2008-09-25

細胞周期制御機構のポイント

今回は、9/22の記事に続き、細胞周期についてです 😀
まずは、以前の記事の理解を促進するためにも、細胞周期の大まかな流れから抑えてみようと想います
 
■細胞周期制御機構
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細胞分裂の正確性は、細胞周期の各段階が正しい順序で行われることにも依存します。よって、真核生物における細胞周期(基本的にG1期→S期→G2期→M期)はその時期と互いの協調を制御する複雑な制御ネットワーク:細胞周期制御機構を持っています。
 
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■細胞周期制御機構の中心的要素
細胞周期制御機構の中心的な要素は、以前の記事にもあった、サイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinase:Cdk)と呼ばれる一群の酵素です。Cdkの活性は細胞周期の進行に伴って上下し、その振動によって細胞周期の各過程が開始します。
 
■細胞周期の制御チェックポイント
細胞周期制御機構は、冒頭の図のように、以下のような3つのチェックポイントを持っています。そして、詳細は割愛しますが、動物初期胚の細胞以外のほとんどの細胞の制御機構には、様々な細胞内外からのシグナルに応答して細胞周期の進行が調節できるように、ブレーキ機構等の付加的な制御機構が含まれています。
①スタート(G1/S期チェックポイント)
細胞増殖に適した条件下でのG1/S期サイクリン-Cdk複合体とS期サイクリン-Cdk複合体の活性化
②G2/M期チェックポイント
M期サイクリン-Cdkの活性化
③中期-後期移行
染色体分配→有糸分裂、細胞質分裂完了
 
因みに、増殖条件が適当でないとか、他の細胞から阻害シグナルが伝達されたりすると、細胞はG1期に長く留まり、更にG0期(休止期)と呼ばれる長期にわたる分裂しない状態に入ることもあります。例えばヒトの体を構成する(幹細胞以外の)細胞の多くは分裂せず、細胞周期に再進入することが困難或いは不可能な終末分化した状態にあります。
 
■サイクリンによるCdk活性化
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Cdkはサイクリンと呼ばれる制御タンパク質と結合することで活性化されます。
3つの主なサイクリンの量は細胞周期の各過程で変動し(図中上段)、細胞周期を進行させるサイクリン-Cdk複合体の変動(図中下段)の基盤となります。一般的にCdk量は一定であり、サイクリン量に対して大過剰の状態にあるので、サイクリン-Cdk複合体はサイクリンの量に比例して形成されます。
サイクリンは細胞周期における発現の時期とその機能によって4つのクラスに分類されます。このうち、G1/S期サイクリン、S期サイクリン、M期サイクリンの3つは細胞周期過程の調節に直接関与し、G1期サイクリンは細胞外因子に反応して、細胞周期開始の制御に寄与します。よって、G1期サイクリンは、他のサイクリンが細胞周期に伴って周期的に濃度変化するのとは異なり、細胞の成長や細胞外成長調節シグナルに応じ細胞周期を通じて徐々に増加します。
ここで、興味深いのは、サイクリンはRNAポリメラーゼⅡ転写因子などのサイクリン以外のタンパク質と同様の構造(サイクリンフォールド)を持ち、その構造的な相同性から、サイクリンと転写制御因子が共通の起源から進化した可能性も示唆されているということです。このことは生物の起源にも関連する内容であり、引き続き研究結果が注目されます。
 
■サイクリン-Cdkの種類
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上表のように、生物種によってCdkやサイクリンの種類は異なります。例えば、出芽酵母や分裂酵母では細胞周期の全ての過程はCdk1と呼ばれるたった1つの必須のCdkによって制御されています。多細胞生物では、細胞周期の各過程は2種類以上のCdkによって制御されています。(この表を見ればお分かりかとは思いますが、9/22の記事はCdk4ですので、多細胞生物の制御機構ということになります。)
しかし、種類は多少変わっても、細胞周期制御機構の中心的要素がCdkというタンパク質(酵素)であることは変わらず、それを活性化させているのはサイクリンであることも変わりません。
また、Cdkの機能は進化の過程で非常によく保存されています。例えば、酵母細胞のCdk1の遺伝子をヒトのそれと入れ替えても酵母は正常に増殖するのです。この事例も含め他の報告からも、Cdkの機能、すなわち細胞周期の制御機構は、数億年以上にも及ぶ真核生物の進化の過程において本質的に変わっていないのです。この制御機構は、生物にとってそれほど重要だということなのでしょう。
 
■スタートを制御する因子
9/22の記事のコメントにもあった、スタートを制御する要因についてですが、9/22の記事では多細胞生物について扱っていたので、単細胞生物について少し補足します。
動物細胞は、通常一定の濃度の豊富な栄養素の中に存在し、組織特異的な遺伝子のプログラミングと、他の細胞が分泌する細胞外タンパク質(成長因子)から受け取るシグナルによってその増殖が制御されています。
一方、例えば酵母の増殖は、大きく変動する外界の栄養素の量によって主に制御されます。具体的には、細胞外の栄養素の量と細胞内の代謝がCLN3mRNAの翻訳速度に影響することによってCln3タンパク質(とSwi4)の量を(僅かに)増やします。それにより、Cln3-Cdk1が活性化⇒G1/S期遺伝子を活性化してスタートの通過を決定しているようです。つまり、細胞内でのある特定のタンパク質の僅かな濃度変化がスタートを通過させる要因となっているようです。ただし、その詳細についてはまだよくわかっていないようです。
スタートの制御については、また改めて扱ってみたいと想いますので、お楽しみに。
 
【参考】「カラー図説 細胞周期 細胞増殖の制御メカニズム」David O.Morgan メディカル・サイエンス・インターナショナル

List    投稿者 hadou | 2008-09-25 | Posted in 未分類 | 6 Comments » 

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コメント6件

 ひつまむし | 2008.11.17 22:54

ウナギが海で産卵するなんて知りませんでした。
ウナギの養殖が難しいっていうのは聞いたことがあるんですが、海で産卵する生物だったとは・・・難しそうですね。。。

 s.tanaka | 2008.11.17 23:16

「川で親ウナギ」なら、昔捕まえたことがあります。大きめのミミズを付けた釣バリと糸を長い棒の先に引っ掛けて、それっぽい大きい石の下に突っ込むと釣れるんです。
蒲焼にする前に死んじゃいましたが。ヤツも深海から旅してきたんだと思うと、ちょっと可哀相なことをしました。

 matsu子♂ | 2008.11.18 23:16

初めて知りました!
うなぎってすごい適応力ですね。
たしかに精力がつくとか夜のお菓子というのも納得がいきますね

 さんぽ☆ | 2008.11.19 1:23

ひつまむしさん
コメントありがとうございます!
しかもかなり深海で卵を産むらしいです。
身近な魚なのに意外に生態が知られてないですよね!

 さんぽ☆ | 2008.11.19 1:28

s.tanakaさん
コメントありがとうございます。
ウナギを釣ったことがあるとはすごいですね!
そうやって隠れているところを釣るのですね。
なんか蒲焼を食べたくなってきました(^^)

 さんぽ☆ | 2008.11.19 1:32

matsu子♂さん
コメントありがとうございます☆
ホントすごい適応力ですよね。
なるほど~、夜のお供うなぎパイはそんな意味もこめられているのですね~。

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