2008-05-24

細胞同士の認識を確実にする「糖鎖」


全ての細胞は、「細胞膜」で覆われていますが、その細胞膜はたんぱく質や脂質が埋め込まれた状態で存在しています。この細胞膜タンパクの表面からヒゲのように伸びているのが『糖鎖』です。この糖鎖は、今やゲノム解読以上に脚光を浴びています。
この糖鎖は、細胞同士がコミュニケーションを取る上で、非常に重要な役割を果たしていると考えられているからです。細胞同士は、この糖鎖によって、お互いを認識しあっています。
最も身近なものでは、ABO式の血液型(赤血球の糖鎖の形が違う)がありますが、受精時にも必ず必要ですし、ウィルス感染やガンの転移も糖鎖異常が関わっています。
つまり、あらゆる細胞間認識において、糖鎖は「細胞の標識」のような役割を果たしています。
そう、細胞同士の認識にとって、細胞膜、その中でも糖鎖が非常に重要な役割を果たしているのです。
例えば・・・・
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◆受精
精子が卵子に進入することで果たされる受精ですが、卵子が精子を受け入れる際に糖鎖が関わっています。
卵子表面は卵子を保護するための卵黄膜で覆われており、精子が受精を果たすためには、この卵黄膜を突破しなければなりません。卵黄膜上の糖鎖と精子の糖鎖が結合することで、精子は卵子内に進入することが可能となります。
ですから、人工的に卵黄膜を取り去ってしまうと、いくら精子をふりかけても受精することはありません。
◆白血球
白血球は血液中を流れながら、各細胞を監視し続けています。このパトロールの中で異常な細胞を発見すると他の免疫細胞を集めたり、攻撃を開始しますが、この異常な細胞の検知を糖鎖の検知によって行っています。白血球は血管中を流れながら、糖鎖を確認し続けているのです。
ですから、白血球自身の糖鎖が異常を起こすと、(実は正常な)細胞の糖鎖を「異常だ」と検知してしまい、正常な細胞への攻撃を開始してしまいます。
◆ウィルス
インフルエンザを代表とするウィルスも、この糖鎖をターゲットにして体内で感染します。
ウィルスは自分自身で分裂を繰り返し増殖するのではなく、寄生主の細胞が(つまり、私たちの細胞自身が)一つのウィルスから大量のウィルスを”生産”しています。
インフルエンザウィルスでは、体内細胞表面の糖鎖と結合するタンパク質(HA)と、糖鎖をバラバラにするタンパク質(NA)の2種類を持っています。私たちの体細胞の糖鎖がまずHAを発見し「同種である」と認識することで細胞内に取り込みます。体細胞内で増殖したウィルスは、NAの働きで体細胞表面の糖鎖を破壊し、外に放出されていきます。(糖鎖を破壊しておかないと、HAと結合してしまい外に出られない)
◆ガン
ガン化した細胞では、ガンの種類によって違う糖鎖が現れます。(日常的には、この糖鎖を免疫細胞が認識することで、排除されていく。)
さらに糖鎖の形が変化し、お互いにくっつきにくい(離れやすい)糖鎖が出現すると、ガン細胞が病巣で密集しにくくなります。しかも、この糖鎖は血管壁にくっつきやすい性質を持つため、血管を通じて広範に拡散していきます。これによりもとの病巣とは異なる場所にガンが転移していきます。
◆糖鎖はどこでできるのか?
DNA→RNAによってリボソームで合成されたタンパク質に、小胞体で糖鎖が付加されます。さらに、タンパク質の輸送経路であるゴルジ体に運ばれると、それぞれの細胞に必要な形に整えられ、糖鎖のついたタンパク質が細胞膜表面に出現します。
この糖鎖で最も不思議な点は、DNAを元にタンパク質が作られた”後に”、付加されていく点です。
ないとう@なんで屋でした
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List    投稿者 tnaito | 2008-05-24 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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