2008-04-04

脊椎動物以前の血球系細胞の進化(1)

血球系細胞に焦点を当て、脊椎動物以前の進化について論及している書籍やサイトはなかなか見つからない。現存する種もそれぞれに進化しているであろうから、それらを参考にしながらも全体を俯瞰する論理で繋げていく必要があろう。
その点を意識しながら、先ずは、基本情報を浮き彫りにするため、光文堂発行「生命を支えるマクロファージ」の『4.マクロファージの系統発生』から抜粋することで概観してみたい。
関連参考記事:免疫系の進化1(系統樹編)
◆腔腸動物(ヒドラ、クラゲ、イソギンチャクなど)
ヒドラの仲間における遊走細胞(間細胞)は、「血球」と呼ばれてもよい細胞であるが、貪食能をもっていない。海綿動物の間細胞(原生細胞)のように多分化能をもった幹細胞として機能している。
サンゴやイソギンチャクでは、間充ゲル中にアメーボサイトと呼ばれる遊走細胞が存在している。この細胞は通常は弱い貪食能しかもっていないが、再生実験を行うと顕著な貪食作用を示すようになり、自己の死細胞や異物を貪食するという。
◆三胚葉動物:環形動物(ゴカイ、ミミズ、ヒルなど)
前口動物の中では唯一の閉鎖血管系をもっており、血液は血色素をもち、酸素運搬の機能を有する。ゴカイ(多毛類)やミミズ(貧毛類)には、好中球、好塩基球、好酸球、顆粒球、黄細胞などの血球が血管内や体腔内に見られるようだ。
しかし、血管の中には固有の血球はなく、血管中に存在する血球は体腔液中から遊出して入り込んだいわゆる体腔細胞(血球)であるといわれている。体腔細胞は体腔上皮から直接遊離してくるが、それは発生学的に見ると中胚葉由来の細胞であるらしい。
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◆軟体動物(海産:タコ、イカ、カキ/陸棲:ナメクジ、カタツムリなど)
血管系は開放性で、頭足類以外には毛細血管はない。血色素は銅を含むヘモシアニンで、酸化されると青色を呈する。この体液(血液)中には外来の異物や自己由来の異物的成分を捕食したり、大型異物を生体内で隔離(包囲化)する血球が存在するという。
血液には、凝集素や溶血素などの液性防御因子も含まれているが、軟体動物には、免疫グロブリンに相当する構造と活性を備えた「抗体」は存在しない。
【大型のヤマナメクジやフツウナメクジ】
3種類の血球が存在し、生体防御に重要な役割を果たしている。その1つは,マクロファージ(Type Ⅰ細胞)で、血液中に最も多く見られる細胞である。細胞内にはミトコンドリア、粗面小胞体、多胞小体、残留小体、ゴルジ装置、グリコーゲン顆粒も認められるという。
第2はヒアリノサイトで、脊椎動物のリンパ球に似た形態をもつ(Type Ⅱ 細胞)。核/細胞質比がきわめて大きく、偽足を形成することはないらしい。大型球形の核の周囲には、遊離リボソームとミトコンドリアが認められるそうだ。
第3は、ごく小量で感染時に見られる線維芽様細胞。貪食能の存在を思わせる残留小体もまた観察されるようだ。
以上の3種の細胞(血球)は貪食能をもち、異物認識能がきわめて高いものは、第1のタイプのマクロファージのみである。
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[アメーバの異物の取り込み方] 「生命を支えるマクロファージ」P.33より
a:ラテックスビーズ(1.9μmφ)を与えると、偽足で個々に貪食。
b:0.3μmφの場合は、塊として取り込む。

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【エスカルゴ】
2種類の血球があり、1つは貪食能をもつマクロファージ様のアメーボサイトといわれ、他は小型の球形細胞で、貪食能をもたない。アメーボサイトは細胞質に顆粒はなく、クロマチンがブロック状に配列した核をもつ。小型球形細胞は偽足を形成することはなく、細胞質にわずかな粗面小胞体と多量の遊離リボソームが認められるにすぎない。
軟体動物の血球の種類は動物によって多少異なるが、少なくとも1種は食細胞として機能しているらしい。ヤマナメクジの場合ではマクロファージのみで、陸棲のカタツムリではアメーボサイトが異物や他種細胞を貪食することがわかっている。
貪食の仕方は偽足で巻き込む方法と、原形質膜の陥入、細胞質突起による取り込み(ジッパー機序)の2つの方法が見られる。取り込まれた異物は、ファゴソームに取り入れられ、水解酵素によって消化される。
1個の食細胞で処理するには大きすぎるような異物に対しては、宿主側の間葉系細胞が反応し、異物を取り巻き隔離する。このような現象を包囲化といい、寄生虫や移植片に対して発現するようだ。
腹足類の体腔内に異物や線虫を注入すると、防御反応を示す血球が速やかに増加してくる。しかし、タコやイカのような頭足類(白体が造血器官)を除いて、特別な造血器官は存在しないらしい。
たとえば、淡水産の巻き貝、モノアラガイでの異物注入実験では、標識細胞の割合はからだ全体で等しく特別の部位に偏りが見られず、陸棲軟体勤物のカタツムリでは、外套の結合織や上皮から血球が形成されてくる、という。
ナメクジでは、異物を注入すると、およそ1時間後には血球が通常血球数の5倍から7倍に増加してくるらしい。異物侵入後の急速な血球増加は、生体内の至るところに存在する線維芽細胞(間葉系細胞)が活性化されて分裂し、血管系の内腔面から突出遊離し、マクロファージ様細胞に転換していることによるというのだ。
つづく

List    投稿者 ayabin | 2008-04-04 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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