2008-10-19

中心体による細胞分裂過程の制御

こんにちは、NISHIです 😈
今日は中心体による細胞分裂過程の制御に関して、追求してみたいと思います。
中心体って何? と言う人は、過去の記事↓を参照して下さい 😛
中心体の基礎知識
中心体から生命の基幹システムを探る(仮説)

さて、細胞分裂は、以下の2段階で行われます。
 ①【染色体分裂】遺伝情報を担うDNA=染色体を正確に2分する。
 ②【細胞質分裂】細胞全体を2分する。

(正確には、①の染色体分裂に先んじて中心体の分裂が行われる。)
%E5%90%8D%E7%A7%B0%E6%9C%AA%E8%A8%AD%E5%AE%9A%201%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC.jpg
中心体が染色体を2分することは中心体の基礎知識でも書かれているように詳細に解明されていますが、細胞質分裂において、中心体がどのように分裂を制御しているのか、詳しくは解っていませんでした
しかし最近の研究で、その制御機構が詳細に解ってきました 😛
ポチっと押してから、その詳細に迫って見ましょう
ブログランキング・人気ブログランキングへ
にほんブログ村 科学ブログへ

 にほんブログ村 科学ブログへ


細胞全体の分裂=細胞質分裂は、細胞膜に存在するタンパク質=アクチンが細胞を2等分するようなリング(アクチンが重合して形成する繊維=アクチンフィラメントと呼ばれるものの一種)を形成し、このリング上をモータータンパク質と呼ばれるミオシンが移動しながら、リングを縮めていくことで行われます。
原核生物のZリングとも似たような機構ですが、真核生物のリングが、アクチンによって形成されるのに対し、原核のZリングはアクチンではなく、チューブリン=微小管によって形成される点が異なっています。
(なお、真核生物の染色体分裂は微小管=チューブリンによってなされるのに対し、原核生物のDNA分裂はアクチンによって行われるので、原核と真核では、チューブリンとアクチンの役割が完全に逆転しています。今回のテーマとは関係しませんが、非常に興味深い点で、いつか追求してみたいと思っています)
染色体分裂は、中心体から延びる微小管(これもタンパク質)によって行われるので、細胞質分裂と染色体分裂は、それぞれ別のタンパク質が独立して行っていることになります。問題なのは、この分裂の順番で、細胞質分裂の時期が染色体分裂に先んじて行われたり、染色体分裂の途中で行われたりすると、正確な細胞分裂となりません 🙁
その為、この異なるタンパク質の働きは、何らかの信号によって制御される必要があります。この制御を行っているのも、中心体であることが解っています。
まず、中心体によって染色体が2分された段階で、片側の中心体を取り除くと、細胞質分裂は起きなくなります。(下図細胞A参照)このことから、中心体が細胞質分裂をなんらかの形で制御していることは明らかです。
問題は、中心体から、細胞膜に存在するアクチン・ミオシンに対して、どのようにして制御信号を出しているのかと言うこと。中心体から延びる微小管は、細胞膜にも延びているので、微小管が何らかの信号伝達を行っていると考えられていましたが、東京工業大学生命理工学研究科(濱口教授)の研究によって、微小管による経路以外にも、中心体から細胞質に拡散する形で、なんらからの信号物質(恐らくタンパク質)が出されており、微小管経路と信号物質経路の2つの経路で、細胞質分裂が制御されていることが解ってきました
中心体と細胞膜の間に、タキソールと呼ばれる微小管の形成を阻む物質(抗ガン剤の一種)を注入し、中心体から細胞膜に延びる微小管の形成を阻んだところ、タキソールを注入した側の細胞が小さくなったものの、細胞質分裂は行われました。(下図細胞B参照)
次に、細胞質分裂が行われる分裂面の直ぐ近くに、タキソールを注入したところ、タキソールを注入した側の細胞膜はくびれず、注入した側と反対の細胞膜がくびれを起こしましたが、途中までくびれた後、元に戻りました。(下図細胞C参照)
%E5%90%8D%E7%A7%B0%E6%9C%AA%E8%A8%AD%E5%AE%9A%202%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC.jpg
中心体から延びる微小管によって、細胞膜に信号が送られ、細胞質分裂が制御されているのだとすれば、微小管と細胞膜が繋がっていない細胞Bでは、分裂の信号が送られず、分裂が行われないはず。
片側でも微小管が繋がっていれば、信号伝達が行われ、細胞質分裂が行われる。ただし、微小管が繋がっていない側には届く信号量が減るために、小さくなると言うことも考えられますが、その場合は、細胞Cで起こった現象が説明つかなくなります。
中心体→微小管→細胞膜と、微小管によって伝達される信号経路以外に、中心体から、何らかの信号物質が出されており、それによって制御される経路が存在すると考えれば、
・細胞Bではタキソールによって、片側の微小管経路による信号伝達は絶たれたが、中心体から出される信号物質経路は残っているので、細胞膜に信号伝達が行われ、分裂が行われた。ただし、微小管経路が絶たれた分、細胞質分裂が正確に2分にならなくなり、分裂する大きさに差が生じた。
・細胞Cでは、微小管経路も、中心体から出される信号物質経路も、タキソールによって阻まれた結果、タキソールを注入した側はくびれず、反対側だけがくびれを起こした。

と考えられます。
この中心体から出される信号物質が、どのような物質なのか特定されていませんが、少なくとも、中心体は微小管を伸ばす以外にも、なんらかの信号物質を出して、細胞分裂過程全体を制御していることが明らかになりました
なお、中心体はこのほかにも、様々な信号物質、制御因子を持っており、細胞周期全体を制御・統合していることが解ってきています。中心体はこれら制御因子が情報ネットワークを構築する場であり、分裂過程だけに限らず細胞周期全域を制御する司令塔であると考えられるようになってきています。
まさに、中心体とは細胞の統合者であると言えるようです。
※画像は、研究元の東京工業大学生命理工学研究科HPから頂きました。

List    投稿者 crz2316 | 2008-10-19 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2008/10/587.html/trackback


コメント2件

 匿名 | 2013.03.09 18:55

偶然で出来るわけないでしょ。

 ビオル | 2013.05.06 7:16

非常に参考になりました。ただ、<RNAワールド仮説> のところで、エクソンとイントロンの説明が逆だと思います。

Comment



Comment