2008-05-29

膜タンパク質と異なるが、一体の物である「糖鎖」の存在

 るいネットにおいて「細胞膜って何?」という記事で、細胞膜の「構造」・「主な働き」の概要があり、その中で細胞膜に存在する膜タンパク質と糖鎖の役割も触れている。
 このように「膜」という部位に焦点を当てると、そこにおける色んな「タンパク質」が注目される。
 一方で、そこの部位(膜の表面)にあるが、タンパク質に分類されない『糖鎖』の存在は極めて面白い。今回は、この『糖鎖』について、既存記事の『細胞同士の認識を確実にする「糖鎖」 』に続けていきたい。
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○糖鎖について
 まず糖鎖とは、生体を構成する3つの鎖(核酸・タンパク質・糖鎖)のひとつで、第3の生命鎖ともいわれています。
 近年、遺伝子工学やタンパク質工学の発展によって生体内での様々現象の分子機序が明らかになりつつあるが、生物が作るタンパク質の大半がガラクトースなどの糖鎖を持った糖タンパク質として存在しているのが事実です。つまり、糖鎖を抜きにしたタンパク質研究は不十分という事です。

○糖鎖の多様性
 

糖鎖の基本構造は、構成分子が一直線に並んでいる核酸や蛋白質とは異なり、単糖類が共有結合(グリコシド結合)したもので立体異性であるのが特徴。いくつもの単糖が1本のヒモのように連なったものや、1本のヒモが途中から複雑に枝分かれしたものなど多種多様です。

 

このように多様な形態が可能なのは、単糖類にヒドロキシ基という結合部位が多数存在するため、ここに結合する別の分子の種類と結合部位の位置の組み合わせによって構造の異なる糖分子ができるからです。

 

例えば、同じ化学式のC6H12O6で表される単糖でも、ヒドロキシ基の配置により、グルコース、ガラクトース、マンノースなどの構造の異なる異性体が存在します。さらにいくつもの糖が連なると、その組み合わせから生じる糖鎖の種類は、まさに無限といってよいほどあります。これら多様な種類の糖鎖は、タンパク質や脂質とも結合(共有結合)して、糖タンパクや糖脂質をつくります。

 

糖タンパクや糖脂質は、主に細胞膜と結合して糖鎖が周囲を覆うような状態で存在しています。ちょうど、この細胞から突き出ている糖鎖は、細胞の自己と非自己を認識する抗原性をもつものもあるようです。また、単独で反応するのではなく、糖鎖同士の相互作用で機能していることが最近の研究で分かってきましたが、その種類と相互作用については、いまだ解明されていない点が多く残されているようです。

 

一方で、糖鎖に結合し、エンドサイトーシスの働きを利用して細胞内に侵入するウイルスもあります。その代表がインフルエンザウイルスであり、このウイルスは、人工的に細胞膜の表面からシアル酸を除去した細胞には感染できないことが知られており、そのため、糖鎖の先端にシアル酸が結合しているシアロ糖鎖が感染に関係していることが考えられているようです。

※共有結合:二つの原子間で生じる化学結合のうち、2個の原子が外殻の電子対を共有することでそれぞれが希ガス型の電子配置を持つようになった安定な結合。
※糖鎖における立体異性は、グリコシド結合(糖同士の結合)に関与する酸素原子の位置によってアルファ体とベータ体が存在する。
※糖鎖の研究が重要であるにも関らず遅れてた理由は、立体異性という点(有機合成で糖鎖を作る場合、1種類作るだけでも半年から1年かかる)にあり、近年になり糖鎖遺伝子、糖鎖合成ロボット、糖鎖微量迅速解析システムが揃ったことで、急速に発展しているようです。
○糖鎖の役割
 

糖鎖はタンパク質や核酸と異なり遺伝子の直接産物ではなく、また鋳型も存在しないので、その構造はタンパク質や遺伝子のように厳密ではありません。これは生命にとっては必須のものではないように.一見思われます。

 

しかし様々な疾患に伴い細胞や組織の糖鎖構造が変化することは以前から良く知られており、遺伝子工学を駆使して作った(タンパク質部分は同じだが糖鎖の構造が天然のものと異なる)組換え糖タンパク質の生理作用が、本来の糖タンパク質と異なっていることも判ってきました。
 そこで糖鎖のもつ情報は多細胞生物を構築している細胞社会の維持のような機構に関連していると考えられるようになっています。

 

実際、最近の糖鎖生物学の研究から細胞間の認識や接着、増殖制御や情報伝達などの過程で、糖タンパク質や糖脂質がシグナル分子として働いていることが明らかにされています。

 より具体的に詳しくは『糖鎖の研究』というサイトがあります。
*この糖鎖で最も不思議な点は、DNAを元にタンパク質が作られた”後に”、付加されていく点でありますが、逆にそこがPOINTのような気もします。
 そこの理由において現在言える事象は、「DNAという鋳型が無い」+「膜タンパク質と構造的に違う」の2点が挙げられるのではないかと思いました。
 また、「共有結合による細胞電位差の働き」も関連性があるのではないかと思われ、糖鎖という不思議な存在に注目されます。

参考・引用サイト
糖鎖工学研究施設
進展する糖鎖研究

List    投稿者 h100p | 2008-05-29 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 UKATO | 2008.07.11 16:49

すみません、本論とは離れてしまうかもしれないのですが…、
>有性生殖とは真核細胞→2倍体→多細胞化(生殖細胞の独立)→精卵分化を経てはじめて可能になったと考えるほうが整合性が高く<
のはその通りだと思うのですが、そうなると何のためにわざわざ接合しているのでしょうか。
おっしゃる通り、F因子が、現在の多細胞生物の生殖システムの起源にはならないでしょうが、しかし、原核単細胞生物においても、遺伝子を組み換え、多様性と秩序を維持する仕組みを持っていたわけです。
生殖が如何に根源的なものか、その理解を助ける事例として(表現は注意する必要がありますが)考えてもよいのではないでしょうか?

 chai-nom | 2008.07.12 12:49

>そうなると何のためにわざわざ接合しているのでしょうか。
これが結構難問です。まず線毛には付着線毛と性線毛があり、どちらも接着系の機能を持っているのは同じであるが、付着線毛が異種の細胞に接着するのに対して、性線毛は同種(同類)の細胞に接合するという違いがあります。
餌がなくなるといった逆境に適応する場合、他の細胞に接着して栄養を吸収するという戦略(付着線毛)はかなり根源的だと考えられます。
ただ逆境⇒接着機能⇒線毛の獲得(プラスミドに記録)と考えた場合、なぜ核様体本体でなくプラスミドにそれを記録したのか?という疑問も生まれます。
>生殖が如何に根源的なものか、その理解を助ける事例として(表現は注意する必要がありますが)考えてもよいのではないでしょうか?
生殖には無性・有性の2種類がありますが、無性生殖においても遺伝子の組み換えは一部あります。あらゆる生物にとって【変異・安定】は普遍機能ですが、原核生物にとってはより安定が必要で、変異を積極的に組み込む必要性は少なかったと思います。
ちょっとまとまりのない文章になってしまいましたが、細胞同士の接合(接着・くっつく)はタンパク質が持つ機能としてかなり重要なものであることは確かです。追求を続けていきます。

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