2008-02-23

単孔類・有袋類・有胎盤類の比較

両生類から哺乳類への進化の中で、哺乳類は他の動物には無い恒温性、授乳、横隔膜、胎盤といった機能を進化させて行きました。これらの機能をどのような形で発達させてきたのか探るために、単孔類、有袋類、有胎盤類でそれぞれの機能がどうなっているか調べてみました。興味のある方は応援をお願いします。
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この画像はウィキペディアよりお借りしました。

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1.恒温性
 体毛と汗腺は単孔類の段階で獲得していますが、恒温性については単孔類、有袋類、有胎盤類でかなり違いがあります。
 単孔類はある程度の恒温性を獲得しているものの不完全です。カモノハシの体温は25℃から36℃の間で変動し変温動物と恒温動物の中間の性質を持っています。(★カモノハシってどんな動物??★ )
 有袋類は有胎盤類に比べ体温調節機能がやや低いですが、単孔類よりはその機能が高くなっています。有袋類の代謝率は、比較的に大きい真哺乳類の約3分の2ていどです。平均体温は35.5℃とされ、大多数は33~37℃です。有袋類は生まれたときは温度調節機能を持っていませんが、育児嚢生活を通して有袋類の仔は体温調節をし始めます。これは甲状腺機能の開始と時期が一致しています。(カンガルー辞典 )
2.授乳
カモノハシは乳腺は持っていますが乳首が無いため、皮膚から分泌された乳が毛を伝わりそれをなめます。ハリモグラの母親も乳首をもたず、子は、育児嚢の前縁の近くにある乳腺からにじみ出るクリーム状の乳をなめて育ちます。有袋類は育児嚢の中に乳頭があり子供はこれをくわえて乳を飲みます。
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カモノハシの生態より   ウィキペディア育児嚢より     ウィキペディア授乳より
 乳の成分のうち糖類をくらべてみると、単孔類、有袋類、一部の有胎盤類でミルクオリゴ糖が優位になっていて、大半の有胎盤類でラクトースが優位になっています。これは、単孔類から有胎盤類への進化のなかで、ラクトースをつくるのに関係するタンパク質αラクトアルブミンの発現量が乳腺の中で増加するに従い、ミルクオリゴ糖優位からラクトース優位に進化しと考えられています。(ラクトースとミルクオリゴ糖の進化)
3.横隔膜
横隔膜が哺乳類に特有の機能であることはあまり知られていませんが、他の動物には無い特徴です。2億5千万年前のペルム期末の大絶滅の時代に哺乳類の祖先であるトリナクソドンという生き物が横隔膜を獲得し低酸素時代を生き延びたと考えられています。横隔膜は単孔類も持っています。(哺乳類の多様性と標本から読み取ること
4.胎生
 単孔類は胎生ではなく卵生です。カモノハシの場合、タマゴがやわらかいためお腹の上に乗せて母親が仰向けになり幅の広い尾で覆い暖めます。ハリモグラは交尾期になると、メスの腹部に育児嚢ができます。これは、腹部がくぼむと同時に、両側の皮膚と筋肉のひだが大きくなって形成されるもので、有袋類のものほど完全な袋状ではありません。メスは約14日の妊娠期間ののち、仰向けの姿勢で、自分の育児嚢の中に卵を産みます。卵はカモノハシもハリモグラも生まれてから約10日で孵化します。
 
 有袋類は胎盤を持っていないか、もしくは栄養摂取機能が弱い卵黄嚢性胎盤であり十分に子供が発達しないため育児嚢で子供を育てます。(卵黄嚢は卵黄の栄養分を胚に送る膜です。これが子宮の壁にくっついて母体から栄養分などを吸収します)
 有胎盤類は、尿漿膜性胎盤を発達させています。これは羊膜の中の尿膜(胎児の老廃物などを溜める膜)と将膜(胚と羊膜、尿膜などの全ての胚膜を包む膜)が融合したものです。
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   多様な生物たち(5)より               ウィキペディア胎盤より
 卵生から胎生への変化に伴い、メスの生殖器も変化します。単孔類は名前の通り、尿道・生殖孔と肛門が分化していない総排出腔(単孔)をもちます。卵巣から輸卵管、子宮、膣が左右それぞれ二つあります。有袋類でも卵巣から輸卵管、子宮、膣が左右それぞれ二つあるのは同じですが、肛門は分化し尿道と生殖孔が一体となっています。
 有胎盤類では、尿道と生殖口も完全に分離し、左右の膣が融合して一個の膣となっています。子宮はウサギのように明確に二個に分かれているものから、霊長類のように子宮も融合してひとつになっている種類までさまざまです。(哺乳類参照)
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哺乳類のメスの生殖器官より
5.遺伝子
哺乳類には、相同遺伝子のうち父親由来の遺伝子か母親由来の遺伝子のどちらかの遺伝子の発現を抑制するゲノムインプリンティングという現象がみられますが、この現象は有袋類と有胎盤類のみに見られ、単孔類には見られないことが報告されています。(ゲノムインプリンティングとホ乳類の進化
また、哺乳類の遺伝子解析によれば、単孔類と有袋類・有胎盤類が分岐したのは、2 億 3100 万~ 2 億 1700 万年前(三畳紀中期から後期)と推定してされています。 化石記録によれば、哺乳類型爬虫類と呼ばれたグループから哺乳類が別れた頃と考えられており、 その頃に既にカモノハシの系統が存在していたのかもしれません。(きまぐれ生物学・カモノハシこそ哺乳類の根本

List    投稿者 nodayuji | 2008-02-23 | Posted in 2)知られざる原始哺乳類2 Comments » 

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コメント2件

 さんぽ☆ | 2008.03.21 1:03

>グリア細胞の完成は40歳すぎまで
え~!
そうなんですか!
私も今までは脳細胞は、幼少期に形成された以降は死んで行くと思ってました。
脳って、実はまだまだ解明されていないことがいっぱいあるんですね。

 アヨアン・イゴカー | 2008.03.24 1:13

初めまして。
私は成長はフィボナッチ数列で変化が起こると言う仮説をブログで書きました。只の素人ですが、こういう根本的な原理には興味があります。
今回、この記事を見て、まんざらこの仮説が間違っていないと思いました。アンモナイトやオウムガイの渦巻きを見ていると、このフィボナチ数列が、生命の発達に関係していると単純に思われるからです。
よって、人間には10回位の変化の節目があることになります。
1,2,3,5,8,13,21,34,55,89

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