2009-02-12

セロトニンが突然変異を引き起こす?

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セロトニンという物質を知っていますか? 🙂
 
セロトニンは分泌を増すことで、ノルアドレナリンの不快感を抑えてくれます。
出すぎているノルアドレナリンの量を減らす働きがあるため、ストレスがたまっているときに温泉に入ったりすると「あ~」と強く癒されるのは、セロトニンが増え、高まっていたノルアドレナリンが一気に減らされるためです。
また、セロトニンは出すぎたドーパミンを減らす働きも持っています。そのため、強まった快感が弱まり、落ち着くことで、「もう満足」と行動にブレーキがかかります。
 
セロトニン神経がしっかりしている限りは、不安が不安として意識されず、恐怖も感じられない。
ところが、セロトニンが不足したり、傷害されると、不安や恐怖を克服させるものがなくなり、他人では考えられないようなちょっとした苦しみや失敗で自殺したりするようになる、感情にブレーキがかからず、快楽行為が止められなくなる、といわれています。
★驚異のセロトニン★
 
ところでこのセロトニンが、ある昆虫を突如大群に発生させるスイッチホルモンとして働いていることが最近の研究で明らかにされました。
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その昆虫とはバッタです。
中国のトノサマバッタの大量発生とその広大な被害が有名です。中国ではこの現象を蝗害(こうがい) 😈 と呼びます。 そもそも【蝗】の字は農作物を襲う蝗の惨害をどう防ぐか、救うかに「皇」帝の命がかかっているというので虫へんに皇と書くとする説があるほどで、政治と蝗害は密接に関わってきたといわれています。
 
ところでこの大量発生の生物学的メカニズムは、普段の「孤独相」と呼ばれる体から、 「群生相」と呼ばれる移動に適した体に変化する相変異(=突然変異)によるものといわれています。
現象的には食糧不足などの環境の変化にともない、孤独相⇒集団化(群れる)することが知られていますが、生物学的変化が起こる仕組みについては専門家の中でも答えの出ない領域でした。
それが今回、英国の専門家チームによる研究でその仕組みが解明されました。
バッタが群れとなる原因は脳内物質セロトニン、英研究

英国の専門家チームは、バッタが孤独相から群生相に相転換するのは、脳内の神経伝達物質セロトニンが原因であることを突き止めた。29日の米科学誌「サイエンス(Science)」で発表された。
バッタの後ろ脚をくすぐると、2時間後、そのバッタは、作物を食い尽くす巨大な群れを構成する一員となる準備が整う。これは、脚をくすぐって刺激するのは、通常1匹で行動するバッタが、食糧不足のために集団にならざるを得ない状況でぶつかり合うのと同じ状況を作り出すことになるためだが、研究者らは群れを作る理由は分かってはいたものの、急激な生物学的変化が起こる仕組みについては  90年間  も頭を悩ませていた。
 
研究論文の共同執筆者、ケンブリッジ大学(Cambridge University)のSwidbert Ott氏は、「セロトニンは脳内の化学物質で、人間の行動や他者とのかかわりに大きく影響を及ぼすものだが、これと同じ化学物質が、内気で孤独を好む昆虫を大集団に団結させるのを知るのは驚きだ」と語った。
研究結果によると、セロトニンが、個々のバッタを敵対関係から引きつけ合うように変えるという。また、群生相のバッタのセロトニン水準は孤独相のバッタより3倍高いことも判明した。
 
いったん群生相に相転換すると、緑色だったバッタは鮮やかな黄色に変わり、筋肉も増強して長時間の飛行や仲間の活動的な捜索が可能となる。数十億匹規模の大集団となって、餌を探して約100キロメートルの距離を5-8時間飛ぶこともできるという。
だが、孤独相のバッタにセロトニンの生成を抑制する物質を注入すると、そのバッタは落ち着いたままで、後ろ脚を刺激したり群れが現れても群生相には転換しなかった。一方、セロトニンの分泌を刺激する物質を注入されたバッタは、きっかけとなる刺激がなくても群生相へと変形したという。

孤独相から群生相に移り変わるだけでなく、体力も3倍程度にまで上昇 するとは驚きです。
そしてこの変化のスイッチを入れるのがセロトニン物質にあると解明されました。
冒頭に紹介したセロトニンの効果との関連を考えると、集団化による安心感(不安捨象?)が肉体改造まで一気に引き起こすのではないでしょうか。
しかし3倍という上昇は遺伝子を組み替えるなどの突然変異が短期間の中で行われない限り実現されるオーダーではありません。
安定の機構を担っているDNAも突然変異を起こすリスクと可能性と紙一重なのだと思います。

List    投稿者 chai-nom | 2009-02-12 | Posted in ①進化・適応の原理2 Comments » 

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コメント2件

 kawai | 2009.04.25 19:18

ここまでべったりと共存しているって、すごいですね!
でも、良く考えたら我々人類も含めて、地球上の生物は全てなんらかの繋がりをもっている訳ですから、このような共生の仕組みを構造的に理解して行く事はとても重要な気がしました。

 通りすがり | 2017.11.28 18:57

私はオキシトシンなのではないかと思ってました

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