2009-01-03

丑年です。ウシの話あれこれ

あけましておめでとうございます。去年の正月の記事では子(ネズミ)の話をしたので、今年は丑(ウシ)の話を。写真はギネスブックに記録されている、世界一ツノの大きなウシ(African watusiという種)。合成写真ではないです。

lurch-kid.jpg

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■「ツノ」って何?
信じられない大きさのツノもあるものですね。ところで、牛はなんで角があるんでしょう?

哺乳類の角の役割は、まず武器であると考えられる。
(中略)現生の哺乳類の角は骨が変化した器官であるものが多く、主に草食動物に見られる。雄で発達している例が多く、敵に対する武器として、また同種間の争いに使われる。特に反芻動物などが持つことが多く、ぶつけ合ってメスや餌場を取り合う。

主に草食動物、というところがポイントなのでしょう。肉食動物のように鋭い牙や爪による攻撃力を持たない草食動物にとって、専ら逃げるための四肢以外に、何か対敵闘争や性闘争の武器が絶対に必要だった。そこで、角の有無や機能が、草食動物の進化上の大きな選択圧となったのではないでしょうか。
■クジラが親戚
従来、牛の生物学上の分類は、哺乳綱ウシ目または偶蹄(ぐうてい)目。「偶蹄目」とはその名の通り、中指と薬指のツメが変化した2つ(=偶数)に割れた蹄(ひづめ)を持つ哺乳類の仲間で、ウシの他にカバ、ブタ、ラクダ、キリン、シカなどがいます。同じ蹄でも、ウマやサイは中指のツメ1本(=奇数)だけが発達し、これを「奇蹄目」といいます。
ところで、最近この偶蹄目という分類名称が「鯨偶蹄目」に変わったそうです。哺乳類の中でも、その進化系統上の位置がはっきりしていなかったクジラ・イルカ類が、DNA分析から晴れて牛たちと同じ(クジラ類に最も近いのはカバ)と認められたため。
■牛が栄養にしているのは、牧草ではない?
ウシといえばやはり『反芻』。その胃袋は4つに分かれ、腹腔全体の3/4を占めています。胃液の出る本物の胃は第四胃で、第一~第三胃は食道が変化したもの。ちなみに焼肉でいうミノが第一胃、ハチノスが第二胃、センマイが第三胃。特徴的なのは、“ルーメン”とも呼ばれる、160リットルもの巨大な容量を持つ第一胃です。
rumen.bmpbovine0111.jpg

ウシの胃袋はこんなに大きい

ウシは、この第一胃の中に60種類以上の細菌と90種類以上の原生生物(真核単細胞生物)を大量に飼っています。牧草を食べたウシは、この第一胃と口との間で反芻を繰り返しながら、これらの微生物に牧草の繊維質(セルロース)を糖(グルコース)に分解させ、ある程度消化が進むと先の胃へ送り、最終的に第四胃で体内に吸収します。哺乳類は、直接繊維質を消化する酵素を持っていないからです。(参考
ところが、このセルロースは、殆んどが胃中の微生物によって消費されてしまいます。ウシが栄養分として吸収しているのは、食べている牧草の分解物ではなく、微生物が生成した発酵産物と、胃の中で牧草を栄養にして増殖した微生物そのものなのです。
■地球温暖化騒ぎの被害者?
さて、このウシの反芻行為が、最近、思わぬところで問題とされ始めまています。ウシなど反芻動物の胃中に住む微生物の中にはメタン生成菌という古細菌がいて、繊維質分解の際に生成されるメタンが「げっぷ」 になって排出されます。メタンは二酸化炭素の20倍以上の温室効果があり、この家畜たちが排出するげっぷが世界全体の温室効果ガスの5%を占めると言われ始めたのです(アルゼンチンではこれが30%だとか)。そこで、
ウシの背中に袋を背負わせてメタンを回収しよう!」とか、
げっぷからメタンを除去できるエサを開発したら?」とか、
そもそも肉食を減らせば地球温暖化を防止することができるのさ。」とか、
じゃあ、ウシの代わりにカンガルーの肉を食べることにしようよ。」とか、

結構大騒ぎしています。ウシにしてみれば「お前らの息、何とかしろ」と言われているようなもの。そもそも科学的根拠の曖昧さと政治色の強さが指摘され始めた地球温暖化狂想曲 に巻き込まれて、ウシも気の毒なことですね・・・

狡賢いネズミに騙されて、十二支の二番手に甘んじた真面目な努力型のウシ(十二支の話)。このブログでも、本年はさらに真摯に、勤勉に、生物史の事実と自然の摂理を追求していきたいと思います。そして、来年は寅(トラ)の話をします。・・・・多分(笑)

List    投稿者 s.tanaka | 2009-01-03 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 さんぽ☆ | 2009.02.16 18:55

>微小管線路に乗っている時だけ、輸送の仕事をします。線路に乗っていない時は、無駄な足踏みをしてエネルギーの無駄遣いをしないようになっています。
その他にも、かなり精巧かつ無駄のない動きをしているのですね!!
その仕組みのすごさにびっくりしました!!

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