2008-09-11

酵素の基本理解

こんにちわarincoです。zakkyさんに引き続き酵素について投稿したいと思います。
今回はちょっと立ち戻って酵素の基本的な仕組みを紹介します。酵素という言葉は僕たちの日常でも色々な所で出てきますよね。洗剤の酵素パワー等は身近な事例です。
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その仕組み、知っていると言う方も、そうでない方もぽちっと押して読んでみて下さいな。
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1)酵素って何??
 酵素とは、一言で言うと体内で起こる化学反応を助ける物質の総称です。私達の体の中では、絶えず消化や分解が行われていますが、この消化や分解の手助けをしているのが酵素というわけです。
 酵素の代表選手はタンパク質です。あのRNAも酵素として働く種類のものがあるようです。
2)酵素は反応の活性化エネルギーを下げる事で反応促進に寄与する
 ある化学反応が起こる為には、エネルギーが必要となります。酵素は、この必要エネルギーを下げる事で反応促進に寄与しています。必要エネルギーが下がる事で常時は成立しない化学反応が成立する。というわけです。
3)キーワードはくぼみ活性点
 酵素と結びつき変化を受ける物質を基質と言います。
酵素と器質の関係は鍵と鍵穴に例えて説明される事が多いようです。要するに酵素と基質が鍵と鍵穴のようにがっちゃんこすることで活性化されるという説明です。
 具体的には、酵素表面には、くぼみが存在しており、くぼみの部分には活性点という基質が結合する部位が存在します。つまり鍵穴ですね。このくぼみは、特定の基質=鍵にちょうどよい形をしており、基質が近づくと、このくぼみにすっぽりとはまり込みます。つまり、酵素は形で相手を認識しているという事になります。
4)くぼみには、様々な相互作用が働いている
 酵素タンパク質の隙間がちょうど基質の形にフィットするようにできることで、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、アミノ酸残基との水素結合、金属イオンとの配位結合など、分子間のさまざまな求引的相互作用が多重に働く事で、特定の基質のみが強く活性部位にはまり込む事出来るのです。
 活性部位にはまり込んだ基質は上述したような相互作用により基質が活性化されます。また、反応する相手の分子も、同時に反応部位の傍に持ってこられます。このように基質と反応剤が空間的に接近し、活性化もされたことで、反応が良好に進行します。
5)反応を生み出すアミノ酸の特性
 アミノ酸には、親水性のものと疎水性のものが存在します。実は、この親水性、疎水性がくぼみを生み出す秘訣なのです。
私達の体内は、圧倒的に水分が多いですよね。つまり水分で満たされていると言っても過言ではない。そんな中で存在するタンパク質をイメージしてもらいたいのですが、疎水性の部分は、水を嫌がりくぼみを作るのです。
 また、アミノ酸は両性電解質つまり、酸、塩基両方の手を持っています。アミノ基はプラスにカルボキシル基はマイナスに荷電するします。従って、PHによって酸性、中性、アルカリ性の性質を帯びます。中性を取るPHはアミノ酸の等電点と呼ばれています。この性質により、酸やアルカリが加えられるとタンパク質の形が変わります。
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 例えば胃液に含まれるペプシンという酵素がありますが、これは食物のタンパク質を捕まえて分解する酵素です。くぼみの部分には、アスパラギン酸が2つ存在しています。(活性点)くぼみは小さいのでそのままでは分解できません。ここで胃酸の登場です。胃酸が出ることで胃の中が酸性となりタンパク質の構造が緩くなります。その結果、くぼみの中に納まる大きさになって分解が促進されるのです。一方ペプシンは、酸に強い構造をしている為胃酸によって形が変形する事はありません。
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有機化学美術館様からお借りしました。
6)情報伝達物質としての水
最後に酵素反応における水の重要性も紹介します。
 くぼみ部分は、疎水性アミノ酸の側鎖で出来上がっていますが、一方酵素分子の表面は親水性です。
従って、くぼみ部分と酵素の表面部分の水分子の向きが異なっていることになりますよね。
 そのような状態で酵素の鍵穴に合う基質が近づくと、相互作用によりくぼみが少し広がり(活性化する)、受け入れやすくなります。すると、疎水部が表面に露出する形になるのでその付近の水の向きが変わります。次の瞬間にその隣の水分子も向きを変える。次々と水分子が向きを変える=運動する事で気質に活性化したという情報を伝えて、基質との結合を容易にしているのです。
 このように酵素を調べてみて思うのは、酵素=タンパク質にとって重要な要素は、どうやら「形」と「電荷」なのかもしれないという事です。水という外圧の中で、この2つの条件が成立する材料がアミノ酸だったのかも知れません。
そういえばタンパク質合成の時に、
「RNAそっくりのタンパク質がリボソームにくっつく事で合成終了の合図になる」。という
説明を読んだことがあり、なぜタンパク質とRNAは代用できるの?と思っていたのですが、「形」が最重要であるという認識に立てばすっきりする気がしています。私達の手や足等、機能に即した「形」があるように、タンパク質にも反応に則した形があるのでしょう。
今後も「形」と「電荷」に注目して調べていきたいと思います。
参考:有機化学美術館
    水とはなにか? 上平恒
    Essential細胞生物学 原書第2版 (大型本)  

List    投稿者 arinco | 2008-09-11 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 chai-nom | 2008.11.01 19:55

ノンコーティングRNAの存在以上に、クロマチン構造の変化が遺伝情報発現に関与しているとは驚きでした。(リンクにあるHPを見ましたが難しくてよくわかりませんでしたが・・・)
セントラルドグマは骨格構造としてはわかりやすいですが、外圧との係わりという視点がかなり欠落しているのですね。ちょっと納得です。

 iwaiy | 2008.11.01 21:24

chai-nomさん、コメントありがとうございます。
セントラルドグマでは、生命の「基幹システム」や「進化史」を説明できないということだと思います。

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