2008-07-09

プラスミドってなに?

グラム陰性菌(大腸菌)の毛タンパク(線毛)を作り出すプラスミドとはなにものか

 にほんブログ村 科学ブログへ


■プラスミドがもたらす機能とは?
 
プラスミド (plasmid) は細胞内で複製され、娘細胞に分配される染色体以外のDNA分子の総称で、細菌や酵母の細胞質内に存在し、染色体のDNAとは独立して自律的に複製を行う。一般に環状2本鎖構造をとる。 細菌の接合を起こすもの(Fプラスミド)、抗生物質に対する耐性を宿主にもたらすもの(Rプラスミド)などがその主要機能とされている。
 

F因子における接合伝達の過程
 
・供与菌(雄菌)の線毛(性線毛)の先が受容菌(雌菌)に結合します.
・両菌が接合橋(一時的な細胞融合)によってつながります.
・細菌細胞が接合するとそれが引き金となってFプラスミドDNAのtra-オペロン上の一方の鎖の定点に切れ目が入りFプラスミドの相補鎖が複製をはじめます.
・それと同時に供与菌から5’末端を先頭に受容菌へ接合橋を通じて移動します.
・受容菌内においてDNAポリメラーゼにより相補的な鎖が作られ,供与菌と受容菌が離れ受容菌にもFプラスミドが作られ,雌菌が雄菌に転換されます.
 
Rプラスミド(R因子)
 
・薬物耐性を決定するプラスミドをもつ薬剤耐性菌とこれをもたない感受性菌の接合がおこり,薬剤耐性プラスミドが伝播します.
・大腸菌や赤痢菌などの薬剤耐性菌は線毛を介して感受性菌を耐性菌にかえられます.
・ウエルシュ菌のような線毛を持たない耐性菌でも,感受性菌を密着させることによって耐性化することが知られています.
・このような薬剤耐性を接合によって伝達するプラスミドを伝達性Rプラスミドといいます.
・一方,黄色ブドウ球菌のペニシリン耐性プラスミドは接合では耐性を伝達することができません.
・Rプラスミドのような細菌の接合伝達は同種の菌の間だけでなく,赤痢菌と大腸菌のようない異種の細菌の間でも起こることがあります.

リンク
  
ところでこのF因子の供与は有性生殖の原点のように書かれた記述が多いが、有性生殖とは真核細胞→2倍体→多細胞化(生殖細胞の独立)→精卵分化を経てはじめて可能になったと考えるほうが整合性が高く、原核細胞の段階では細胞間結合(接合)のタンパク質の役割と考えたほうが混乱しにくい。
  
  
■プラスミドでなぜ毛が生える?
 

毛(=線毛)は、宿主細胞に接着するときに宿主側の感染対象となる細胞表面にあるレセプターを認識し,結合する役割を果たしています.これにより細胞への定着を確実なものにし感染を引き起こす役割を担っています.
多くの線毛はその遺伝子をプラスミド上にもっているため、プラスミドによって毛が生えます。

リンク
 
 
■プラスミドとウィルスは関係しているのか?
  

各大進化過程におけるレトロポゾンの増大時期、コピー途中のまま、もとのゲノムに挿入されなかったレトロポゾンのコピーRNAが核外に流出。通常、核外に流出した異常遺伝子は酵素等の働きにより分解されるのだが、 ”たまたま”このような分解を免れたレトロポゾンのコピーRNAが、リボゾーム(RNAからタンパク質を合成する装置)によってタンパク質を合成。RNA、DNAはそのままでは細胞膜を通過できないが、タンパク質とRNAが一体化することで、細胞外へと出る事ができたものが存在した。これがウィルスの原型となったのではないだろうか?

ウィルス=大進化が生み出した生物の断片③
 
の通りウイルスはレトロポゾン由来と考えるほうが辻褄が合う。それは真核生物~多細胞生物の進化に伴い免疫機能が高度に発展していく過程と、ウイルスが進化していく過程が一致しており、細菌(原核生物)由来と考えるのはこの進化過程と整合しない。
一方細菌に感染するウイルスは多数存在する。バクテリオファージが代表であるが、ベロ毒素産生大腸菌(O-157 の病原菌)は、毒素遺伝子を含むファージが大腸菌に感染して発生したと考えられてている。
バクテリオファージもプラスミドも二本鎖DNAであることから、その共通点がどこかにあると考えられる。
 
 
■原核単細胞にだけプラスミドがあるのは何で?
 
原核単細胞には核膜がなく、核様体の状態で細胞質内に存在している。これに対して真核生物は核膜をもちその中に遺伝子を格納している。原核→真核の進化に伴い細胞としての統合情報は格段に上昇し、DNAの長さもそれに伴い長くなっていったことと、細胞分裂の際に正確にDNAを分割する必要性が高まったことにより、核膜の中に収納する進化が生まれたと考えられる。
この結果、核膜外に存在するDNAの破片は酵素などにより分解され、より安定的にDNA情報を遺伝させる機能を獲得している。
 
ただ一方で原核細胞のプラスミドは高度にメチル化されることで、ウイルスのような外来DNAのみ細胞質内で分解され、宿主由来のプラスミドは核様体から離れていても共存できるしくみを有している。
 
真核生物は遺伝子の交換により変異を促したが、原核生物にとってはプラスミドが変異を司る存在だったと考えられる。

List    投稿者 chai-nom | 2008-07-09 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2008/07/513.html/trackback


コメント2件

 あいあい | 2008.08.18 1:38

なるほど~。
確かにこの2点の思考方法は仕事をする上で非常に重要ですね。
生物史の知識で仕事ができるようになるのではなく、その思考方法がカギだったのですね。
勉強になりました~☆

 タニザキ | 2008.08.18 11:48

おっしゃる2点の思考を、仲間と共有する楽しさも生物史を学ぶ醍醐味と感じています。
ある方の「なんで?」に、皆が調査し、仮説を交え応えていく。やがて事実に辿り着き、その一つ一つが繋がることで、皆の知識として吸収されていく体験をしました。
皆で形つくる仕事場面と、同じ形成過程を得ていると感じています。

Comment



Comment