2008-12-20

中心体はRNA・DNA登場以前の原始的複製機構では?

centriole.jpg
この画像は鞭毛基部体(中心子)構築の研究からお借りしました
中心子(centriole)は中心体に含まれるオルガネラで、微小管構造の形成に重要な働きをしています(図1)。9組の3連微小管が円筒状に並んだこの構造は、既存のものから出芽するように新しいものが形成されます。この不思議な自己複製の機構は全く未解明で、細胞生物学の最大の謎とされています。中心子だけでも約200種類の蛋白質が含まれていますので、形成機構を研究するには突然変異株を用いる方法が有効です。しかし、多細胞の動物では、中心子を欠いた突然変異株は生存できないという大きな問題があります。( 鞭毛基部体(中心子)構築の研究から引用)
中心体の複製機構を調べていると、明確な複製機構が存在せず、数多くのタンパク質が有機的に関係している様子が浮かび上がってきます。この仕組みを調べているうちに中心体の複製機構は、RNA・DNAといった高度なタンパク質合成過程以前の、原始的な複製機構の名残ではないかと思えてきました。
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まず最初に、中心体の複製機構について研究されている方々の論文をいくつか紹介します。

中心体
『こうした中心体研究の中でも特筆すべき事柄は、γ- チューブリンの発見である。γ-チューブリンは55kDa のタンパク質で、細胞質中で他のタンパク質とともに25S γ- ゾームというコンプレックスとして存在し、中心体からの微小管伸長の担い手であることが明らかになった。そして、中心体構成タンパク質が次々に明らかになるなかで、γ- チューブリンをはじめとする数種のタンパク質が、中心小体を持たない陸上植物特有の微小管構造にも観察された。このような中心小体を含む中心体構成タンパク質と中心小体を含まない微小管形成中心(MTOC)に存在するタンパク質の共通性や、中心小体単独ではMTOC にはなり得ないということから、MTOC における中心小体の必要性が改めて問い直されている。』

中心体複製機構
『1999年CDK2-サイクリンEがDNA複製と中心体複製の開始を同調していることが相次いで報告されました。これを受けて、我々は中心体上にあるNucleophosmin (NPM)という蛋白がCDK2-サイクリンEによるリン酸化を受けて中心体から離れることにより中心体複製が開始されることを明らかにしました。面白いことにNPMは有糸分裂時に再び中心体上に戻ることによって、分裂後の娘細胞の中心体がNPMを持つようになり、NPMが中心体複製におけるある種のライセンス因子である可能性が明らかとなりました。』

中心体周辺物質の構成蛋白の同定と中心子複製への関与
『有核細胞には,様々な種類のオルガネラが存在するが,中心体周辺物質と 繊維状顆粒は未同定であった。我々は中心体周辺物質を構成する蛋白としてPCM-1蛋白を初めて同定した。繊毛形成時に出現するとされていた繊維状顆粒が,実は成熟した繊毛上皮細胞の基底小体付近にも存在する事を示し,中心体周辺物質と同じくPCM-1蛋白が局在することを示した。これらの結果から,我々は中心体周辺物質と繊維状顆粒が,PCM-1を構成蛋白とする,同一の新しい非膜系オルガネラであると提唱した。次に,中心体周辺物質ダイニン依存性に微小管上を微小管マイナス端方向に運動し,結果として中心体付近に集積することを示した。中心体周辺物質の機能は明らかでないが繊維状顆粒と同一のオルガネラであると考えられること,繊維状顆粒が繊毛形成に先立つ同時多発的中心子複製時に著明に増加すること,などを考えあわせると,中心体周辺物質が中心子複製に関わることが推察される。』

■中心体複製機構は数多くのタンパク質が協働する非膜系オルガネラ
ここにあげただけでも、γ- チューブリン、Nucleophosmin (NPM)、PCM-1といった中心体複製の重要なタンパク質があり、それらが単独で働くのではなく、25S γ- ゾームというコンプレックス、CDK2-サイクリンEによるリン酸化を受けて、PCM-1を構成蛋白とする同一の新しい非膜系オルガネラ、として働いていることが示されています。

■タンパク質が協働する非膜系オルガネラって何?
膜系オルガネラは、膜に包まれた細胞内の器官の事で、核やミトコンドリア、葉緑体、小胞体、ゴルジ体などがあります。これらは細胞が原核細胞から、真核細胞に進化する過程で獲得した高度な細胞内機関です。
それに対して、皮膜系オルガネラは膜に包まれていないけれど、タンパク質等の物質が相互に関連しながら、細胞を上手く機能させる役割を担っている部分です。原核細胞は細胞膜以外は膜を持っていませんので、複雑な生命活動を細胞内で行っていますが、様々な生命活動は細胞内で明確に分離されること無く、あちこちで同時進行的に行われています。中心体は、そうした非膜系のオルガネラの一種というわけです。

■なぜ、中心体がRNA・DNAより古いオルガネラか
生命の誕生を想定すると、原始的な細胞は外界と隔てる膜と、外界から有機物を取り入れる入り口と、膜の中で有機物を合成する化学反応系で出来上がっていたと思われます。
そして、初期生命は厳密に同じものを複製していたわけではなく、膜内の化学反応系で色んなものを作って、それが増えると適当に分裂すると言う状態だったと思われます。アミノ酸とタンパク質が自分たちを触媒にしながら、自己増殖していた。
この段階では、正確なタンパク質の設計図がありませんから、最初は上手く同じタンパク質はつくれなかったでしょうが、様々な反応を組み合わせることで、比較的単純なタンパク質であれば、自己複製できるところまで進化したと思われます。中心体も螺旋状にタンパク質をつなぎあわせた幾何学的形態であり、自己複製が可能になったと考えられます。
どんなに複雑なタンパク質も、正確に同じタンパク質を複製できるRNAや、RNAを正確に複製できるDNAが出来たのは、さらに生命が進歩してからで、それまでは中心体のようなタンパク質複合体が、細胞複製機構の主役だったのではないでしょうか。
細胞がこのような形で進化してきたのであれば、中心体以外にも、細胞内では様々な物質が作られており、その一部はRNAやDNAに依存せずに、細胞質で独自に作っていると考えられます。

List    投稿者 nodayuji | 2008-12-20 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 tsuji1 | 2009.01.23 3:25

和洋折衷が血管に最悪の組み合わせだとは…。
塩分が濃いと水分も増え、より多くの血液をポンプアップするために血圧が上がり、心臓の負担が増えると聞いたことがあります。
血管が10倍の圧力に耐えられるのも驚きですが、動物性脂肪が血管を破れやすくするのはなぜなのでしょうね。

 GORO USUI | 2011.02.11 19:30

水撒きのホースが捻じれたら、どうなりますか?
捻じれの先は水流が遮断されたり(脳梗塞)、捻じれの手前は水圧が高まりホースが破裂します(脳出血)。
臓器別縦割りの現代医学では頚部をただの通り道と捉えているため、頚部に対する認識が極めて低いようです。
クビが捻じれていたら、どうなりますか?
主原因は食べ物ではありません。直立重心不良において生じているクビねじれが発病の起源なのです。
クビを絞められたり、吊ったりすると死んでしまいます。(急性)
自身の直立重心不良でクビをねじり続けていたら、それも死亡しやすくなるのです。(慢性~急性発症)
頚部の血管を含む全ての循環器系は鉄パイプで出来ているのではなく、ゴムチューブのような弾性体なのです。

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