2009-02-20

メッセンジャーRNAとリボソームRNAは「SD配列」で相互を認識する

また、細菌では、開始コドンの読み取りにRNAの塩基対方式を利用しているのが興味深いですね。
(一昨日のarincoさんの記事

この部分の塩基配列は「シャイン・ダルガーノ配列(SD配列)」と呼ばれています。SD配列とはどういうものか、今回はこれを紹介したいと思います。
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■原核生物のリボソームとタンパク合成
原核生物も真核生物と同じように、リボソームでタンパク質合成が行われます。詳しくは一昨日のarincoさんの記事参照ですが、その様子は下図。

ribosome.png
図はこちらよりお借りしました

ブルーとピンクの楕円が原核生物のリボソーム。「50S」「30S」という大きさで表される大小二つの部品(サブユニット)でできています。それぞれの部品の材料は、リボソームRNA(rRNA)とタンパク質が半々ほど。rRNAは細胞で最も巨大な(=塩基対が多く長い)RNAです。
A、P、E、という記号はリボソームに開いたtRNA受入用の“穴”。タンパク合成の過程は、
①小サブユニットがメッセンジャーRNA(mRNA)の情報をコドン(3塩基)ごとに読む。
②対応するアミノ酸を引き連れた転移RNA(tRNA)が大サブユニットの“穴A”に入る。
③隣の“穴P”に既に入っているtRNAからアミノ酸の鎖が移動し、“穴A”のアミノ酸と連結。
④リボソームが(図では左に)移動し“穴A”は再び空に。
→以下繰り返しです。
この反応の一番最初にあたるのが、mRNAとリボソームRNAの会合で、ここに、シャイン・ダルガーノ配列が関与します。
■シャイン・ダルガーノ配列(SD配列)とは何か?

 1974年にオーストラリアのJ・シャインとL・ダルガーノは、バクテリアに感染するバクテリオファージのmRNAが、開始コドンの上流にプリンに富んだ配列を共通に持つことを見出しました。さらに、30Sサブユニットの主成分である16S リボソームRNA(rRNA)が、3’末端に相補的な配列を持つことから、両者が塩基対を形成して結合することにより、mRNAを鋳型としたタンパク質の生合成が促進される、という仮説を提案しました。その後、この仮説は多くの科学者によって証明され、これらの配列は発見者の名前から、mRNA側がシャイン・ダルガーノ(SD)配列、16S rRNA側がアンチ・シャイン・ダルガーノ(anti-SD)配列と呼ばれています

shine-dalgarno.png
上の引用と図は同じくこちらよりお借りしました

つまり、原核生物の全ての遺伝子のmRNAと、rRNAは、対をつくることのできる7塩基部分をお互い持っていて、これがタンパク合成のスタートになっているということ。即ちSD配列が相互のRNAの認識装置として機能しているということです。
とても興味深いのは、一方が全てアデニン(A)、グアニン(G)のプリン塩基、一方がシトシン(C)、ウラシル(U)のピリミジン塩基で構成されていること。
ただ、この理由は分かりません・・・・・
■DNAからRNAが読まれるのではなく、RNAの集合体がDNA
ここで、原核生物のゲノムを考えてみます。下の図はミトコンドリアDNAの遺伝子構成ですが、原核生物も同じような一本の環状DNAです。
mtDNA.gif
図はこちらよりお借りしました

上図にあるように、リボソームRNA(rRNA)も転移RNA(tRNA)も現在では環状DNAから読み取られます。その他の部分から読み取られたのがメッセンジャーRNA(mRNA)です。
輪っかの様々な部分から読み取られる原核生物のmRNAは、SD配列という“頭”を共通に持つ同類RNAということになります。そして、SD配列を目印にしてmRNAとrRNAが結びつき、さらにコドンを目印にしてtRNAがアミノ酸を運んでくる。見事なメカニズムです。
こうして見ると、「DNAからRNAが読み取られる」という、RNAがDNAの部品、一部であるような言い方は、あまり正しくないように思えてきます。
もともとは、協働してタンパク質を合成していた「アミノ酸との結合力を持つRNA(→tRNA)」「アミノ酸連結の触媒機能を持つRNA(→rRNA)」「必要なアミノ酸情報を持つRNA群(→mRNA)」たちが、保存性を高めるために後から寄せ集まったものがDNAである、という方が、より生命の本質に近い捉え方なのではないでしょうか?

List    投稿者 s.tanaka | 2009-02-20 | Posted in ①進化・適応の原理1 Comment » 

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コメント1件

 hayabusa | 2009.05.02 22:36

先祖がえりに関する遺伝的説明に対して。なるほど。納得です。
劣勢+劣勢の交配が促進される特殊な環境が人類誕生の前提にあるという点は、哺乳類の中で見たヒトの特殊性にも通じるところですね。つまり、環境的特殊性が、特異な種を生み出した、という解釈です。
推測するに、劣勢+劣勢の交配が促進される特殊な環境に置かれるサルというのは、特殊な(不利な)環境に「追われた」サルなのではないでしょうか?平たく言うと「負け組」です。
おおよそ全ての生物は、自らすすんで特殊な(不利な)環境に行くことはありません。孤立するというのは、何らかの理由で孤立せざるを得ない状況に追い込まれた、と考えた方が妥当性がありそう。すると、それって、追われたということか?と思うわけです。
いかがでしょうか?

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