2008-09-07

分裂形成を担うZリング(タンパク質集合体)

09月05日の記事、「原核細胞の分裂」で紹介された分裂行為の役割を担う、【FtsZタンパク質】で構成されたZリングについて書きたいと思います。
>DNA複製が終了し、新DNAの一方が、膜結合型DNA転位酵素(=FtsK)被膜を通過すると、真核生物のチューブリン(=管状繊維束)と似たタンパク質(=FtsZ)が、細胞中央部で働き始めます。FtsZは収縮環を形成し、リング状に絞り込むような動きで、細胞中央部にくびれを生じさせ、細胞間隔壁をつくり分裂します。
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●既存の研究で以下のことが分かっていました。
・Zリングは、FtsZ タンパク質と12個の他のタンパク質が重合して、Zリングを組み立てている。
それぞれのタンパク質の役割は解明されていない。
・FtsZ タンパク質はFtsAたんぱく質をアンカーとして、膜に繋ぎ止められている。
・FtsZ タンパク質は、チューブリンと呼ばれるタンパク質を単位として構成している中心体や中心体から伸びる微小管と似た分子構造を持っている。繊維状構造をとることが知られている。
・FtsZ タンパク質は GTP と結合している時には直線状の原繊維を構成する。
GDP(GTP の分解産物)と結合しているときには著しく曲がった原繊維の構造を構成する。
●最近のReconstitution of Contractile FtsZ Rings in Liposomes
p. 792-794. の研究において、
FtsZ タンパク質単独でもリングを形成して膜胞をくびれ込ませる能力を持つことが分かってきた。

著者らはまず FtsZ タンパク質の C 末端を疎水性へリックスで置き換え,FtsA の仲介なしに膜に結合できるようにしました (FtsZ-mts)。なお,FtsZ-mts には YFP という蛍光タンパク質が結合されており,蛍光観察できるようになっています。 これをリポソーム(人工的に合成されたリン脂質二分子層膜の小胞),GTP(FtsZ の重合に必要な分子) と共に置いたところ,FtsZ-mts がリポソーム内部に取り込まれて複数の Z リングを形成しました。 初め FtsZ-mts は薄い蛍光のリングを形成し,リングがリポソーム状を前後に移動しました。そしてリング同士が合わさると, 明るい蛍光のリングとなり,その場でリポソームのくびれ込みが起こったそうです。 逆に GTP 濃度を徐々に減らしたところ,Z リングの蛍光が薄くなり,同時にリポソームのくびれが解消されたそうです。
キネシンのようなモーター分子は存在しないので, 何か別の力で膜を変形していることになります。FtsZ は GTP と結合している時には直線状の原繊維を構成しますが, GDP(GTP の分解産物)と結合しているときには著しく曲がった原繊維の構造をとることが知られていました。 すなわち FtsZ は,GTP が分解されて出るエネルギーによって変形し,原繊維も曲がり, 結果としてリポソームがくびれ込んでいると考えられます。
リングの形成にも謎があります。原繊維がらせん状に伸びず,閉じたリングを構成できる仕組みは不思議です。 著者らは FtsZ の原繊維が収縮の力を持つために,最小の直径をなす部分に配置する, すなわち膜胞の軸に垂直な位置にリングを形成すると考えています。また原繊維の集合自体, 観察からは原繊維同士の相互作用によるものではないと見られており,おそらく原繊維の結合によって膜が歪んだ結果, 歪んだ領域に原繊維が結合しやすくなり,互いに同じ方向を向くように集まっていると推測されました。
今回の結果から,FtsZ は比較的単純な機構によって収縮リングを構成できることが示唆されました。 この仕組みは原始的な細胞分裂の仕組みとしても納得できるもので, おそらく似たような分子が細胞分裂の起源に関わっていたのでしょう。 なお FtsZ の場合,単独でリポソームをくびれ込ませることはできますが,くびれ切ることはできていません。 分裂の最後の段階にはまた別のタンパク質,あるいは別の力学的機構が関与しているものと思われます。
雑記(ニュースなど) - 分子細胞学より】)

Zリング形成における、FtsZタンパク質の分解作用の際のエネルギー発生によって、原繊維の形をリング状に変形し、収縮作用が起きている。
真核細胞のモータータンパク質のキネシンの場合は、ATP分解酵素である頭部の加水分解の作用により、エネルギーを発生させ自身の立体構造を変化させ、移動している。
→類似点としは、分解作用により、自身の構造を変化させ、分裂行為を担っている。
その際、単独では、分裂は行えず、複合体タンパク質として機能していると思われる。
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List    投稿者 Hikaru | 2008-09-07 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 s.tanaka | 2008.10.24 20:50

σ因子の違いで、合成されるタンパク質も違ってくるということですね。
ということは、同じσ因子に対応する遺伝子群が進化上のグループを形成しているのかも。
>σ因子がなくても、DNAに結合して一定方向に進んでいく
このRNAポリメラーゼって、一体何のために存在してるんでしょうね?

 zakky | 2008.10.25 21:13

s.tanakaさん、コメントありがとうございます。
σ因子と結合していないRNAポリメラーッゼって、確かに何してるんでしょうね。うろうろ徘徊してるだけだったら、無意味ですね。
でも、σ因子も細胞内に沢山存在しているみたいなので、たぶん、ちゃんとめぐり合ってRNAを合成していると思います。

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