2007-11-14

「細胞分裂の回数券」テロメア

Telomere.png
(画像はWikipediaよりお借りしました)
真核生物の染色体の端部にあるテロメアと呼ばれる部分をご存知でしょうか?最近は癌の治療法研究などでもよく登場するのでご存知の方も多いかもしれません。ぼくもなんとなくは知っていたのですが、改めて調べてみました
  
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原核生物から真核生物へ進化した際、染色体(原核生物ではゲノム)の形状は環状⇒線状となっています。現在でも基本的に原核生物は環状、真核生物は線状となっているようです。
  
まずは、
■なぜ線状の染色体を持つ真核生物にはテロメアがあるの??
環状と線状、ひとつの大きな違いは端部の有無にあります。○では端部と呼べる部分は存在しないですが、|には端部がありますよね。
実はこの端部というのは非常に不安定で、必ず保護が必要になるようです。そしてその端部を保護しているのがテロメアです。不安定というのは、例えば端部にテロメアがないと染色体同士がくっついて融合してしまい、癌の原因となるなど、安定性を保てなくなるといったことがおこるようなんです。
  
そうなると疑問が生じますよね。
■じゃあなんで染色体は線状になる必要があったの??
実はこのことは減数分裂の機構と密接に関連しています。そのメカニズムについてはまだはっきりとわかってはいないようですが、線状でないと減数分裂できないというのは間違いないようです。
  
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(画像はWikipediaよりお借りしました)
  
■テロメアって??
テロメアは上記のように染色体の末端を保護しているわけなんですが、問題は細胞分裂をするたびにテロメアは短くなっていき、やがて一定の長さまで短くなると細胞分裂ができなくなってしまいます。完全になくなると安定性を保てなくなるので、基本的には一定の長さで細胞分裂を止め、。だから「回数券」というような呼び方がされるわけですね。
短くなる理由は、複製時にDNAの一方の端が複製できずに脱落することが原因で、分裂を多く経た老化した細胞ほどテロメアは短くなります。体細胞が無限に増殖できないのはこのためで、生殖細胞ではテロメラーゼと呼ばれるテロメアDNAを延長する酵素の働きで、テロメアは元の長さに戻ります。骨髄や上皮細胞など再生系組織の幹細胞は、弱いテロメラーゼ活性を持っており、複製ごとのテロメア短縮を遅らせ、ヒトの寿命期間中ぐらいは細胞の供給し続けることができるといいます。
(多くの癌細胞はテロメラーゼの活性を持っているといわれ、癌細胞の不死化や際限ない増殖の理由のひとつと考えられています。)
  

ヒトの体細胞はテロメラーゼ活性をもたず、誕生の時点で1万から1万5千塩基対あるテロメア長は、異なる組織であってもおよそ年間100塩基対ほど短くなっていき、細胞増殖の限界である5千塩基対に近づく。これに対して無脊椎動物の体細胞はテロメラーゼ活性を持つものが多く、脊椎動物でも魚類を始め、哺乳類のマウスやハムスター等の体細胞でもテロメラーゼ活性がある。また、類人猿を含む霊長類でもテロメア長は4万から5万塩基対もあり、一生のうちに増殖限界までテロメアが短縮することはない。つまりヒトはテロメア短縮が個体の老化に関わる可能性のある例外的な動物といえる。
「不老不死への科学」より引用


  
■「死」の獲得の意味
真核生物は、減数分裂+有性生殖によって変異可能性、安定性を手に入れた。そしてそれと同時に「死」も獲得している。
個体が生き続けていくのではなく、同類他者+死を作り出すことで種としてはより環境に適応的になることができた、それが「死」の獲得の本質ではないでしょうか。

List    投稿者 hadou | 2007-11-14 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 arinco | 2007.12.18 10:02

なるほどー。X染色体とY染色体への分化と雌雄躯体分化してた時期が重なるのですね。
でも染色体の分化と躯体分化ってどんなメカニズムになってるんでしょう?気になりますねー。

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