2008-09-09

「タンパク質の一生・・・・生命活動の裏舞台」を読んで(2)

前回 のつづきです。
◆分子シャペロンは「ゆりかご」とは?
分子シャペロン が必要なことの最大の理由は、サイトゾルの大部分が水であることによります。前述のとおり、疎水性アミノ酸クラスター同士が集まったり、直ぐ近くのリブソームで作られている別のポリペプチドの疎水性アミノ酸クラスターと結合してミスホールドしかねないということなります。
また、ミスフォールドしたタンパク質は、疎水性のクラスターが外側に露出しやすいので、別のミスフォールドしたタンパク質と分子間の集合を作ってしまう(=タンパク質の凝集)。
それというのも、細胞内の、たんぱく質などの分子の濃度はきわめて高く、「細胞の中はジャングルである:月田承一郎」からです。
一人前のタンパク質に育てるためには、廻りから隔離して、順調に然るべき構造を形成するようにしてやる必要があるので、「ゆりかご」だというわけです。合点!
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【4】輸送
◆「針穴通し」って、どういうこと?
それは輸送の問題とかかわるので、そのことに触れざるを得ません。DNAからmRNAが転写され、そのmRNAの情報のもとにリボソームでポリペプチドが合成されるまでは、どのタンパク質でも同じです。
その後は、働き先へ送られていくわけですが、それぞれの輸送の経路と輸送方式が異なるのでタンパク質の構造化の仕方が変わります。サイトゾルで働き続ける場合は、その場でフォールディングすればよいので、輸送の必要はありません。
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      ↑
     「細胞内輸送のダイナミズム・メンブレントラフィックに迫る」より
輸送が必要なのは、
①核への輸送
②オルガネラ(ミトコンドリアや葉緑体、ペオキシソームなど)への輸送
③中央分泌系の「小胞体→ゴルジ体→細胞の外」輸送
ですが、①核への輸送は、核膜孔がタンパク質の直径に比べてはるかに大きいのでタンパク質の輸送には差支えがないようです。

★シグナル仮説★
ロックフェラー大学のG・ブローベル(G.brobel)が1980年代の初めに提唱した説で、新しく作られたポリペプチドがどのようにして小胞体に挿入されるのかを明らかにした。

参照⇒「物質輸送>シグナル仮説
     「The Cell第8章-第13章>シグナル仮説
そこで登場するのが、〔翻訳共役輸送=針通し〕です。
ポリペプチドの端部に付けられた「送り先」のアドレスを「シグナル認識粒子(SRP)が認識すると、翻訳は一時ストップされ、リボソームは輸送先の小胞体の膜チャネルまで運ばれて細い孔に覆いかぶさるようにして翻訳を再開するので、小胞体にあるチャネルを「針穴通し」の要領でポリペプチドを通し、送り込みます。

      ↑
     「タンパク質の一生」 P.108 図版より
小胞体に入ってきたタンパク質は、①糖鎖の付加や削除(タンパク質の化粧直し)、②アミノ酸のシステイン同士の共有結合(ジスフィド結合)、③分子シャペロンによるフォールディングなどがなされてタンパク質が機能できるようになります。
◆葉書方式と小包方式の違い
・葉書方式は、タンパク質そのものに宛先が書かれているもの。
・小包方式は、運びたい内容物を袋に入れて、袋に宛先を書いて送るもの。
オルガネラで作られたポリペプチドを小胞体に送り込む膜輸送(膜透過)は、「葉書型」でした。それに対して、小胞体から先の輸送は基本的には「小包型」になります。
それは、小胞の内側に〔外部〕を抱えた輸送に他なりませんので、最後は、小胞が細胞膜と融合して細胞膜の方が開かれれば、細胞外へとつながりますので、タンパク質の働く場へと送り出せることになります。
参考:「タンパク質の一生」永田和宏著 岩波新書
     つづく     by /びん

List    投稿者 ayabin | 2008-09-09 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 tani | 2008.11.01 19:42

なるほど、セルトり細胞が発する情報伝達物質の成分が、精子生産に影響を与えているということですね。とても面白いと思いました。
一方、外圧情報をストレートに遺伝子に転換できるか?疑問も沸きました。気温が寒い環境なら、寒さに強い子供が生まれるといった直接的な影響なのか?ある程度のレンジはあるのか?どうなんでしょうね。

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