2008-04-11

皮膚の免疫監視役:ランゲルハンス細胞

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皮膚は、一番外側にあり、様々な外圧状況(細菌、ウイルス、太陽光、暑さ、寒さ、湿気、乾燥etc)の変化に適応するために進化してきた臓器です。もともと多細胞生物の初期段階に作られた外胚葉から進化していますが、その中味を見ていくと驚きの連続でした。
この機能によって、私達多細胞生物は、大きく変化する外圧の中で生きていけるんですね。
この皮膚の表皮に近い部分には、樹枝状細胞があります。一つが神経細胞、もう一つがランゲルハンス細胞です。この2つの樹枝状細胞が網の目のように手足を伸ばし、外圧状況を監視しています。神経細胞の樹枝状形状は、まだ脳が存在しない生物の段階から外圧をキャッチする機能を作っています。
また、ランゲルハンス細胞は、皮膚の表面から入ってきた外敵を網の目の監視により素早くキャッチするセンサーとして機能しています。これらの表皮にある樹枝状細胞からの信号が、免疫系・中枢神経系と密接に関係し私達の体全体のバランスを維持しています。いかに皮膚が重要か?を再認識しました。

今日は、この中で、免疫監視役「ランゲルハンス細胞」について見ていきましょう。
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ランゲルハンス細胞は、これまでこのブログでも良く出てくる「マクロファージ」と同様に外から入ってくる異物に対して反応します。上記の図を見ると、表皮に近い部分にランゲルハンス細胞、真皮の部分にマクロファージや免疫系が存在します。(上図は、こちら からお借りしました。)図の上部にいるのがランゲルハンス細胞、下部の真皮にいるのがマクロファージです。
ランゲルハンス細胞について、「皮膚の医学 肌荒れからアトピー性皮膚炎まで」田上八郎著:中公新書 より紹介します。

環境から直接いろいろなものが侵入してくる可能性の高い皮膚は、重要な免疫器官です。わたしたちの生存のために、神経の働きよりもむしろ、より基本的な重要性をもつのは、この皮膚の免疫機能です。
外から入ってきた異常な物質の情報をまずキャッチするのが、表皮内に長い枝を張っているランゲルハンス細胞です。ランゲルハンス細胞は、自分の体にはない物質だという免疫情報をつかむと、みるみる活性化し、その情報をもって表皮を脱し、リンパ液の流れにのってリンパ節に行きます。そこにもしも、免疫学的には抗原と呼ばれる、外から入ってきた異物を自分の体の一部とは違うものだと認めるTリンパ球がいると、そういう細胞を沢山増やして、体中に送り出す働きをします。
また、抗体といって、ある異物だけに反応する免疫グロブリンという血液タンパクの産生に関係するB細胞も増えます。このようにして異物が侵入して一週間もすると、その異物への免疫を担当するTリンパ球が散らばり、侵入部位だけでなく、全身の皮膚で免疫防御機構が働けるようになります。

このランゲルハンス細胞の動きは下図が分かりやすいです。
図中のLCがランゲルハンス細胞。
(下記の図は、こちら からおかりしました。)

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では、このブログでも良く出てくるマクロファージとランゲルハンス細胞はどう違うのでしょうか?
同じく、「皮膚の医学」から紹介します。

真皮にも炎症反応で異物を食べ、その情報をリンパ球に伝えるマクロファージと呼ばれる細胞がいますが、免疫情報の伝達の効率の良さは、ランゲルハンス細胞にはかないません。見知らぬ物質でも微生物でも表皮に入ってくれば、ランゲルハンス細胞の伸ばした枝の網にひっかかり、その通報で出動したTリンパ球や体液中の反応性タンパク質である抗体の攻撃がはじまり、免疫的なアレルギー性の皮膚の炎症が起こります。

また、ランゲルハンス細胞は、異物としての情報はキャッチできますが、その異物をマクロファージのように処理することはできないないようです。マクロファージはその異物を食べることにより情報をTリンパ球等へ運びます。
以上、ランゲルハンス細胞やマクロファージ等の免疫系は、様々な外部から入ってくる異物を素早くキャッチして私達の体を守っています。また、この免疫系は神経系とも連動して「痛い、あつい、冷たいetc」の感覚情報と共に私達の行動を制御して、外圧環境から守っています。
今回、皮膚の免疫機能について調べてみて、皮膚が生命にとって非常に重要な器官だと分かりました。
その点、このブログでも紹介した「金の糸美容」等は、生命の進化の中で作られた免疫機能を逆手にとって、拒絶反応を強引に起こさせている市場だと思います。さんぼさんの「怖くて、できない!」は正解ですね。
金は安定した物質ですが、イオン化するとは溶けるということでしょう。10年もつとは、それだけ長く少しずつ溶けて拒絶反応を継続させているのでしょう。
それよりは、より「皮膚についてより深く知る」ことが、儲け優先の市場に騙されず、自然の摂理にそって、皮膚の状態を保ち、健康を維持していく方法ではないでしょうか。美容や健康のためには、まず勉強ですね 😀
 
より皮膚について、知りたい方は、上記の「皮膚の医学」の他、「皮膚は考える」傳田光洋著:岩波書店も分かりやすかったです。内容については、るいネット「表皮と中枢神経は外肺葉由来」の名残りを残す表皮」で勉強しましょう。

List    投稿者 yooten | 2008-04-11 | Posted in 未分類 | 7 Comments » 

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コメント7件

 さんぽ☆ | 2008.05.08 4:10

おもしろい記事ですね!
群れと免疫の関係、納得です!
こういった免疫等からの群れや集団の有効性を分析したものは、初めてだったのでとっても気づきが大きかったです!
自宅で飼っている魚をここまで観察して、かつさらにその奥を追求する!
この姿勢、すごいですね。見習っていきたいです!

 ふーじー | 2008.05.08 14:51

さんぽ☆さん
コメントありがとうございます!
>自宅で飼っている魚をここまで観察して、かつさらにその奥を追求する!
この姿勢、すごいですね。見習っていきたいです!
すごいですよね!
追求のヒントは身のまわりにあるんですよね。わたしも見習っていきたいです☆

 しのぶ | 2008.05.08 15:38

群れると免疫力が上がるなんて、初めて聞いたけどなんか納得!
スキンシップ不足だとアトピーになったりするのとかも、なんか関係あるのかなぁ。
群れ(接触)と免疫、面白かったです。
応援ポチ♪

 ふーじー | 2008.05.08 18:58

しのぶさん
応援ありがとうございます!
>スキンシップ不足だとアトピーになったりするのとかも、なんか関係あるのかなぁ。
なるほどそれも関係ありそうですね。
「群」と病気の関係を追求してみたらいっぱいでてきそうですね!

 ロスジェネ | 2008.05.17 21:56

訪問ありがとうございました。
群れと免疫という観点でものを見るのは、
とても斬新ですね。がんや感染症なども、
群れの理論でわかるようになるといい
かもしれません。都市と農村、北国と南国、
とかいった具合ですね。
一方、ウイルスはキリンの首などの動物の
進化に必要だったという考えもあります。
免疫の遺伝子再編成というシステムも、
ウイルスと生物群集のおしくらまんじゅう
で成立していったものなのかもしれません。
筆不精ですが、今後ともよろしく
お願いします。

 ふーじー | 2008.05.18 1:39

ロスジェネさん
ご訪問、コメントありがとうございます☆
>免疫の遺伝子再編成というシステムも、
ウイルスと生物群集のおしくらまんじゅう
で成立していったものなのかもしれません。
免疫の遺伝子再編成なんてよく知ってらっしゃいますね!
私は知らなかったのでちょっと調べてみようと思います。
ロスジェネさんは生物も詳しいのでしょうか?
また色々教えてください☆
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします(*^-^*)

 たろう | 2016.07.27 14:15

ランゲルハンス細胞の分化・発生は明らかにされているのでしょうか?

表皮で成熟してランゲリンを発現する?

未成熟なときはどこにいますか?

もともと由来は?

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