一つの遺伝子から多様なタンパク質がつくられる
以前「遺伝子が全く一緒の双子が顔がちょっと違うのはなんで?~DNAがすべてをきめるわけじゃない!」というエントリーがありましたが、そのヒントは多種多様なRNA型(トランスクリプトーム)と多種多様なタンパク質型(プロテオーム)にあるようです。
<ヒトX染色体の地図:ウィキペディアより引用>
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●ひとつの遺伝子型から多種多様な表現型の発現が可能
>ヒトは30,000程度の蛋白質をコードする遺伝子で、30万あまりとも考えられる蛋白質の多様性をもっており、おもにこの仕組みはmRNAの選択的スプライシングにあることが鮮明となっている。つまり、われわれの細胞は1つの遺伝子から2つ以上、ときには数十に及ぶ機能の異なる蛋白質をつくり出すことができる。
>この蛋白質の多様性はmRNAの多様性の反映であり、mRNAの発現およびその多様性は、細胞の違いやおかれた環境の違いにより変化することも知られている。したがって、ひとつの遺伝子型から多種多様なRNA型(トランスクリプトーム、またはリボタイプ)がつくられ、これらRNA型から多種多様な蛋白質型(プロテオーム)が形成され、最終的にひとつの遺伝子型から多種多様な表現型の発現が可能になっていると考えられる。
<リンクより引用>
●ncRNAの多さがタンパク質の多様さに寄与している
>ヒトの遺伝子は二万二千。一方、線虫は一万九千、ショウジョウバエの場合も二万と、遺伝子数はさほど変わらない。これでは人間の高等さは説明できないし、十万種以上といわれるたんぱく質の数にも対応していない。
>これを一部説明するのは、一つの遺伝子から、エキソンの組み合わせによって複数のたんぱく質ができる「選択的スプライシング」だが、もう一つのカギはncRNA(ノンコーディングRNA)である可能性が高いのだ。
>ncRNAは、DNAの一部の転写物ではあるが、たんぱく質の情報を運んでいないRNA分子のことだ。
>遺伝子部分はヒトの場合でも全DNA配列中わずか2%程度。しかも、転写されるがたんぱく質をコードしない領域の全ゲノムに対する比率は、大腸菌1%、パン酵母10%、線虫30%と高等になるほど高くなり、ヒトの場合は43%。ncRNAの多さがヒトの高等さに寄与していることが明らかになったのです
<リンクより引用>
●考察
・DNA→mRNA→タンパク質の形成プロセスでは、一つの遺伝子から一つのタンパク質がつくられると思われがちだが、実は違っていて、一つの遺伝子から多様なタンパク質がつくられる。
・タンパク質をコードする遺伝子の数が、必ずしもタンパク質の多様さを生み出すわけではない。おそらく、タンパク質の多様さは、ノンコーディング領域におけるDNA情報の発現制御システムの高度さに拠っている。
・ノンコーディング領域は、エピジェネティクスにおいて重要な役割を果たしており、ncRNAがDNA情報発現の制御因子ではないかとの仮説も出されている。
※mRNAの選択的スプライシングによって多様なタンパク質がつくられるというのも、選択的スプライシングの多様性が、ncRNAによるDNA情報の発現制御システムに拠っているからではないだろうか?
・遺伝子が全く同じである双子でも顔がちょっと違うのも、一つの遺伝子から多様なタンパク質がつくられるからである。DNA情報の発現制御システムは、置かれた外圧状況によって違ったタンパク質をつくることができる仕組みになっているのだと考えられる。
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コメント2件
一生物学徒の社会勉強 | 2012.02.05 2:41
ダーウィン進化論の精髄
およそほとんどすべての人が知的好奇心を駆り立てられる問題の一つが生物進化の謎だ。
私は進化生物学の専門家ではないが、一般教養の範囲で話をしていきたい。
…
yukie | 2009.04.07 21:40
>言うまでも無く、進化原理とは歴史構造の最も根底的な位置にある。認識パラダイムの転換とは、とりわけ進化論においては全面的な書き換えに繋がるものとなるだろう。<
当たり前ですが、生物の摂理である進化論もその当時の認識パラダイムに影響されるんですよね~。進化自体がキリスト教世界では受け入れられなかったり…(ありえないと思うのですが…)