2009-01-02

原核生物の指令塔は膜に存在する

大腸菌を巨大化させるという面白い実験がある。
巨大微生物に何を語らせるか」より
その結果から、大腸菌の代謝⇔分裂(生殖)のサイクルは分裂により制御されており、その統合主体は細胞壁と外膜あたりに存在するらしいことがわかる。(下図参照)
※代謝:栄養物を取り込み、必要な物質に合成すること。
daichoukin.bmp
(大腸菌を含むグラム陽性菌の図)
まず、巨大な大腸菌の作り方です。
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巨大大腸菌の作り方です。
まず、細胞外膜や細胞壁を作れないようにした大腸菌(内膜だけの大腸菌)を用意し、培養する。
以上、それだけ。
すると、大腸菌は分裂をしなくなる(できなくなる)。
しかし代謝はし続けるので、巨大化する。要は肥満体になっていく。
(高い栄養状態を維持しているので代謝し続けるが、栄養をなくせば代謝もやめるはず。)
■以上の実験からわかることは、
大腸菌は細胞壁と外膜がないと分裂できないということ。すなわち、分裂を司る物質は細胞壁と外膜のあたりに存在しているのではないかということ。
(補足:大腸菌の分裂はFtsZというタンパク質(真核細胞の微小管に構造が似ている)がリングをつくりこれが絞り込んでいくことで細胞をちょん切っている。この物質は細胞膜や細胞壁付近にある細胞骨格に附帯して存在している。FtsZは代謝の中で合成可能なことから考えると、上記の結果は、そのFtsZの合成や挙動に指令を出す物質が、細胞壁・外膜付近に存在し、それが機能しなくなったことを意味しているのだろう。)
大腸菌は分裂するか・しないかに関わらず、栄養状態さえよければ代謝をし続ける。代謝のシステムの中に分裂を認知し制御する機能がない。つまり、代謝⇔分裂は分裂の機構の中に統合機能がある。もし代謝の側でコントロールしているのなら、分裂が起こらないことをもって代謝をやめるはずだ。
大腸菌の代謝⇔分裂のイメージは、栄養状態が良けれえば栄養をとり続けて肥満体になってしまう細胞を、タイミングよく真ん中でせっせとちょん切っていくことで、似たような大腸菌をたくさん作り続けることができている、ということのようだ。
(補足:現に大腸菌は、分裂しきる前に、二つに分かれようとしている各々の部分で染色体の複製が始まっていたりする。見た目には、分裂が終わる前に次の分裂が始まっている感じ。)
■また、面白いことに、この巨大大腸菌には、細胞質内に小胞体や液胞のような小器官のようなもの(プロ液胞)が出現する。この膜を調べると、機能的には内膜と同じで、内膜を反転したかたちになっている。(原核細胞には膜を持つ小器官は無いと言われている)
dachoukin.bmp
(図のAが巨大大腸菌。その中央部に白く見えるのがプロ液胞。Bが普通の大腸菌。写真右下の黒いバーが1μmのスケール)
単純なモデルを考えれば、内膜が内側に伸びて膨らむように大きくなり、くびれ部分が大きさに耐え切れなくて切れて分離した、ようなイメージではないだろうか。
これが細胞質の大半を占めると、染色体(核様態)は周辺に押しやられてしまう。
なぜそのような膜ができるのか?
レポートでは言及されていない。
表面積が効率化され、膜が過剰になっていくからか。(分裂するのに比べて8割程度の表面積で済み、代謝のたびに膜が2割ずつ過剰になっていくことになる。しかしそれにしては膜が少ない。)
外圧と内圧のバランスを保つためか。
内容物の大きさに比べて膜の強度が不足していくためか。
■さらに、面白いことに、この巨大大腸菌は球状をしている。
通常大腸菌は細長い形状をしている。内膜だけにすると球状になってしまうらしい。これは、大腸菌の形状をつくっている細胞骨格:MreBが形成できなくなったことを意味するのではないだろうか。
■上記MreBも前述のFtsZも細胞骨格物質(チューブリンやアクチン)でできており、染色体の移動や細胞の分裂に関与している。膜を無くすことで、それらの生成や配置の指令塔が存在しなくなったのではないだろうか。
つまり、細胞の分裂や染色体の移動・分配の指令塔は膜にいるのではないだろうか。

List    投稿者 kumana | 2009-01-02 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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