2008-10-15

核小体の機能~RNA系の重要性

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核小体では、リボソームはタンパク質の製造工場であり、この核小体は哺乳類の場合、卵子由来(母親由来)であることが、本ブログ「RNAワールドの名残り?核小体とはどういう組織か」で紹介されています。
今回は、この核小体が卵子由来であることを、今年の2月に発表された論文より、哺乳類の受精卵での核小体の機能を紹介します。
この研究により
ミトコンドリア・・・卵子由来(1974年)
中心体・・・・・・・精子由来(1976年)
核小体・・・・・・・卵子由来(2008年)と有性生殖での卵子・精子の役割が一つ解明されました。
では、この卵子由来の核小体は、どのような機能を持っているのでしょうか?
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上図は、こちらからお借りしました。

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以下、「哺乳類の受精卵の発生には卵子由来の核小体が重要- 注目されていなかった卵母細胞の核小体の機能が世界で初めて明らかに – 」より、主要点です。

受精の際、卵子は母方の遺伝情報を、精子は父方の遺伝情報を受精卵に持ち込むことはよく知られています。それ以外に卵子は、ミトコンドリア、様々なタンパク質およびRNAなどを供給し、精子は中心小体を持ち込みます(下図参照)。卵子と精子が相補的に貢献することによって、すべての細胞になる能力、すなわち全能性を備えた受精卵が構築され、その後の発生が正常に進行します。

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1) 減数分裂進行に卵母細胞の核小体は不要である

 脱核小体操作により核小体のない卵母細胞(脱核小体卵)を作出し、体外で培養することにより減数分裂が進行するかを調べました。脱核小体卵は、核小体を持つ通常の卵母細胞(対照卵)と同様な時間経過で減数分裂を進行し、完了しました。つまり、卵母細胞の核小体は減数分裂進行には必要ないことが示されました。

2) 受精卵の雌雄両前核形成に核小体は必要である

 脱核小体卵を体外で培養し、減数分裂を進行させたのち体外受精を行い、受精卵を作出しました。その結果、対照卵から作出した受精卵では雌雄両前核に核小体が存在しましたが、脱核小体卵から作出した受精卵では、卵子由来の核(雌性前核)だけでなく、核小体が存在していた精子由来の核(雄性前核)においても核小体は存在しませんでした。つまり、卵母細胞の核小体は、精子侵入後に形成される受精卵の雌性前核だけでなく、雄性前核の核小体形成にも必要であることを見いだしました。

3) 初期胚発生進行に核小体は必要である

 さらに、核小体のない卵母細胞を体外で受精・発生させることで、卵母細胞の核小体が初期胚発生進行に必要かどうかを調べました。発生を開始した脱核小体卵は、核小体を持つ対照卵と同様にタンパク質合成能およびDNA複製能を有していましたが、数回の卵割後に初期胚発生を停止しました。
この異常が脱核小体操作による核のダメージによって起こるものでなく、核小体を持たないことに起因することを確認するため、核小体のない脱核小体卵に卵母細胞の核小体を戻し、体外で受精・発生させました。核小体を戻した卵母細胞は、正常に受精・発生し、この胚から産仔が得られました。つまり、卵母細胞の核小体は胚発生を正常に進行させるために必要であることが実証できました。

4) 体細胞核小体によって卵母細胞核小体を代替することはできない

最後に、卵母細胞の核小体を、形態的に異なる分化した体細胞の核小体によって代替できるかどうかを調べました。体細胞の核小体を脱核小体卵に顕微操作により注入し、この卵に前核を形成させると、前核に核小体は形成されず、この卵の胚発生は数回の卵割後に初期胚発生を停止しました。
また、分化した体細胞よりも未分化な状態で多能性を持つES細胞の核小体を脱核小体卵に注入したのち前核を形成させても、前核に核小体は形成されませんでした。
つまり、卵母細胞の核小体は、体細胞の核小体によって代替できず、卵母細胞特異的であると考えられます。また、体細胞クローン作出時の前核中にも卵母細胞特異的な核小体が形成されていたことから、体細胞クローン胚の正常な初期胚発生進行にもこの核小体が必須であることが示されました。

核小体は、核小体低分子RNA・低分子核RNPリボソーム・RNAポリメラーゼⅠ型タンパク質
・リボソームRNA遺伝子が集積したDNA領域・酵素タンパク質等で構成されています(リンク)。また、中心体もRNPにより構成されています(リンク
有性生殖では、DNA情報を次の時代に伝えるだけでなく、DNAからタンパク質情報を読み取り細胞を作るに欠かせないRNA情報がセットになって中心体・核小体によって伝わっていきます。
上記の研究により、卵子由来の核小体は初期胚発生には必須であり、ここが機能しないとその後の体細胞分裂も不可能です。これは中心体も同様で重要な役割を担っています。
これは真核生物以前の原核生物でも同様だと思います。環状のDNAだけでなく、細胞内に中心体・核小体に相当するRNA系の情報が組み込まれていて、分裂時にもDNAと同様に分裂していると思われます。
基本的に初期生命の進化とは、RNA系を中心に行われていたが、安定を確保するために2重らせんのDNAを後で作ったのでは?と思えてきます。

List    投稿者 yooten | 2008-10-15 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 あいあい | 2008.11.29 20:04

>原生動物では染色体とは別に rRNA をコードする DNA 分子を持っています。
初めて知りました!
真核になってからは、染色体上に多コピーの rDNA が存在しています。
その様になったのは、それだけ情報をきちんと保存するためなのかなぁ?って思いました。

 s.tanaka | 2008.11.29 21:59

原核生物にもリボソームはありますが、大腸菌などでは、その遺伝子(rDNA)はプラスミドではなく環状DNAに分散して含まれています。
原核生物(環状DNA)から真核生物(線状DNA)に進化する際に、rDNA領域が一度プラスミドの形に分離・集約され、再度線状DNAに組み込まれたのが核小体の始まりかも知れませんね。

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