2008-08-02

DNAの水平伝播と、RNAのはたらき

DNAの基礎的な知識 や、DNAに変異が起こる仕組みについて調べている途中で、
「DNAの水平伝播」という言葉を目にしました。
DNAが水平に伝播するってどういうこと 🙄 ?
今日は「DNAの水平伝播」とは何かを、簡単に紹介します 😀 。

 にほんブログ村 科学ブログへ




■DNAは、世代を超えて伝播 する以外に、種を超えて伝播 する。
DNAの変化は複製の誤りによって生じ、それが子孫に伝えられます。
これを「DNAの垂直伝播」と呼びます。
DNAの変化が世代を経て徐々に蓄積し、種の多様性を生み出します。
種ごとのDNAが世代から世代へと垂直 に伝えられるのに対し、異なる種のDNAが侵入してゲノムに付加されたり、その一部が置き換わったりすることがあります。
これを「DNAの水平伝播」と呼ぶそうです。
「DNAの水平伝播」は、新たな遺伝物質を、自分とは関係のない種の細胞やゲノムに、生殖以外のプロセスで持ち込むこと。真核生物のウイルス感染がその例です。
zu01b.gif
画像の確認
この「DNAの水平伝播」は、核を持たないバクテリアでも生物間で日常的に起こっています。
ゲノムに取り込まれたDNAの断片は、そのまま子孫に伝達されるので、DNAの水平伝播はバクテリアの多様性を生みだす要因でもあります。
(バクテリアなどのゲノムの全塩基配列を調べると、DNAの水平伝播は、予想されていた以上に頻繁に生じていることがわかったそうです。)
だから、現在私たちが見ているバクテリアゲノムは、種々の生物由来のDNAが取り込まれて、モザイク状になっているそうです。


■DNAの水平伝播はいつ起こっているのか?
殆どの場合、外来遺伝物質は、別の種である場合は特に、“偶然”細胞に入り込むことが多いようです。しかし、ゲノムに入り込む前にほとんどは破壊されます。
外来遺伝物質の水平伝播は、まだよく理解されていないようですが、何か特殊な条件の時に、破壊を免れゲノムに組み込まれてしまうようです。
例えば、熱ショックとか重金属のような汚染物質は、DNAの水平伝播に貢献します。抗生物質があるとDNAの水平伝播は10-10000倍起こりやすくなるとも言われています。
(まだまだ解明されていない領域です。)


■私たちの体内にも、水平伝播の名残が…
先にも述べたウイルス感染は、DNAの水平伝播の一つの例ですが、そのほかにも、過去に自然界でゲノムが水平伝播したと考えられる名残りがあります。
それが、細胞内器官のミトコンドリアです。(植物の葉緑体もそうです。)
これらはそれぞれ独自のゲノムを持っています。ミトコンドリアはαプロテオバクテリア、葉緑体はシアノバクテリアが、過去に真核細胞に取り込まれたものですが、現在では多くの遺伝子が消失するか細胞の核ゲノムに移行しています。
これはまさしく、水平伝播の結果なのだそうです。


■DNA情報が多様でも、形態は変わらない…??
枯草菌にシアノバクテリアの全ゲノムを意図的に水平伝播させた実験もあるそうです。
そうして出来上がったシアノバチルスには、実は最後まで同居ができない遺伝子があり、それが、mRNAからタンパク質を翻訳する「リボソームRNAの遺伝子」でした。
この枯草菌由来のリボソームしか持たないシアノバチルスは、遺伝子は枯草菌とシアノバクテリアの2つ分持ち合わせていますが、形態は枯草菌とほとんど変わりません。
そう、ゲノムすべてを移したところで、リボソームを中心とした翻訳系こそが、生育環境に応じて細胞システムを切り替え、種を決定する要因としてはたらくので、細胞の形態は変わることはなく、種の同一性は保たれていたのです。
(この実験は、まだ継続しているそうなので、詳細はこれからもっとはっきりしてくると思います。)
DNAの情報も偉大ですが、実際に生体内でたんぱく質を合成する役割を担うRNAが、生命の形態を決めている(?)ような気がして、逆に私はRNAの偉大さを感じてしまいました☆
参考サイト
生きものの多様性を支えるゲノムの水平伝播
水平遺伝子伝達-遺伝子工学の隠れた危険

List    投稿者 zakky | 2008-08-02 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2008/08/531.html/trackback


コメント1件

 のだおじさん | 2008.09.13 21:23

わたしも「タンパク質の一生」読みました。細胞内の物質合成とそのための物質運搬システムの緻密さに驚かされました。
この記事を読んで興味をもたれた方は、是非、読んでみるといいです。分かりやすく書かれています。

Comment



Comment