2008-05-25

生殖と免疫寛容(精子の長い旅)

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この画像はミチコ先生の性って何No6からお借りしました。
女性生殖器にも免疫機能があり、細菌などの感染から生殖器を守っています。生殖の免疫寛容の第一段階は、女性にとって異物である精子が女性生殖器をさかのぼり輸卵管までたどり着いて受精することです。
女性生殖器にはどのような免疫機能があり、精子はどうして排除され無いのでしょうか。まだまだ解明されていない部分もありますが、調べてみました。面白そうだと思われた方は、応援をお願いします。
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■免疫機構1:膣内を酸性に保つ
免疫機構の第一段階ですが、生殖器の入り口である膣内を酸性に保つことで細菌の繁殖を抑えています。この仕組みをもう少し細かく見てみましょう。腟上皮細胞にはグリコーゲンが豊富に含まれ、女性ホルモンのエストロゲンの存在でその含有量は増加し、腟内に分泌されます。グリコーゲンは、ブドウ糖に分解され、腟内の非病原性常在菌であるデーデルライン桿菌の作用で乳酸が産生されるため、腟内の酸性度が高まり(pH 3.5)他の病原微生物が侵入・増殖しにくい環境をつくっています。
しかし、排卵日が近づくと、ホルモンの働きによって内部は中性に傾き、精子は子宮入口まで通ることができます。女性の側が受精の機会をコントロールしているわけです。
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この画像は国立がんセンターがん情報サービスからお借りしました
■免疫機構2:粘液による防御
次の関門が子宮頸部です。子宮頸管は粘液を分泌する腺で覆われています。この粘液の濃度が高いため、排卵の直前まで精子は頸管を通過できません。排卵期になると粘液が薄くなり、精子が泳いで通ることができるようになります。ここでも女性の側が受精をコントロールしています。
さらに、子宮内部では分泌された粘液が流れ落ち進入物を排出しようとしますし、卵管では繊毛が進入物を排出しようとします。
■免疫機構3:自然免疫・獲得免疫による防御
ここまでは生体防御機構による免疫でしたが、マクロファージや抗原抗体反応などの自然免疫・獲得免疫は精子に対してどのように働いているのでしょうか。調べてみるといろんな説があることが分かりました。
①生殖器の中は体外で免疫機構は働かない
免疫性の不妊症を研究している人たちは、女性の血液に精子が混ざると抗原抗体反応で精子に対する抗体ができ、粘液に抗体が混じることで精子の活動を阻害すると説明しています。この説は生殖器の中は体外で免疫機構は働いておらず、体内に進入して血液に接すると免疫が発動すると考えているようです。
②生殖器の中は免疫機構が働き、逃げ切った精子だけが受精する。
子宮頸部を超えた精子が子宮にたどり着くと、白血球の攻撃を受け殆どの精子がここでやられてしまうと言う説もありました。精子の旅このサイトはあまり科学的なサイトではなさそうです。
③精子は免疫から逃れられる
一方で、精子は女性の免疫から逃れる糖鎖マーカーであるN-グルカンを細胞表面に持っており、がん細胞と同じように免疫から逃れていると言う研究もあります。
④生殖器などの粘膜は特別な免疫機能を持っている
また生殖器を始とする粘膜は特別な免疫機能を持っているとする粘膜免疫の研究もあります。粘膜免疫は有害な細菌には免疫機構を発動する一方で、有用細菌や栄養となるタンパク質には免疫を働かせない免疫寛容の仕組みがあると言う研究です。
代表的なのが腸の粘膜で、M細胞から抗原を取り込み有害細菌を攻撃する抗体を粘膜から分泌する一方で、乳酸菌など常住有用細菌は攻撃しません。また腸から取り込んだタンパク質は異物と認識せず抗原抗体反応は起きません。この考え方では食物アレルギーはこの免疫寛容の仕組みが上手く働かず、消化吸収したタンパク質などで抗原抗体反応を起してしまう症状と説明しています。
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この画像は理化学研究所免疫系構築研究チームからお借りしました。
■生殖器の免疫機構は粘膜免疫の一種か
①の説は、体外との接点こそ防御の要であり、生体防御機構だけで守っていると考えるのは無理があるように思えます。
②の説は、精子のある程度の比率が必ず免疫機構を潜り抜けるのであれば、病原菌なども通り抜けられることになるため、免疫機構の役割を果たしていないことになります。
③の説は、精子の側に免疫寛容の仕組みがあるとすると、抗体性不妊症の説明ができなくなります。
このように考えてくると、母体側が粘膜免疫の免疫寛容システムと同じ方法で、有害細菌からは生殖器を守りながら精子は通していると考えるのが妥当かもしれません。器官の発生から見ても、膣や子宮などの生殖器は腸から分化してきたと考えられ、膣にデーデルライン桿菌が常住しているのも、この免疫寛容の結果とも考えられます。
母体側の免疫寛容で精子を受け入れていると考えれば、抗体性不妊症も免疫寛容が上手く働かないために起こるアレルギーの一種と説明できます。

List    投稿者 nodayuji | 2008-05-25 | Posted in 未分類 | 5 Comments » 

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コメント5件

 匿名 | 2008.07.06 16:09

免疫細胞信号によるアポトーシスと、発生時にタイマーがきたかのように自動的に発動するアポトーシスがあるわけですね。しかし、外圧に対応してアポトーシスするしないがかわりうる可能性も担保されている可能性が生命体にはあると思うのですが、つまり、免疫細胞のような変異を察知してアポトーシスプログラムを起動させるという仕組みが発生メカニズムにあるのでは、と思うのですが・・・ないのですかね?
それが分かれば、多細胞化と免疫細胞の起源の関係がかなりすっきりとみえてくると思うのですが?

 さんぽ☆ | 2008.07.07 0:36

こういったアポトーシスという仕組みがあるから、生体は維持されているというのを改めて認識しました!
ほんとすごいです!!

 zakky | 2008.07.07 3:59

コメントありがとうございます。
>外圧に対応してアポトーシスするしないがかわりうる可能性も担保されている可能性が生命体にはあると思うのです
>それが分かれば、多細胞化と免疫細胞の起源の関係がかなりすっきりとみえてくると思うのです
なるほど。
外界の状況が変化したときに、生物がどうやって生き延びようとするか、ってことですね。
エサ不足になれば、細胞がたんぱく質を作るための材料も確保できなくなるので、必然的にアポトーシスプログラムを作動させる(アポトーシス抑制の因子が作れなくなる)可能性はあります。
(こういう意味で合ってますか?)
ただ、変異性の高い細胞が、遺伝子異常でうまくアポトーシスが起こらない場合、無限に増殖しても困るので、隣の細胞かなんかがぷちっとアポトーシスさせてくれると助かりますね。
免疫細胞って、もしかしてそんなイメージ???
今度コメントくださる時は、ぜひお名前も入れてくださいね☆

 zakky | 2008.07.07 4:06

さんぽ☆さん、コメントありがとうございま~す!
アポトーシスのしくみって、「すごい!」ですよね。
私も、調べ物をしてて、ついつい仕事を忘れてめりこみそうになりました(笑)
また、コメントしてください☆

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