されていきます。これらは全て更なる「低エントロピー」に向かうベクトルです。
このことから「進化」とは「低エントロピー状態の構築」とも言える訳ですが、この「低エントロピー状態の構築」は、宇宙空間が膨張しながら均質化=「高エントロピー状態」へと向かうことによって、必然構造として生み出された。
そのように考えると、「宇宙」にとって「生物」が生まれるのはやはり「必然構造」だったのだと感じる一方、「生物」とは「宇宙の均質化」に抗う存在ではないかとも感じられます。
生物を考える場合、「安定」と「変異」の関係性は非常に重要ですが、「均質化」=「安定化」が進んで行く宇宙において、生物とは最大の「組織化」存在であり「変異」存在であると言うことも出来るかもしれません。
仮説としては、宇宙は決して「均質化」のベクトルが主ではなく、「均質化」=「安定化」の中で「組織化」と「変異」を生み出していくベクトルが存在している、だからこそ、「必然構造」として、生物は「変異」を生み出し、「組織化」を進める方向へと進化してきたのではないかと考えています。
参考 「生命の起源・地球が書いたシナリオ」 著者: 中沢弘基
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List    投稿者 crz2316 | 2009-03-13 | Posted in ⑦なんでや劇場レポートNo Comments » 

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