2008-08-11

脳の設計図はどうやって作られるか?

こんにちわ。
脳の形成がどのように行われるか?脳の設計図はどうなっているのだろうか?
考えたことのある人はいますか?
でも興味ありますよね? 8)
さて、夏休みの自由研究と題して、今日はこの課題に迫ってみたいと思います。
脳は遺伝子情報からmRNAによってたんぱく質による神経細胞が作られ、その細胞がシナプスを伸ばして、ネットワークを形成することで脳という全体システムを作り上げています。脳は筋肉や皮膚のように同一細胞の集合体ではありません。多様な神経細胞がそれぞれに役割り分化してシステムを作り上げています。機能を発揮する為には高性能のコンピューター以上に多くの部品を要するのが脳という総合器官なのです。
今日はこの疑問を解明する為に理研ニュースの古市研究室のレポート「脳の設計図を解き明かす」より勉強して行きたいと思います。
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複雑なネットワークの主役はmRNA

人の場合おおよそ10万種類のたんぱく質ができあがるそうですが、それが全て最初から遺伝子情報としてあるわけではないのです。遺伝子情報がmRNAに変換される過程で選択的スプライシングという過程を経て部分的に遺伝子情報が欠けたり、加えられたりしてひとつの遺伝子から多様なmRNAが作られていくのです。
そこで作られたたんぱく質が切断されたり、りん酸や糖鎖を使ってくっつけられたりされれ個々の神経細胞になり、それらがシナプスで繋がることでネットワークを形成するのです。

人の場合神経系を構成するニューロンは1000億個とも言われ、そのニューロンがそれぞれ1000~10000くらいのシナプス結合をつくり、実に100兆というコンタクトをとるネットワークを形成しているのです。どれだけ電子脳の技術が進んでも人の脳には及ばないという根拠はここからも伺えます。
ニューロンの数を比較するとマウスが4000万個に対して人は1000億個と、2500倍にも増えています。しかしその遺伝子の数はニューロンの数が302しかない線虫が18266、人が30000~40000とわずか2倍程度の差しかありません。
人を含め脳を進化させた生物は遺伝子を複雑に増やしたのではなく、遺伝子情報から細胞を作るmRNAの翻訳機能の高度化によって複雑な脳細胞を形成しているのです。
fro1_02.giffro1_03.gif
この脳のネットワークはどのようにしてできるのでしょうか?
古市研究室では小脳の形成過程を調べる事でそれを説明しています。
小脳はマウスと人はニューロン構成や回路についてはあまり変わらないといわれています。
マウスの場合、生まれて3週間で小脳の構造がほぼ完成します。このころになるとマウスは母親から乳離れし自分で走り回って餌を食べるようになり、つまり神経細胞が発達する事で運動ができるようになる事が判ります。
まず小脳の構造について解説します。
小脳はプルキンエ細胞、顆粒細胞、など5種類のニューロンで構成され、2つの入力ラインと1つの出力ラインがあります。情報伝達の仕組みは苔状繊維という神経細胞から顆粒細胞へとシナプス伝達し、顆粒細胞がプルキンエ細胞に情報を伝えます。またもう一つの入力ラインである登上繊維は直接プルキンエ細胞にシナプスを作り情報伝達します。
それらの情報を得て、情報処理した後、プルキンエ細胞から小脳皮質へ指令が出力されるのです。
入力―――⇒苔状繊維⇒顆粒細胞―――⇒プルキンエ細胞――|
                                        判断――――⇒出力
入力―――⇒登上繊維――――――――⇒プルキンエ細胞――|
fro1_04.gif
マウスの小脳の発達過程を調べると、顆粒細胞とプルキンエ細胞は以下の関係になります。
ここからは理研ニュースさんの記事を転載させていただきます。

発達の初期段階では、プルキンエ細胞にはまだ枝がなく、小さな芽のようなものがあるだけ。顆粒細胞は生後まもなくこのプルキンエ細胞の上に前駆細胞としてあり、そこで爆発的な増殖を始める。何と脳にあるニューロン総数の約半分を占めるまでになるのだ。増殖が終わった顆粒細胞から、両側に線維を伸ばしつつ、細胞自身は蜘が糸を伸ばして降りるように、プルキンエ細胞体の下に降りる。結果的にT字形になった線維は、複雑に分枝して発達してくるプルキンエ細胞の樹状突起と無数のシナプスを作る。

fro1_05.gif
このように小脳の中心器官であるプルキンエ細胞はすさまじい数のシナプスを形成します。
「プルキンエ細胞は、樹状突起という枝のような突起を扇のように広げています。突起の上には、顆粒細胞がT字形の軸索を垂直に伸ばしてシナプスを作っています。このシナプスが、なんと一つのヒトの典型的なプルキンエ細胞あたり20万個にものぼります。膨大な情報量をここで処理するわけです(図2)」
解析を進める中で、新しい発見もあった。
脳に関係する遺伝子の30%~40%は生後、発達期に発現すると以前から指摘されていました。生後0日目から発現する遺伝子の数を調べていくと、たしかに生後、小脳を作るときにたくさんの遺伝子が発現することがわかってきたのです
小脳の形成過程を古市リーダーは以下のように例えています。
「脳を家にたとえると、われわれは、最初から木材を加工した精巧な部品を必要な数だけ作り、寸分違わぬ家を建てる設計図をもっているわけではありません。脳の青写真には部品の仕様の他にあらかじめ材料を余分に作ることも描かれていて、柱も電気の配線もいったん余分に作ります。そして、ちょっと使ってみて、具合が悪いものや多過ぎるものを消し去るのです。これによって、各個人に心地よい住環境を築くのです。それには、細胞が自ら死ぬ、セルデスという細胞数の調節や、実際の神経活動に依存した必要なシナプスや線維の選別や洗練のメカニズムがはたらきます。これらは環境要因をも考慮した遺伝的プログラムといえます」
環境要因をも考慮した遺伝的プログラムとはどういう事かなかなか把握しずらい表現ではありますが、要するに使いながら改善していく道具のようなものとでも例えられるのでしょうか?或いはどんどんソフトを改良していくリナックスのようなものでしょうか?
なぜ脳がこれだけ複雑な回路を作ることができたのか?それは生後遅れて発言するいわば遺伝子の時限装置を持つことができたからでしょう。
マウスでは3ヶ月のところが人はこの時限装置は10歳頃まで先送りされているされていると言われています。幼児期から小学校低学年の教育がいかに脳の育成上重要であるかここからも指摘できます。
by tano

List    投稿者 tano | 2008-08-11 | Posted in 未分類 | 3 Comments » 

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コメント3件

 yukie♪ | 2008.09.26 18:55

>一方、例えば酵母の増殖は、大きく変動する外界の栄養素の量によって主に制御されます。
>つまり、細胞内でのある特定のタンパク質の僅かな濃度変化がスタートを通過させる要因となっているようです。
いつ増殖を始めるか? というタイミングって、結構重要なのではないかと思いますが、その詳細がよく分かっていないことに、驚きました! 
こちらのブログを見ると、知らないことが色々分かりますが、同時に「ここの仕組みはまだ解明されていないんだ!」とビックリすることも多いです。

 ブーケ | 2008.09.27 3:37

>細胞周期の制御機構は、数億年以上にも及ぶ真核生物の進化の過程において本質的に変わっていないのです。
これってすごいことですね!
つまりこれは生物にとっては根幹部分であることを意味してますよね。

 hadou | 2008.09.27 23:30

>yukie♪さん
コメントありがとうございます♪
調べていくと、まだまだわからないこともたくさんありますが、現在わかっている事実から仮説を立てながら今後も追求していこうと思います。
是非今後の記事も楽しみにしていてください☆
>ブーケさん
そうなんです!すごいことですよね!
生物は進化の過程で驚くほど複雑なシステムを獲得している一方で、重要な機能や、基本構造は大きくは変わっていない場合も多く、そのことにも驚かされます。

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